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魔王コスモス様は、麗しの勇者様と添い遂げたい。

作者: すみ いちろ

魔王コスモス様、勇者一行が終焉の間に」

「通せ」


 我が生誕より幾千年。我はカレピの経験がない。

 魔界随一の美貌と謳われ、そこにかしず夢魔サキュバスさえも凌駕すると言うのに。

 

「いよいよですね」

夢魔サキュバス。勝負下着とやらは身につけたぞ?」

「よくお似合いです。魔王コスモス様」


 ──勝負下着。女戦士のビキニアーマーとやらに近い。

 我にひざまず夢魔サキュバスさえも感涙しておる。

 この日をどれだけ待ちわびたか。

 猛者イケメンは、魔族にも人間にも居るが、我が魔力を目の前にしては立ち所に萎える。

 が、勇者は違った。

 あの立ち振る舞い。我を見つめる流麗なる視線。美しき鼻筋と唇。くっ……。想い出しただけで身震いする。


「早く会いたい……」

魔王コスモス様?」

「な、何も言っておらぬ!」


 ──恋。悔しいが、負けたのじゃ。が、勇者が彼氏カレピになってくれたなら。

 スイーツは喰わぬと約束する。そして、純白の婚礼衣装ドレスに身を包むのじゃ。


「お、お付き合いしたい」

魔王コスモス様! 下着ブラの肩紐が!」

「ぬっ! さ、サイズ感。せ、背伸びし過ぎたかの……」


 

 

 



「こ、魔王コスモス様! 四天王が手違いで勢い余って勇者様を!」

「な?! バカどもめっ! ゆ、勇者様は!?」

「ひ、瀕死の重傷を……」

「ぐっ!」


(──バタン!!)


 我は──。夢魔サキュバスの言葉に、扉を蹴破り走っていた。

 生まれて初めて、自分以外の誰かのために。

 下着ブラとやらがズレてるが、気にしてる場合ではない。


「どけぇーっ!!」

「こ、魔王コスモス様?!!」


 狼狽していたのは四天王だけでない。我もだ。


(ガバッ!!)


「ゆ、勇者様っ!!」

「め、女神……様? ぼ、僕は、もう……」

「えぇぃっ!! しっかりするのじゃ!!」


 この世に魔法はあれど、蘇生する呪文は無い。

 が、命そのものに魔力を吹きこめばあるいは──。


「美しい瞳。優しさに満ち溢れている。僕は幸せ者だ。けど、世界は──みんな、ごめん」

「分かった。争いは終わりにしようぞ。が、そなたの命は終わらせぬ」


 だが。く、接吻くちづけ……。

 う、生まれて初めてだ。お、想い人の勇者様と──なんて。


「ふ、うっ……。き、キス……。す、するぞ?」

「ぼ、僕は、助からな……」

「言うな。我が助ける」


 そーっと。そーっと。唇を……。

 うぐっ! ち、近い……。

 い、いや。もはや、一刻の猶予も許されぬっ!

 はぅぁっ!!? ハァハァ……。

 

 ふぅっ! うぐっ!! な、何という柔らかみ!!

 こ、これが、あ、あの、ゆ、勇者様の唇──あぁ……。と、溶けてゆく……。


 世界など、どうでも良いと思った。

 この、勇者様との接吻キスを──。永遠に。永遠に……。


 

 

 


 

 

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