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ふたりの新婚生活

今回は日向と怜の甘々の新婚生活です‥‥

20代半ばの日向(ひなた)と40代半ばの(れい)は、パートナーシップ制度を利用して生涯のパートナーとなることを宣誓した2人。


もともとは日向が中学生の頃、雨に打たれてうずくまっている所を怜に助けられ、そこから6年後に再会したところから始まった。最初は男性同士の恋愛に戸惑いもあったものの、今の2人は周りも照れてしまうぐらい仲が良い。


日向はふんわりとした髪に大きな瞳で可愛らしい。家庭環境が複雑であったが年の離れた怜と付き合うようになってからは、毎日とびきりの笑顔で怜を癒す存在となっている。

怜は背が高くて黒髪に切れ長の目元で少し見た目は怖いけれど、いつだって日向を優しく受け入れてくれる。そんな怜を頼って甘えていた日向だったが、最近は怜が生涯のパートナーとなったということで、自分も怜を幸せにしたいと思っている。


2人は同棲して5年程度となるため、パートナーシップ制度を利用しても生活スタイルは大きくは変わらない。

それでもお揃いの指輪をつけて生涯を共に過ごすことを誓ったので、日向はふわふわした気持ちになっている。


仲間たちにお祝いしてもらい、市役所で手続きをして家に帰った後に日向が怜に言う。

「あの‥‥怜さん‥‥新婚初夜って‥‥何するの?」

すでに頬を染めて怜の袖をつかんでいる日向。ひな‥‥可愛い‥‥わかっているのにあえて聞いてくるのが可愛い‥‥と思う怜である。

「ひなの好きなことをしていいんだぞ?」と怜に言われる。

「じゃあ‥‥」と日向が言いながら、怜にキスをした。

「ふふ‥‥怜さん、僕たちいつもと変わらないね」

「そうだな。いつも一緒にいるもんな」

「うーん‥‥じゃあ、いつも以上でお願いします‥‥」


日向がいつも通り怜に抱きついて「いつも以上」と言っている。いつも以上って‥‥どこまでを言うんだ?

「ひな‥‥」

怜が日向に貪るようなキスを繰り返す。

「怜‥‥さん‥‥」

嬉しそうに怜の全てを受け入れる日向。

彼らの辞書に「いつも以上」という言葉は必要ないかもしれない。毎回のようにいつも以上の甘くて温かい時間を過ごしているのだから。



※※※



日向の勤務先でもパートナーシップ制度に関する人事制度があるが、日向がこの制度を利用していることを知っているのは直属の上司と部下、そして人事部のみ。

そのため、部署内のほとんどのメンバーからは、

「ご結婚おめでとう!」と言われていた。

‥‥厳密にいえば結婚ではないものの、同じようなものなので日向は特に何も言わずに皆にお礼を言う。


「日向さん‥‥良かったです! 私も嬉しいです‥‥」と言うのは日向の部下の新入社員の陽菜(はるな)

社内では唯一、怜を見たことがあり日向がカミングアウトしても普通に接してくれた。本人は日向に片想いしていたが、さすがと言われるぐらいの切り替えの早さである。

「ありがとう、陽菜さん」

「指輪がまた良きですね‥‥憧れます」

「うん、実感湧いてくるよ」


「おい日向♪ お前合コン誘っても全然来ないのに真っ先に結婚するとはな。どんな嫁さんなんだよ」と同僚に言われる。

「うーん‥‥優しくて、カッコよくて、優しくて、頼りになって‥‥」

怜を思い浮かべるだけで日向は真っ赤になりそうだ。

「ハハ‥‥照れすぎだよ。というか優しいが2回出て来てるし。奥さんの写真とかないの?」

「えっ‥‥」

あるけど‥‥怜さんとの写真は。でもまだ見せる勇気がない‥‥


「ちょっと! 日向さんはお相手の方のことを考えると仕事に支障が出るくらいゾッコンなんです! 私の仕事にも支障をきたすので‥‥もうそのぐらいでお願いできませんか?」

陽菜が助けてくれた。

「おう‥‥そうか。仕事しないといけないもんな。お前が合コン行かないぐらいの素敵な奥さんなんだろうな」

同僚はそう言って去っていった。日向はホッとしたのかふぅと息をつく。


「陽菜さんありがとう、助かったよ」

「いえいえ。本当に日向さんは分かりやすいので、喧嘩して仕事休むとかしないでくださいね♪」

「ハハ‥‥気をつけます」


仕事も終わって日向が帰っていると怜からメールが来た。夜もヘルプに入るので少しだけ帰りが遅くなるらしい。

怜はバー「ルパン」を経営するバーテンダーであったが、体調を崩したことがあり、今はランチ営業中心に日中のみの出勤となっている。

このバーで日向は怜と過ごす時間が本当に好きだった。バーテンダー姿の怜さんもかっこいいが、日中のランチ営業の黒シャツにブラウンの腰エプロンの怜さんもかっこいい‥‥そう思い浮かべていてふわふわした気分になっていたが、怜の帰りが遅くなることに気づいて現実に戻された。

「今日は僕が夕食を作っておこうっと」



※※※



家に帰って夕食を作り終えた日向。

怜ほどの手の込んだものは作れないが100均などの便利グッズを駆使して‥‥ある程度の料理は作ることができるようになった。

最近お祝い続きで美味しいものを食べてばかりだったから、鯖の味噌煮をメインにしてみた。怜さんまだかな‥‥♪ そうだ、お風呂も沸かしておこう。お風呂場でスイッチを入れて、パジャマの準備をしておく。


ここまで完了し、日向はあることを思いついた。これって‥‥ご飯にします? お風呂にします? それとも‥‥ということが出来てしまうのでは?

一気に顔が熱くなる。いや、これまでも一緒に住んでいたしこういうことはあったけれど、大体玄関先でハグしてその流れで夕食にして、ソファで甘えて各自がお風呂に入って‥‥また甘えて‥‥という流れだった。

ひょっとしたら‥‥怜さんは先にお風呂に入りたい日もあるかも‥‥そしてひょっとしたら‥‥先に‥‥僕のことを‥‥


いやいや、そんな‥‥何考えてるんだ。

日向は急に恥ずかしくなってきてしまい、ソファでクッションに顔を埋めてジタバタしている。

はぁ‥‥パートナーシップ制度、または結婚って‥‥こんなにドキドキするんだ‥‥意識し過ぎかな‥‥けど‥‥

怜さんのことが‥‥怜さんのことが‥‥大好きなんだもの‥‥


ガチャ

怜が帰ってきた。え? 待って‥‥どうしよ‥‥とりあえず‥‥玄関へダッシュ!

日向が玄関までパタパタとやって来た。ひなが玄関に来るだけで可愛い‥‥癒される‥‥ああ‥‥抱きしめたい‥‥と思っている怜。

「ただいま、ひな」

「おかえりなさい、怜さん」

‥‥いつも抱きついてくる日向が緊張しているのか動かない。どうしたんだ?

 

「あの‥‥怜さん‥‥! ご飯もあります、お風呂もあります、それとも‥‥僕もありますっ‥‥!」


日向が顔を赤くして一気に言った。あ‥‥緊張して言い方を間違えちゃった‥‥

怜は俯いている。怜さん‥‥僕の言い方変だった?

俯いている怜であったが、実は笑いを堪えていた。

ひな‥‥新婚生活のあのやり取りをしたかったんだ‥‥言い間違えたのか本気なのかわからないが‥‥もう愛おしすぎる‥‥


「ひな‥‥ほんとに可愛い‥‥」

怜が日向をぎゅっと抱き締めてくれた。

「ご飯もお風呂も、そしてお前もあるなんて‥‥俺は幸せ者だよ」

「僕も怜さんがいて幸せ‥‥一度言ってみたかったんだけど緊張してちゃんと言えなかった‥‥」

「フフ‥‥じゃあ全部いただくから」



※※※



結局怜の答えは「全部いただく」ということだったので、いつもと同じか‥‥と思ってしまった日向。いや、僕ったら‥‥何を期待していたんだろう。

それでも、抱き締められながら日向は怜の顔を見つめる。

「僕って言って欲しかったよ‥‥」

大きな瞳を潤ませて日向にそんな顔で言われると‥‥怜の理性はどこかへ吹き飛んでしまう。

「ひなっ‥‥」

思い切り唇を押し付けられてしまった。え、怜さん‥‥ちょっと激しくない‥‥? 僕‥‥どうなっちゃうの‥‥?

「ひなが玄関に来てくれる時は、俺は‥‥いつもお前を真っ先に欲しいって思ってるんだから‥‥」


「怜さん‥‥僕も‥‥怜さんがいい‥‥」

夕食もお風呂も準備されていたが、今日はまずはお互いを愛することに決めた2人。今までずっとそうしたかったのか、これまで以上に時間が過ぎていくのが早かった。

「毎日こうだと‥‥夕食食べ損ないそう」と怜。

「今日は僕が作ったんだから‥‥ちゃんと食べてね?」

「そうだな‥‥だけど‥‥もう少しだけ可愛いひなが欲しい」

「怜さんっ‥‥」


もう少しと言いながらもそこそこ愛され、ようやく2人は夕食を食べることになった。

「美味しい、ひな」

「良かったー!」

「嬉しいな、家に着くとご飯があるっていうの」

「うん‥‥怜さんいつも作ってくれて‥‥ありがとうございます」

「いえいえ」


夕食が済み、後片付けをしながら日向が言う。

「お風呂も沸かしたから、怜さん先にどうぞ」

「うーん‥‥時間的に遅くなりそうだよな?」

夕食前の色々が長かったからである。怜は日向を後ろから抱き寄せながら言う。

「一緒に風呂入るか?」

「え?」

またしても日向の顔がほてってくる。

「それって‥‥つまり‥‥その‥‥」

「フフ‥‥2人一緒に入った方が早いだろ?」

「あ‥‥そうだね」


5年同棲していたのに一緒にお風呂に入るのは今日が初めて。だが‥‥意外と普通かも。交代で身体を洗えば時間短縮。最後に湯船に一緒につかる。

「ほら、この方が早いだろ?」と怜。

「本当だ‥‥でもさ、1人でゆっくりしたい時もあるでしょ?」

「そうだな‥‥けど今日はひなと一緒の気分‥‥」

怜に抱き寄せられた日向。急に恥ずかしくなってきた。

「怜さん‥‥」

2人はキスをしてお互いを温め合う。


前からであったが、日向はお風呂上がりの前髪を下ろした怜に色気を感じている。

今日も同じようにベッドで怜の顔をじっと見る日向。

「前髪を下ろした怜さんを見れるのは‥‥僕だけなんだから」

「じゃあお風呂上がりの可愛いひなを見れるのは、俺だけだ」

ぎゅっと抱き合って眠りにつこうとする2人。

時々どちらからともなく唇を求めに行ってしまって、なかなか眠れないが、この時間が幸せである。


始まったばかりの2人の新婚生活‥‥

これからも甘くて幸せな毎日が続きますように。




 

終わり

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