2度愛された女
ー最終話ー
これまでのあらすじ
華は竜二が前世では誠という名前だったことを明かした。
そして華は女優であったこと。
誠が新聞記者であったことなども・・・・
住む世界が違う二人がどうやって知り合ったのか。
また誠と華が一緒に脱走したことなども話す華。
そして若くして死んだ誠の死の理由は・・・・・
生き残った華のその後の人生とは・・・・
華は浅い呼吸を繰り返していた。
小さくハアハアと息遣いが聞こえる。
病室の電子音だけがゆっくりと同じリズムを刻んでいた。
竜二は、華の長い長い物語を静かに聞いていた。
過去の話でありながら現実のように話す華。
竜二はその様子を見て、華の話が真実だと信じて疑わなかった。
しかも竜二にも微かに前世の記憶があると思った。
華が話す情景を竜二も過去に見たことがあると思ったのだ。
いや、竜二ではなく誠として・・・・
どうりで華を最初に見た時に、どこかで会ったことがあると思ったわけだ。
さまざまなデジャブのような現象もそれで説明がつく。
そして目の前に横たわる今にも消えてしまいそうな華を見て、今世でもこんなに短い時間しか一緒にいられないことを竜二は呪った。
華が弱々しく口を開く。
『私は明日で31歳になるわ。
それは前世では誠が死んだ歳・・・・・
竜二としてあなたが生きていて本当によかった。
名前が変わっていたから、あなたを探すのに本当に時間がかかったわ。
もっと早くあなたを見つけられていれば、もう少し一緒に過ごせたのにね。』
『華、本当にもうどうしようもないのか俺たちは・・・・・・
何か方法があるんじゃないか?
たとえばもう一度神様に会ってみるとか。』
『ふふふ。
おそらく今日私が死んでしまったら、そしたらきっとまたあの神様に会うと思うわ。
でもいいの。
私がこの世に記憶を持って生まれ変わった目的は、今度は誠、いや竜二に長生きをしてもらうことだったから。
そしてあなたに過去のお礼を言いたいかった。
ありがとうって・・・・・・
あなたが31歳で死んで、私はその後50年以上も生きたのよ。
そして思ったの。
人生は楽しいって!
だから今度は竜二にその楽しい人生を経験してほしいのよ。
長い長い人生に退屈だって言って欲しい。
ただ老いて人生を閉じるまで・・・
平凡で穏やかな日々を生きてくれたらいい。
だから私はひたすら竜二の健康だけを願って、いろいろ 無理なこともさせたわ。
タバコだって・・・・
お酒だって・・・・
本当にごめんね。
そして私にはもう生まれ変わる理由はないの。
なぜなら、私はあなたに2度も愛されたわ。
もうそれで十分。
それ以上望んだら贅沢というものよ。』
『華・・・・・・・・・・・・
俺も華に礼を言わなきゃだよ。
2度も俺に最高の時間をくれた。
最高に幸せな時間だったよ。
ありがとう・・・・・・』
『ううん。
私の方こそあなたに会えて本当に幸せだったわ。
もうすぐ今日が終わるわね。
おそらく私の命はそこまで。
きっと私はもうすぐ死ぬと思うわ。
でも私にはあなたとの素敵な思い出がたくさんある。
寂しくなんかない。』
華の体がさらに消えそうなっている。
『私は誠が死んだときに涙が枯れるまで泣いた・・・
今度はあなたが私のために泣いてね。
そして私のお墓のまわりには真っ白なマーガレットの花を植えてほしいの。
あなたが私のことをいつまでも忘れないように。』
『真っ白なマーガレット?
真っ白な花・・・・・
白い花?
白井華!!』
竜二が華の名前を叫ぶ!
その瞬間!
華の体がスーッと消えていった。
『華!!!!!!!!!』
竜二はすぐさま華が寝ていたベッドを両手で探した。
しかし、そこには何の感触もなかった。
まるで華のこの世での痕跡はなかったかのように・・・・
跡形もなく華は消えてしまっていた。
そしてベッドには微かにマーガレットの香りだけが残されていた。
『さようなら・・・・・・誠・・・・』
竜二は遠くで華の声を聞いた気がした。
終わり
拙い文章を読んでいただいてありがとうございました。
次回はもっと長い小説が書ける自信がつきました。
もしよろしければ下にある☆で評価をいただけるとありがたいです。
レビューも次回作の参考にさせていただきます。




