表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コメディ集

名探偵は伝説のオネェ〜ジェネリックたか子マカブルの事件簿〜

作者: 長埜 恵

「ヤダー! 何このおブスなご遺体!」


 ゴツい体にバブリーなレッドスーツを纏わせた彼女の名は、ジェネリックたか子マカブル。永遠の二十二歳である。


「んもぅ、だから事件現場ってイヤねぇ。せっかくのアルマーニが泣いちゃう!」

「だからあれほど香水つけて現場に来るなと言ったでしょう、源三郎さん」

「ちょっと鑑識ちゃん! 今アタシの本名ベイビーネーム呼ばなかった!?」


 さて、今回の事件の被害者は海水で溺れた水死体である。けれど死体が発見されたのは、とあるビル内のオフィス。当然現場近くに海は無い。


「流石のたか子さんもこれは難問でしょう」

「そうねぇ……」


 呟くと、たか子は自身の長い髪をかきあげる。そうして口に火のついていない煙草を咥えると、足を組んで空気椅子をした。


「出た……! ジェネリックたか子マカブルの推理ポーズ!」


 警察官の一人が眼鏡を直しながら言う。


「彼女はかつて歌舞伎町でバーを開き、数多の難事件を解決してきた! 逃げた猫の行方、浮気した夫の逃亡先……。あのポーズから逃れられたターゲットはいない! 見られるぞ、たか子の名推理が……!」


 たか子の目が開く。彼女はカツカツとヒールを鳴らし、ある男の前に立った。


「アナタが第一発見者の警備員、狭山千万太サンね。聞いた所だと、見回りに来て遺体を発見したとのことだけど」

「はい。いきなりオフィスに遺体が現れたので驚きました」

「監視カメラには、不審者もビルを出た者も映ってないわね」

「はい」

「これで繋がったわ。犯人は……!」


 たか子は、天井に人差し指を突きつけた。


「大きなクーラーボックスを持ち込んだマッスルよ!」

「マッスル!?」

「ご覧なさい、被害者は暴れた形跡があるけれど殆ど抵抗できていないわ。これはすごい力で押さえられたからよ。そしてクーラーボックスに入っていた海水で溺れさせられた」

「何故海水を……」

「後で死体を海に捨て、そこで溺死した事にさせたかったのでしょうね。けれどクーラーボックスに入った海水を捨てている間に、死体を見つけられてしまった」

「なるほど、すぐにビル内を探してきます!」

「フフ」


 かくして、犯人はすぐに捕まった。日頃から被害者に悪質なセクハラをされていた犯人の女性は、彼を殺す為ムキムキに鍛えていたという。

 全てを解決したたか子は、夕陽に向かって顎をさすり言った。


「今回も、カルマが生まれる前に解けたわね」


 彼女の名はジェネリックたか子マカブル。伝説のオネェ探偵である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] たった千文字で事件発生から解決まで、鮮やかなお手並み。 見事です! 笑わせてもらいました。 [一言] ジェネリックたか子マカブルという名前を思い付くネーミングセンスがすごいわー。
[良い点] カルマ……髭がカルマ……至極納得したと同時に普通に吹き出しました。 [気になる点] 少ない文章で設定を無理なく理解させ、確実に読者を吹き出させる手法と次から次へと新しい作品を生み出す執筆意…
[一言] 加害者はムキムキになったあともセクハラされてたのかが少し気になったのですが、筋肉は正義なのでオールオッケー!! 面白かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ