華との前世
これまでのあらすじ
不思議な女・・・華。
華と暮らし始めた竜二は、ときどき消えてしまいそうなくらい透明になる華を見た。
消えそうなほど透明になる現象は命が尽きる前兆なのか。
華が話し始めた竜二との前世とは・・・
そして再び出会った竜二と華の運命とは・・・
二人が辿る道がこれから明かされる。
華の容体が悪いことは一目でわかった。
透き通った肌には、赤い血が流れているのかもわからないほど白い。
医者にもなぜこれほど体力が落ちているのかわからない様子だった。
ただ医者が言うには体力が落ちているというだけで、特にその原因となる病気が見当たらないと言うのだ。
華の体には点滴や血圧、心電図などを常時計測するための管が何本も取り付けられて、四六時中ピコピコと電子音が鳴っている。
竜二は華の手を握らながら華が漏らした一言を愕然とした気持ちで聞いていた。
『華!ゆっくりでいいから話してごらん。
華が死ぬってどういうこと!?
神様って誰?』
華よりも竜二の気持ちの方が焦っていた。
まあそれは仕方がないことだろう。
唐突に『自分の死』や『神様との契約』という、常人には理解できない言葉が一度に語られたのだから・・・
しかし華は穏やかだった。
口元には笑みさえ浮かべている。
『竜二くん、よく聞いてね。
今すぐには信じられない話かもしれないけど、実はあなたも薄々気付いているはずなのよ。
あなたと私が前世でも一緒だったってことを。』
そういう話を当たり前のように話す華を見て、竜二は決して華がデタラメなことを言っているとは思わなかった。
いや、むしろ竜二はこれまで、何度となく華のことを遠い昔から知っている気がしていた。
そして何度となく訪れるあのデジャブのような感覚。
あれも過去に本当に経験したことだったんだと、今の華の話を聞いて竜二は思った。
『華、華が言うことは決して嘘とは思わない。
ただ、俺には前世の記憶がない。
華には前世の記憶があるのか?
俺も昔どこかで、前世の記憶がある人間がいることを聞いたことがあるんだ。
もしかして、華がその記憶の持ち主なのか?』
『そうね。
前世の記憶がある人間には変わりはないわ。
でも私の場合はそれともちょっと違うの。
ただ記憶があるだけじゃなくて、次の世に生まれ変わるときに神様と契約をしてしまったのよ。
それはどんな契約だったかというと・・・』
華が少しづつ前世のことを話始めた。
『竜二くんの前世の名前は誠。
あなたは新聞記者だったのよ。
当時は大きな戦争の直後で、日本がこれから復興するという大変な時期だったわ。
あなたは社会正義の塊みたいな人だった。
これからの日本で起きることを日本国民に正しく伝えるんだと、ジャーナリストとして誇りを持っていた。
素敵な人だったわ。
そして私の前世の名前は今と同じ華。
なぜかというと私には前世の記憶があるから、同じ名前でいたかったの。
それともうひとつの理由は、もし誠が生まれ代わった世界で前世の記憶を持っていたならと思ったの。
もし誠が記憶を持ったままだったら、きっとあなたは私を探し出すと思ったから名前を変えずにいたのよ。』
『俺の前世の名前が誠?
新聞記者?
前世って意外に最近なんだな・・・
てっきり前世の俺はスライムを連れて冒険している勇者か何かと思っていた。
冒険の書を頼りに勇者の剣を引っこ抜きに行くやつ。』
竜二がおどけて話すので華は笑った。
そして華は竜二にこう言った。
『ええ。でもあなたは本当に勇者のようだったのよ。
なんせ私を連れて脱走したんだから・・・』
『ええ??
脱走!?』
竜二は目を丸くした。
『新聞記者が女を連れて脱走って、俺はカルロス・ゴーンか!?』
『ふふふ。』
華は竜二を見て笑う。
そして華はこう思った。
『誠は次の世界では長生きできそうだわ。
正義感だけで生きて行くには敵が多過ぎる。
だからあなたは今の私の歳で死んでしまった。。。
次はあなたが生きる番よ。』
明日は『誠と華』に続きます。




