嘘と月
寒い冬の夜。
俺しかいない道で俺は歩いていき、誰かとすれ違う気配もない。
電灯の眩しさで俺の目から涙が漏らした。
いいえ、それは嘘だ。
俺は泣いている理由は五分のことだ。
***
「ずっと前から好きだ」
「…………」
俺の告白を聞くと彼女は何も言わずに俺を眺めてくる。怪物を眺めているような目で。感動か同情かの合図を示さずに俺を見る。
「ありがとさ、けどうちはあんたのこと好きなんてないよ」
「分かってる」
「ならいい」
彼女は背を伸ばしてあくびをすると話しかける。
「この三年間ありがとね、いい友達だったよ、あんたは」
「うん」
「それじゃあね、康太はうちを待っているから」
康太。彼女の彼氏。俺ではない人。彼女が好きになった人。彼女とキスをする人。けしてに俺はなれない人。
「おう」
小走りで、彼女は去っていった。
この暗くなった空の下で、この大きい月のしたで、俺の初恋に振られた。
***
泣かないなら自分に嘘つきになる。
この美しい月の下で嘘をつくわけいかないのだ。
だから、今日で、嘘をつかないにした。
けれど、明日から、永遠の嘘つきになるのだ。