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歌姫と道化師

カティ視点の話です。

「ふーん…なかなかしっかりやってるんだ、テムダ」




私、カティ。学園を出て三年、今超人気のシンガーマジシャンとして活動しています。


え?シンガーマジシャンって何かって?単純に言うと、魔術師の歌手です。魔術の中に、術歌というのがあったわね?その詠唱をより音楽的に、効果をより芸術的にして、皆さんに感動を与える職業です。

え?動機?…昔からアイドルに憧れてたのよね。…おかしいかしら?


基本の演出は、歌の要所要所で術歌を解放して、演出をしていくのだけど、やっぱり溜め込んだ術歌が一番いいの。でも、要所での解放で歌の終わりに大きく溜まってなかったり、逆に終わりに力を入れすぎて、歌の途中が退屈だったり……一人ではできない職業だとずっと言われてたの。

だって、普通の人は、詠唱を一つしかできないもの。

あと、詠唱のいらない魔術も演出に使えるけど、詠唱いらなくて演出に役立つ魔術なんてほとんどないの。


…だけど私は違うわ。




『次は光と雪の歌姫、カティさんです!』


曲が始まる。歌詞が始まるまでに宣言しないと…


「…二つのデュアル・レシーテ


歌うのは光の歌と風の歌。暖かさと冷たさがうまく調和していると評判なの。


…サビの直前、一つ目の見せ場ね。このために練習したんだから!


パンッ!と指を鳴らす。それと同時に、風の歌を解放する。グレイシャルさんからもらった氷の指輪を、綺麗に演出に取り入れるために、必死でフィンガースナップを練習したの。


『おおっ!』


観客から感嘆の声が漏れる。氷の粒がキラキラと光りながら風の中で舞っているの。その中で私は歌い続ける。新しく歌い直すのは雪の歌。




…次の見せ場は間奏の直前。間奏まであと十秒…。


「…歌唱終了」

小さく雪の歌を終わる宣言をする。え?早過ぎるって?…これでいいのよ。


雪が降り始める。あまり長く溜めてないから、十二、三秒ですべて落ちるんだけど…


「…スリート、お願い」

私にはこのがいるもの。

雪がすべて落ちる直前に、召喚されたスリートが雪を舞い上げてくれた。

間奏の途中、私はクライマックスに向けて新しい氷の歌を始める。演出は、スリートが舞い上げた雪に、新しく雪を降らせてくれるから、上に動く雪と、下に動く雪で空間が歪む演出をしてくれている。




さて、歌もクライマックス。最後は私の演出能力、すべてを見せる場所よ。


間奏からずっとそらを舞い続けてくれたスリートに合図をして、二つの術歌の終了を宣言する。さらに指を鳴らして、願う。


(女神の光!)


まず、氷の術歌の効果で空中に氷のクリスタルが浮かぶ。そして、指輪の力でクリスタルを大きくする。さらにスリートがもっと大きくして、外見も綺麗に加工する。そして術歌の光と天界術の光がクリスタルに差し込めば…


『………』

観客はもう何も言えないわ。プリズムの原理で、辺り一面に虹ができたの。クリスタルも、三層の質の違う氷でできてるから、光がいろいろな方向に曲がるわ。


そして終了を意味する礼をする。


『…ハッ!カティさん、ありがとうございました!続きまして…』

テレビの司会もボーッとしてたみたい。大成功ね!






で、話は始めに戻るけど、私は今、テムダの所属するサーカスを見に来ています。あ、言ってなかったけど、テムダは学園を出てサーカスに入ったの。今ではピエロとしてサーカスを盛り上げてるみたい。


まあ、今売れっ子だから私はとっても忙しいんだけど、どうしてサーカスを見に来ているかというと…




「え!?サーカスの演出!?」


「そうなんだよ。あの銀月サーカスから直々にオファーが来て。知り合いもいるらしいし、一つ頼まれてくれないか?」

所属する事務所の偉い人からそんな話を受けたの。


「銀月サーカス…テムダのいるところね。わかりました、その話、お受けします」


「ありがとう!じゃあ、これチケット。参考に一度見に行ってきなさい」




こんな話なの。


そうこうしている内に、サーカスの公演が終わった。挨拶にも行っておくように言われてるから…




「あ!カティちゃん!今回はありがとうね!」

関係者入口から入ると、ここの座長さんに会った。偉い人が言うには、気のいいお姉さん(おばさん?)らしい。


「カティちゃんみたいなかわいい娘が来たら、ウチの男衆がやる気だすわね。…本当にありがとうね」


「いえいえ、こちらこそ。…とりあえず挨拶に行きますね」


「あら、じゃあ着いてらっしゃい。控室はこっちよ」




で、座長さんに連れられた先には…


「うわ!?本物?本物?」


「座長!サインは…」


「ジャン、本人よ。ベルグ、後にしなさい」

熱烈な私のファンがいたわ。で、私の探しているのは…


「おう、カティ」


「テムダ、久しぶりね」


いたいた、ピエロのテムダ。


「わりぃな、こんな変な仕事に付き合わせちまって」


「テムダ、変とは大した言いようね」


「おっと、ごめんなさい座長」


「ココットに頼んでおくわね。テムダの晩御飯抜きって」


「うげっ!本当にすみませんでした、座長!」


楽しそうだなぁ…


「そういえばテムダ、私たちの公演場所って…」


「ああ、アズラの家の近くだな」


「じゃあ公演の前にチケット二枚…いや、お父さんの分も足して三枚持って遊びに行きましょ」


「そうだな」


偶然か必然か、私が加わる公演は、アズラの家の近くなの。だから宣伝…チケット渡すからちょっと違うか、ついでに遊びに行こうと思って。


はぁ…それにしても私も二十歳。そろそろ春が来ないかと思うんだけど…


「どうした、カティ」


…ないわね。


まぁ、いい人はいずれ見つけるとして、今は歌術師業に専念しないと。売れてるうちに、しっかり地盤を固めておかないと、後で痛い目みるからね。




…さて、私の話はこれでおしまい。

じゃあね、また会う機会があれば。

カティ…一年生のときはヒロインのような扱いでしたが、二年生からは一同のリーダー的存在になった少女です。初期設定ではもっとおしとやかな性格(入学式はその設定)でしたが、序盤であっさり崩壊、そんな性格になってしまいました。


スリート…ストーリーではかなり出番の多いほうの精霊です。一人称はだれも使っていなかったので『ボク』です。性格も若干それに依存したような…。初期ではもう少し契約が遅かったのですが、やっぱり冬の話がいいと思ったので、早めました。


テムダ…一年生のときは重要人物でしたが、ストーリーが進むにつれて扱いが雑になった不憫な少年です。重要人物だった証拠に、最終決戦の三人に入っていましたが、死んだと思われたり、最終二話でも出番が少なかったりと散々です。本来はカティのリーダー的部分はテムダのものだったのですが、ネタキャラ化を決定した時点でカティに移しました。強いんですけどね…。

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