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オフサイドトラップ 6
トラが意外そうな顔を一美に向ける。あれー、このババア、こんなにやる気あったっけ?
「だから言ったろトラ。このせんせは本物だって。アタシらみたいなのにも、ちゃんと人間扱いしてくれる人だって」
「松本さん、何を言って…」
「まーまーまー。ハイ、よーく冷えてるよお」
ビールジョッキを受け取りながら一美は思いがけずの居心地の良さを感じてしまう。
トラの隣で微笑みを浮かべている健太と目が合い、頬が赤くなるのを感じる。
やっぱり今日の永野さんは素敵だ… どう見ても大企業の役員クラスにしか見えない。日焼けした精悍な顔がダークスーツによく似合っている。無精髭がないと若々しく見える。
うっとりと健太に見惚れる一美を、亜弓は寂しそうな笑顔で見つめている。
そんな亜弓に背を向けてミキは開店の準備に本腰を入れ始める。あかねは見て観ぬふりをしながら調理に没頭する。
トラは母親の恋敵の出現に苦笑いしながら、スマホに没頭する事にする。
そして。そんな周囲の状況に戸惑いつつ、健太は一人ビールのジョッキを傾けることしかできなかった。




