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【完結】2度愛された女  作者: ぺこりーの
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脱走

これまでのあらすじ



華は竜二が前世では誠という名前だったことを明かした。



そして華は女優であったこと。


誠が新聞記者であったことなども・・・・



住む世界が違う二人がどうやって知り合ったのか。


また誠と華が一緒に脱走したことなども話す華。



そして若くして死んだ誠の死の理由は・・・・・



生き残った華のその後の人生とは・・・・





華・・・






華・・・・・・・・・






『ん?


誰か私を呼んだ?』




華は疲労でひどい目眩がしていた。


目を閉じている華の耳にどこからか小さな声で『華』と呼ぶ声が聞こえる。




華が自分の名を呼ぶ声が夢ではないと気づいて目を開けると、そこにはなんと誠が立っていた。


鉄格子の向こうに見えるのは間違いなく誠だった。




『誠さん!!』




『しっ!』



と誠が人差し指を口に当てて華を制する。



するとその時、『カチャリ』と鉄格子の鍵が開く音が響いた。


小さな音なのに、華には恐ろしく大きな音に聞こえた。




牢の中にはいってきた誠に華はしがみついた。


誠も力を込めて華を抱きしめた。




『誠さん、どうしたの!!


こんなことしたらあなたは殺されるわ!


私に構わず今すぐ逃げて!


今ならまだ引き返せるから!』





『華、聞いてくれ。


俺は華を連れてアメリカに逃げる。


今の日本では誰も華の真実に耳を貸そうとしない。


だったらアメリカで真実を明らかにしよう。


明日の夜、アメリカへ行く貨物船に乗れるように手配をした。


この船の船長は信頼できる男だ。


だから今すぐここから逃げよう!』





誠の目には迷いなどなかった。


むしろ強い意志で光り輝いている。


華はその強い誠の目を見て、この人に人生を委ねようと決めた。




この人とならもし一緒に死んでしまってもいいと思った。


おそらくうまくアメリカに渡れる確率は相当低い。



しかし、私のためにこの人は命をかけてくれている。


だったら私が命をかけずにどうするんだ。




『誠さん、わかりました。


あなたについて行きます。


でもこれだけは覚えておいてほしい。


もし二人がアメリカに行けなかったとしても、私はあなたが助けにきてくれたことだけでもうそれで十分だわ。


どうせ私は特高警察に拷問されて殺される運命だったのだから。』




華は本当にそういう気持ちだった。


自分のために命をかけてくれた、その誠の気持ちだけで十分だった。




もういつ死んでもいい。



もういつ死んでもいい。





誠は華の手を引いて壁づたいに歩いた。


牢の看守には差し入れだと言って睡眠薬入りのジュースを飲ませていた。


誠はつくづく新聞記者をやっていてよかったと思った。


牢の看守も顔見知りだったからだ。




しかし睡眠薬で眠らせたのは牢の看守ひとり・・・


1階の階段を上がれば、そこには当直の警察官が何人もいる。



しかも今日は牢に飛びきり美しい女優がいるのだ。


みんな一目見ようと何人もの警察が鼻の下を伸ばして牢に押し寄せていた。



華は牢の中でもまるで映画の衣装のように煌びやかな服を着ていた。


それを見たスケベな警察どもは『お〜!』とため息を漏らした。




だからこの警察署から華を連れて逃げるのは、小学生が白鵬に相撲で勝つより難しい。



ただ誠には作戦があった。


それは警察署の裏口から出る作戦だった。



実は裏口には当番の警察官がいるのだが、受付の窓口は床から1m以上の高さがある。


誠は一度、その受付の窓口の下をしゃがんだ体制でうまく入り込んだ経験があるのだ。


当番の警察官に見られないようにしゃがんで歩くと、窓口からは死角となって下が見えない。




ただしそれがうまく行くのは、警察官が椅子に座っている場合だけ。


運悪く警察官が立っていれば、いくらしゃがんで歩いても必ず見えてしまう。




誠と華は裏口の近くまでやって来た。




誠は当番の警察官とは顔見知りだから顔パスで出れる。


そして誠が警察官に挨拶をしている時に、華がそろそろとしゃがんで警察署を出ていく計画だ。




誠と華がジリジリと裏口の受付窓口に近づいて行く。


華の手を握る手がじっとりと汗ばんでいる。



窓口の明かりが目前に見える。



誠は意を決して窓口に向かってスタスタ歩き出した。


華も窓口から見えないようにしゃがんで歩き出す。




誠が『お疲れ様で〜す!』と当番に声を掛ける。


すると当番は椅子に座ったまま、『よぉ!お疲れ〜!』と挨拶を交わす。



誠が『うまくいった!』と思ったその時!




『おい!ちょっと待て!!』



と当番の警察官が大声を出した。


華の衣装が邪魔になって、華が衣装の端を踏んでしまったのだ。



その場で華が尻餅をついた音に警察官が気づいてしまった。




『お前たち、何をやってるんだ!!』



怒声のような警察官の声に、誠は慌てて華を手を引き警察署を飛び出した。




警察官の『待て〜!』という声を背中で聞きながら、誠と華は暗闇の中を走った。


今日は月も出ていない。


当時は街灯すらなかったから闇に紛れて逃げるのは案外簡単だった。




しかし追ってはすぐそこにいる。




誠は華の手を引いている分スピードが出ない。



徐々に距離が近くなる。




このままではダメだ・・・




そして考えた誠は急に華の手を離した。




『えっ!?』



驚く華は誠から目を離さない。



誠も華の目を見ている。



二人の距離が少しづつ離れていった。






明日は『逃げる二人』に続きます。

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