幕間 王子様イベント発生の兆し
ノアの騒動から約一月が立ち、ノエルたちは落ち着いた学園生活を送っていた。
季節は秋から冬へと移り変わろうとしている。
大方の事後処理が済んだ中で、教会の大司教についても後任が決まった。
アイラ=ミハエル=フォーサイス。元治療院の最高責任者で現大臣、ジャンヌの夫であり、ウィリアムとアイザックの父だ。
アイラが大司教に着任した理由は、アイザックが神官の道に進むと決めたからだ。将来を見越しての選任といえる。
(これで教会も王室傘下に下ったようなものだな。一連の騒動を考えれば、王家は教会を野放しにできないし、監視するなら妥当な判断だけど)
第一皇子を教会に置くなら、王位を継承するのは現時点で第二皇子のウィリアムになる。
ノエルにとっては自分の身の上が益々不安になるばかりだ。
(性格的に、ウィリアムの方が為政者には向いていそうに見えるっちゃ見えるけど)
ノアの教員姿も徐々に見慣れてきた。
クラブメンバーは始め、多少の抵抗があったものの、今では普通に教師として接している。
ノエルも、魔道具の作り方を教わるために、ノアの研究室に通っていた。
皆それぞれに収まるところに収まった訳だが、目下、ノエルの不安はマリアだった。
事件より数日後には目覚めたアイザックと違い、マリアは未だに目覚めない。
(怪我は根治している。魔力量も充分。治療院は原因不明と告げている)
ここで、ノエルは確信した。
王子様イベントが発生した、と。
(物語の節目節目に起こる不定期イベント。主人公と攻略対象たちの親密度を上げるチャンス!)
前半での主人公と攻略対象は、MAXでも両片思い状態だが、ある程度の親密度を上げないと、後半のストーリーに入れない。
このイベントは、親密度を上げきれなかったプレイヤーへのミニイベントで、親密度をがっつり稼げる。
また、他の攻略対象にターゲットを変更したり、親密度を満遍なく上げて友情エンドに備えることも可能だ。
何度もやり込んで総てのルートを完成させたいプレイヤー向けのお助けイベントでもある。
更には目線が主人公から攻略対象に変わるので、新鮮味があって面白い。攻略対象の心理描写が多くなる分、親近感が湧いてより好きになるというメリットもあるのだが、この世界では、その辺はあまり意味がない。
(ミニイベントは数種類あるが、どれもゲロ甘い。恥ずかしいほど奥手なマリアとアイザックの仲も進展するはずだ)
ニヤリと、ほくそ笑む。
ノエルは机に向かい、計画書を練り上げた。
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お読みいただき、ありがとうございました。 (霞花怜)