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社畜OL、過去の妄想の産物を”黒歴史界”のえんま大王に裁かれる 〜おまえの黒歴史、救済します  作者: mono
裁き① 自分をモデルに!?ご都合ストーリー満載のオリジナル小説編
5/7

5.社畜OL、再び配信上で公開処刑される

 「・・・本題?」


 


 あれ? たった今私はえんま大王に有罪札を叩きつけられましたが、これが前置きだと?

 前置きの段階ですでに私は有罪判決をくらってるのに、これ以外にもまだ有罪判決を下される?

 過去の私、一体何をしたんだ?




 「原告、カリナ・フォーリュおよびユウリ・ロビスタ。被告人、美園まちへ今のお前らの国の現状を伝えよ。」




 えんま大王に促され、カリナが静かに口を開いた。




 「はい・・・盗賊を倒してから数年が経ちましたが、未だにミンジュ国に平和が訪れません。常日頃から敵国の刺客が送られてくるようになり、国民ともども気を張っていて疲れ切っています。過去に二度盗賊に襲われてはいますが、ミンジュ国は地形の関係もあり、そこまで敵襲を受けるような国ではないのです・・・。また申し訳ないのですが、私が攫われ、ユウリたちに助けに来てもらったことも数多くあって・・・。どうしてここまで私たちの国は襲われるようになってしまったのでしょうか?」




 「あと、自分はカリナの側近にふさわしくないんじゃないかって悩んだマチが、王宮から去ろうとしている。俺たちは仲間だ。ずっとずっと一緒にカリナを守っていくって決めたんだ。それなのにいきなり王宮から出ていくとか言い出して・・・あんたなんか余計なことしたんだろ?」




 「私たちはただ、このまま仲間と平和に暮らしたいだけなんです! ユウリやマチ、王宮の皆や国民たちと笑い合いながらずっとずっと一緒にいたいだけなんです! それなのに、私たちの大事な仲間が王宮からいなくなろうとしている・・・まちさんお願いします! 私の大事な仲間を奪わないでください! お願いします、お願いします・・・」





 ”涙目カリナちゃんかわいい”

 ”カリナちゃんかわいそう・・・”

 ”そうだよね、皆で仲良く一緒にいたいよね・・・”

 ”仲間には仲間の人生があるんだし、別の道に進んでもよくないか?”

 ”盗賊倒したのに、まだ戦わなきゃいけないの?”

 ”まぁ一応王女様だからな・・・狙うやつはそりゃいるでしょ”

 “てかむしろカリナちゃん戻ってきたから、王族狙うやつ多くなったんじゃ?“

 ”ちゃんと盗賊倒したんだから、平和にしてあげなよ”

 ”このお話ってちゃんと完結してんの?”

 ”たしかにこれは有罪だな”

 ”もしかして妄想主、未完のまま放置してる?”

 




 ユウリに睨まれ、カリナに縋るような目で見つめられ、私は慌てる。




 「ちょ、ちょっと待って! 物語はちゃんと完結してるし、最後だってミンジュ国で皆仲良く平和に暮らしましたとさ、で終わらせてるよ! それなのになんでそんな流れに・・・」




 「被告人、美園まち。こいつらの物語は本当に最後まで完結しているのか?」




 「え?」




 「お前は完結したと思っているかもしれない。だが、中途半端にこいつらのその後を妄想しなかったか? 新たに余計な設定を思いつき、これは良いと思って続編へと筆を走らせ、そのまま完結させずに放置しているこいつらの物語はないか?」




 「・・・あ」




 えんま大王にそこまで詰められて、私はふと思い出した。






 ・・・あった。「カリンバルものがたり」の続編。

 確かに私は途中まで続編を書いていたかもしれない。




 「・・・あるんですか?」





 “この反応はあるな“

 “妄想主、有罪フラグ!!!“

 “自分の作ったキャラクター泣かさないであげて~“

 “別に書こうが書かまいが、それは本人の自由じゃない?“

 “でもこのままじゃ2人が可哀想じゃん・・・“

 “続き書いて完結させるに1票“





 「えっと・・・続編で新たな冒険とライバル登場させようと思って、王宮にいるカリナを誘拐させた」




 「されたな、すっげぇ癖強いやつにな」




 「トーンマ・ダカンクスさんね・・・」




 なんとも言えなそうな表情で顔を見合わせる、ユウリとカリナ。




 「そんでもって、その男がマチのこと気に入って、マチに会いたいがためにひたすらカリナを誘拐したり、色々とミンジュ国にちょっかい出すようにしたような・・・」




 「自分のことを追う男を出してくるなんて、あいかわらずのご都合ストーリーだな」





 “主のネーミングセンス草“

 “なんか絶妙にダサくないか?“

 “幼い頃の主のセンスを否定してやるな・・・w“

 “似たような名前考えたことあるから、俺は何も言えない・・・“

 “ついに自分に好意持ってるキャラクター出してきたァ!!!“

 “自分モデルのキャラクターに会いたいがために・・・・・・“

 “ここまでくると次はどうなるのかワクワクする“

 “自分が活躍するお話楽しいね!!w“


 .

 .

 .

 .

 



 「うぐぅ・・・!」




 えんま大王とコメント欄に思いっきり刺される。

 分かってる、分かってるよ! ご都合ストーリーだなんて!

 それでもあの時の私は、そんなご都合ストーリーを楽しく書いてたんだい!!!




 「・・・マチが王宮からいなくなろうとしてるのは何故ですか?」




 「えっと・・・マチはあんまり自己肯定感高くないんだよね。だからあることをきっかけに、自分に自信無くしちゃったことが理由だったはず。カリナには自分がいなくてもユウリもいるし、他の仲間たちも側にいる。自分がカリナの能力引き出してたけど、今のカリナにはそれも必要ないし・・・。このまま皆と一緒にいても、自分は皆の役に立てないって思っちゃって・・・」




 「きっかけになったあることってなんだ?」




 「・・・ユウリが大怪我したこと。怪我する前に助けることができなかったって後悔してる」




 「・・・・・・」




 「確かにあったね、攫われた私を皆で助けに来てくれた時にユウリが大怪我したこと・・・言われてみると、マチの様子がおかしくなったのってその時からかも・・・」




 「え、えっと・・・こんな設定考えてごめんね・・・」




 一気に空気が重くなった2人に、私は罪悪感を覚える。

 本当こんな設定考えて、おまけにそのまま放置しちゃってマジですまねぇ・・・。

 あわあわしていると、ユウリが真剣な顔で私を見る。

 ・・・真剣な表情ごちそうさまです。




 「・・・その後はどういう展開にしようと思ってたんだ?」




 「・・・元々いた森に帰っちゃったマチを皆で迎えに行って、敵も倒して、王宮に皆で戻ってめでたしめでたし☆ って展開にしようと思ってました・・・」




 「っ! ユウリ! 私たちマチのこと助けられるよ! マチ王宮に戻ってきてくれるよ!」




 良かった~・・・とホッとした表情のカリナ。そんな顔もかわいい。さすが。




 「・・・マチが俺たちの仲間のままでいてくれるのは分かった。でも、そうなるにはお前が続きを書かなきゃいけないよな? お前が書かないと敵もいなくならないし、マチだって戻ってくる展開にならないんじゃないか?」




 ちらり、とユウリがえんま大王に視線を向けると、えんま大王は静かにうなづいた。




 「そいつの言う通りだ。原告がいる世界はお前が作り出した世界。物語の続きを書きだした以上、それを完結させないとこいつらの世界に平和は訪れないだろうな」




 「そんな・・・昔の私だったら書けたかもしれないけど、今の私は社畜すぎて小説書ける時間がないよ・・・」




 ただでさえ毎日始発、終電間近の時間帯の通勤なのだ。

 休みの日と言っても体力回復のために寝ていることが多い。

 社会人になってからオタ活する時間もほとんどないのに、ましてや小説を書く時間なんてとれるかどうか・・・。




 「書ける書けないではない!!! 書くんだ!!!」




 「いった!!?」




 スパーンっと再度えんま大王が「有罪!」と書いた白い札を私に向かって投げる。

 思いっきり私のおでこに当たったそれは、1枚目の有罪札の横に綺麗に重なった。




 「良いか、被告人! 『カリンバルものがたり』はお前にとってはただの妄想であり、死ぬまでに存在を消し去りたい黒歴史の一つかもしれない。でもお前の勝手な妄想で作られたそいつらにだって、意思や生活、生き方があるんだ! お前が作り出したものなら、お前が責任を持って最後までそいつらの今後を決めてやれ!!!」




  「・・・!」




 「お前はこいつらを放置したつもりは一切なかったであろう。確かに設定や世界観がお前の中で決まっていたら、それなりにこいつらはその通りに動けはする。でも、動き続けられるのはお前がこういう展開にしようと思っているところまでだ。物語を作るだけ作って放置、完結させない、ましては存在を忘れていた。それじゃあこいつらの物語は進まない。だからちゃんと書いてやれ。物語を完結させろ」




 「えんま大王・・・」




 「お前が始めた物語だろう」




 「おぅふ・・・」





 ・・・なんだかどっかで聞いた覚えのある言葉が聞こえてきたような気がする。





 バンッ! とえんま大王が笏で台を叩き、大声で叫ぶ。




 「それでは改めて判決を下す! 

  黒歴史改定法第23条・長年の妄想放置罪により、被告人を有罪判決とする!」



読んでいただき、ありがとうございます。

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