プロメテウスの火
有史以前。原人の時代に、人類は摩擦によって火を起していた――。
という常識に警鐘がならされたのは、二十一世紀も終わりごろ。
まったくのぐうぜんから、某国の地中より、原人時代のものと思しき『手紙』が発掘されたことによる。
木の皮をはいで、線を刻んだ単純なものだが、それらを調査、分析した学者らの関心をより惹いたのは、『手紙』そのものではなく、それらに埋もれていた『ごみ』のほうだった。
焼いて捨てたとおぼしき『ごみ』のなかに、透明な結晶がまじっていたのだ。
しらべてみたところ、結晶は氷河期に存在した生物のからだの一部ということが判明した。
水晶体である。
微生物に分解されず、奇跡的にのこった、この虫めがねの代替品から、人類は、かつて太陽から火をぬすみ、生活のために使用していたのではないか――
と、考えられるようになった。
※この物語はフィクションです。
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