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オフサイド 9
須坂がトラに向き直り、
「そこでだ。キミの力が必要になる」
トラは真面目な顔で、
「お、おう…」
「妻は、親戚も友人もいるからまあ何とかなるだろう。だが、まだ中三のあかねは… 受け入れるのに時間がかかるだろう」
肩にもたれるあかねのいい匂いにキュンとしながら、トラは軽く頷きながら、
「かも、な」
「だからこそだ。なあ、トラくん」
須坂は更にトラに向かい直る。
「どうか、僕の代わりに…」
トラは須坂の目をしっかりと見据える。大人にしては、何と一途な瞳なのだろう。これまでトラを見下すか怯えた視線ばかりの大人達に、これ程誠実な眼を見た記憶が無い。あのケンタの目でさえ、ここまで心に染み入る瞳とは言えない。
死を覚悟した男の眼。
そして己はその死を受け入れ、愛する妻と娘に何とか受け入れさせようと必死な目。
これは、男と男の信頼の問題だ。決して揺らいではならない、命を賭けた男と男の約束である。
「わかった。どうすれば良い?」




