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追憶  作者: ハムっち日常
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事の始まり

ども。ハムっち日常です。春が近づいてくるとなんか趣深いと言うか、懐かしいような風が吹いて来ますよね。そんな気持ちで書かれたものがこれです。短くしながら読みやすくしてみたのでぜひ読んでみてください。

今、俺の前でとんでもなく不可解な現象が起きている。きっと誰もこんなこと予想する事は出来ないだろう。意味が理解できない。眼前で起きている出来事を理解しようとしてか、はたまた理解を拒もうとしてか、天を仰ぐようにして空を見上げるとそこには青々とした景色が広がる晴天が今度は視界に飛び込んできた。

あー、景色が綺麗だ。晴れ晴れとする。なんて言うんだっけか、確か理科で習ったんだが.....あ、そうそう、一だ一。こんな雲ひとつ無い晴天は雲量一だ。多分。

何してるんだろ、俺。急にバカバカしくなってきてついには自ら視線を元に戻す。やはりそこには有り得ない事が起きていた。


「さっきからキョドったりお空を見たり一体何してんの」


「え?あぁ、いや別に。と言うか君誰?お家の人は近くに居ないのかな。俺本当に君のこと知らないんだ」


「嘘よ!有り得ないわ、だって私はずっとお兄ちゃんの妹なんだから」


ほーら見ろ、やっぱり理解できない。俺をどっかの兄と勘違いしてるのか?それとも子供心の悪ふざけか?いい加減にしてくれ。

かと言って大人気なく怒鳴り散らしたところで何の解決にもならないことを理解している俺は、理解しているからこそこの状況の沼にハマり、動けなくなっているのだ。そこでもう一度点を仰ごうとしたところで俺は、はっとあることに気づく。それは至って単純で、誰にでもわかるものだった。


「て言うか俺と君とじゃ全然歳が離れてるんだけど」


これは本当の事だ。現に俺は二十八で、対するこの子は多分だけれど十歳くらいに見える。まだ小学生じゃないか、こんなにも歳が離れている兄妹っているだろうか。

俺が言ったこの一言が混乱状態なもはや戦場のような状況を変えた。さっきまで妹だ、妹だと言い張って聞かなかった女の子が、初めて言葉につまったのか、うぐぐ、と唸ったのだ。ここが正念場と見た俺はこの状況を打破する為に更なる言葉責めを決め込む。


「君は小学生で、俺は大人だ。こんなにも年が離れているのもおかしな話だし、第一に、俺の家族に妹は居ない。俺はずっと一人っ子だった、だから俺に妹なんかいない筈なんだ」


「お兄ちゃんは分かってない、分かってないのよ.....」


絞り出したような少女(以降少女と呼ぶ)の声は俺らの真横を愉快に話しながら通り過ぎて言った男の二人組にかき消されてしまって殆ど聞こえたか聞こえなかったくらいだった。少女のわかって欲しいのに分かって貰えない悲しみと悔しさの混じった半泣きの顔を見ると良心がぐっと痛むがこの状況を何とか終わらせたかった俺は、そんな少女を背にさよなら。とだけ言ってその場を立ち去った。

俺は普段はこんなにも優しく接することは無い。むしろ、強く当たる方がおおいほうだ。先日は缶蹴りをしていて遊んでいた小学生らしい四人組が遊んでいて、たまたま俺が踏もうとした地面に缶が来てしまって踏みつけてしまった時、わざとでも無いのにその四人組は大袈裟にこちらに対して不満をぶつけてきたから俺も少々強く言い返した。すると、その四人組は半べそをかきながら俺に謝って帰って行ってしまった。しまった、と思った時には後の祭り。以降俺の近くには子供は近寄って来なくなった。こんな俺に近づいて、更には血縁関係だなんて言うとは中々肝の座った子供だ、と俺は思ったのも相まって俺が混乱してしまったのだ。それに、驚いたのは自分自身にもあった。何故だか本当にあの少女が親しい血縁者のようにも感じたのだ。どこか懐かしいような、けれども懐かしいと思う途端、懐かしくないような気もしてくる。なんとも不思議な話だ。あの少女には憤りも、うざったらしさも感じられなかった。誰なんだろう、誰なんだろう。

途端にはっとした。自ら少々との接触を拒否したのに、いつの間にか少女の事を考えるので頭がいっぱいになっている。頭を軽く横に振った。これじゃなんだか、「自ら少女との接触を求めているみたい」じゃないか。そんなことを考えていると、俺の自宅に着いた。俺の自宅はアパートではなく住宅街にある一軒家で、以前は母と住んでいたのだが、六年前に認知症が進み、最後は俺のことも忘れたまま、他界した。俺の事を愛情持って育ててくれたシングルマザーだった。

カチャリ、と自宅の玄関の鍵をあける。中に入るといつも通りしんとした空間がひろがっていた。


「小腹がすいたな、飯でも作るか」


リビングへと向かうと丁度タイミングを見計らったかのように腹の虫が鳴る。俺は冷蔵庫へと向かって冷蔵庫の扉を開ける。中には昨日買っておいた具材が眠っていた。豚肉にネギに後大根、人参.....味噌もあるな。俺は今考えた具材を冷蔵庫から取り出して台所に並べる。今日の汁物は豚汁に決まりだ。台所の棚から中サイズのアルミ製の鍋入れを俺は取り出すと、その中に豚肉をいれ、少し炒めたら次に大根などの野菜を水を加えつつ茹でる。そうして水が沸騰し始めた頃くらいになったら今度は味噌を大体の量を入れて混ぜる。そうすると十五分後にはただの具材が味噌の味が染みた美味しい料理となる。豚汁が出来上がると後は冷凍庫に入れてあった冷凍餃子取り出し、レンジで数分温めて解凍させる。そしてメインとも言える米は面倒くさくなったので結局インスタントの物にした。結果作ったのは豚汁だけとなった。それを俺は淡々とテーブルに並べていき、丁度最後のインスタント米が置かれた時、俺は席について


「いただきます」


と、俺以外誰もいない静かなリビングで手を合わせて合掌した。やはり自分が作ったものが一番食べたくなるもの。お椀を持って手でそれを口にゆっくりと運んで具材と一緒に味噌汁も口の中へと入れる。味噌の少し塩っぽい感じと人参などの甘みが広がってまさに絶品と言える出来栄えだな。と、自分自身を褒められる程、今日のは上手く出来ていた。実を言うと、これは母から料理の手順を教わったのだった。母は勿論俺よりも早く、そして美味しく作れていたが当時の俺はまだ人参を切るのもままならない様な感じだったのでいつも母が俺の手を持って切り方を何度も教えてくれた。あの時に比べればだいぶ良くなったし、母の味に近づけているのかもしれないとも思う。不意にしっかりとした物が欲しくなり、今度は餃子を一口。これは普通に美味い。次は、とインスタント米を口に運ぶ。これは美味いが炊いたものよりかは若干硬い気がした。

食事も終え、風呂も入ってあらかたし終えると、俺は自室のベッドへと向かった。何だか今日はやけに眠い、いろいろ考えすぎたせいだろうか、そんな事を思いつつ、ベッドに寝転んで少しスマホをいじっていたらいつの間にか眠りについていた。ついに三、四時間前に起きた出来事をすっかり忘れて。その記憶がまた掘り起こされるのは、朝起きて外へと外出した時の事だった。




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