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モブに転生した原作者は世界を救って、攻略対象と恋をする⁉  作者: 霞花怜(Ray)
第1章:本編Ⅰ 自分が書いた乙女ゲームの世界を守れ
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11.原作者が推す悪役令嬢 レイリー=ガブリエル=ファーバイル

 学院の庭は大変広い。

 設定資料集に学院内の地図が載っているのだが、建物の三倍はある。四季の庭園と名付けられ、四つの区画に分かれている。学生にとっては、訓練場以外で魔法の自主練をする場所でもある。

 中でも春の庭は最も洗練されていて、貴族の子息・息女の利用が多い。奥にある池の畔の四阿は国王・ジャンヌが寄贈したこともあり、飛びぬけて立派だ。

 その場所に国王の息子が二人と近衛兵長の息子が顔を揃えていたら、何も言わずとも誰も近付かない。


(情報漏洩の心配はないだろうけど。絵面は美しいが、モブとしてこの場に立つと震えるほど怖いな)


 ウィリアム、アイザックの他に女性が二名、座っていた。


(マリアと、もう一人はレイリーか。意外といえば意外だ)


 レイリー=ガブリエル=ファーバイルは神官の家系の息女である。

 この精霊国には、独立中立機関として教会が存在する。今の大司教はレイリーの兄だ。神官になるには光魔法の適性が絶対条件になる。ファーバイル家は代々優秀な光魔術師を生み育ててきた稀有な一族だ。


(というのは表向きの建前で、実際は割と黒いことやって光属性を維持してきたんですよ、というのが私の作った設定なのだが)


 レイリーはその事実を知らない。一族を誇りに思っている彼女は、正義感が強く真っ直ぐな質の娘だ。


(悪役令嬢にありがちな、ただただ性格悪い、嫉妬で主人公をいじめ倒す、みたいな設定が嫌だっただけなんだが)


 今の彼女が実家のブラック具合を知ったら卒倒しかねない。特に兄の所業を知ったら、自害するかもしれない。


(まぁ、それは先の話であって、前半は割と平和だ。けどなぁ、前半もこの段階から関わってくるとなると、ちょっと厳しいかもしれない)


 レイリーのことだけを考えるなら、呪い事件の結末は変わっていて欲しいと思わなくもない。とはいえ、そういう訳にもいかないので、せめてウィリアムとの仲を深めておいてほしいと思う。


「やぁ、よく来たね、ノエル」


 ウィリアムがフレンドリーに手を振っていた。前回、会った時より警戒心が薄いように見える。

 ぺこり、と頭を下げて四阿に入った。


「ロキ、彼女は嫌な思いなど、していなかっただろうか」

「んー、ちょっと嫌な声は聞こえちゃったかも?」


 ウィリアムの問いかけに、ロキが考えながらノエルに視線を送る。


「気にしていませんよ。それに、悪口ではなく、単なる興味や関心の声でしたから」


 ノエルはマリアに手を振ると、奥に座るレイリーに頭を下げた。


「レイリー=ガブリエル=ファーバイルだ。初めまして、ノエル。気軽にレイリーと呼んでくれ」


 レイリーがノエルに向かい、手を差し出す。

 ノエルは素直に握手した。


「ノエル=ワーグナーと申します。お言葉に甘えて、レイリーと呼ばせていただきますね」


 レイリーは、いわゆるお嬢様言葉を使わない。それは彼女が戦士を目指しているからで、つまりはフレイヤの剣の後継者を目指しているからだ。国王・ジャンヌは彼女の目標であり、尊敬する存在だ。


(ウィリアムの婚約者だから当たり前なんだけど、レイリーがフレイヤの剣を手にできるのはマリアが放棄した時だけ。実は二ルートしかないんだよね)


 百合ルートに進んだ場合ですら、剣に選ばれるのはマリアだ。こんなに努力しているのに気の毒だと思う。


(そういうゲームだからって、現実だと、なかなか割り切れんもんだな)


 実際に目の前にいるレイリーは美しいし、良い人っぽい。ゲームの画面でみるのとは、やはり違う。思わず応援したくなる雰囲気がある。


(正直、私はマリアよりレイリー推しだからな)


 自分好みの当馬キャラが完成した。と、大変満足したものだ。更に猫又先生の神絵で、これ以上ない完成度となった。


(そういえば、乙女ゲーム雑誌の悪役令嬢キャラランキングで三位に入ったことあった。あれは嬉しかったなぁ)


 レイリーの手を握りながら、しみじみと昔の思い出に浸る。

 微妙に困った顔のレイリーに気が付いて、すっと手を離した。

 






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お楽しみいただけましたら、『いいね』していただけると嬉しいです。

次話も楽しんでいただけますように。

お読みいただき、ありがとうございました。        (霞花怜)

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