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パズルのピースはハマらない!  作者: 湯呑み茶碗
第零章 神と無茶振りと旅立ち
6/43

piece.6 実戦と思い

 やあ

 今朝家を出て、ママンからもらった指輪から地図を取り出し、

 とりあえず一番近い宿場町に向かっている、田中改めソーマです。


 ノープランで家を飛び出た割には順調な滑り出しだと思う。

 うん、またなんだすまない。人生ってのは思い通りに進まないことのほうが多いってことだな。


「何で追ってくるんですかね!? おいしそうですか俺は!?」

「「「バウバウバウバウバウバウ!!!」」」


 3匹の狼的な輩に追い回されてるなう。

 この世界にTwitterがあったら思わずツイートしてしまうぐらい突飛な状況である。

 じゃあ何でこんなことになっているのか、全力で走りながら回想してみよう。


*****回想開始*****


「いやーやっぱちゃんと行先とか決めとくべきだったわ」


 街道の端に腰を下ろし、空を見上げながらつぶやく俺は迷っていた。

 いや、街道を歩いていたから、迷ってはいないんだろうけどさ。この道を歩いた先に何があるかもわからないって論外だろうに。

 家を出ることは1年も前から決めていたのにこのざまである。俺の鍛錬バカ!!


「こんな時のための四次元ポ〇ットもとい、収納の指輪よな」


 ママンから頂いた指輪に意識を集中し、中身を確認していく。

 野外で使える椅子やら机やら、キャンプセットのようなものやら、寝袋まで入ってるぞおい。親父がくたばったら嫁にもらうレベルで気が利いてる。大好きママン!

 さて、現状を何か変えられるものはっと・・・お。地図が入ってら。


 指輪から地図を取り出し、広げて中を確認する。昔にお袋と親父に簡単に教えてもらった見方を思い出す。今見ても思うが・・・。


「どうみてもドーナツです。本当にありがとうございました」


 大陸は大きな円のような形をしており、中央部にぽっかりと穴が開いている。

 まんまオールド〇ァッションだなこりゃ。んで俺は今ドーナツの南西部の外側にいると・・・。


「しかしこの世界はどうなってんだ? 地球と同じで球体であれば、ドーナツの両端同士で行き来ができそうなもんだが」


 まさかファンタジーよろしく、地面を大きな生き物が支えてるとかないよな? 大気やらなにやら地球で定説されているあらゆる法則から外れることになるんだが。

 確認するすべも今はないし、とりあえず行先だけ確認しとくか・・・。

 地図によるとこのまま街道を進んでいくと、外側をぐるっと回るルートと内側に進むルートに分かれる道があるようだ。分かれ道のところには町・・・宿場町かなこの配置であれば。


「とりあえず道なりに進んでいくしかないか。 町に着いたら情報収集をして・・・」


 と相変わらずの独り言をつぶやいていると、腹の虫がなく。

 空を見上げるとお天道様がじっと俺を見下ろしているような位置にいた。

 世界が平面だったら、あの太陽擬きもどういう原理で動いてんだろうか、とどうでもよいことを考えながら、昼食をとるために街道を外れ森へ入る。


「流石に道のど真ん中で広げるわけにもいかんしな、あんま深くまで行かなければ問題ないだろ」


 どうやら俺が住んでいた家は相当なド田舎、というか秘境? はいいすぎとして、人通りが極端に少ない地域にあるようなので、人なんて通らないだろうとは思うが、念のためだ。

 指輪から机と椅子を取り出し、ついで缶詰を取り出す。


「この世界にも缶詰ってあるんだなぁ・・・」


 そんなことをつぶやきながら、プルタブを引き缶を開けると、嗅ぎなれた醤油と生姜のような香り。

 これは・・・大和煮? 使われている肉の正体がわからないが、馴染みのある匂いだ。俺は一緒に取り出したフォークを使って、謎肉を口に放り込む。


「む、むむむ!? これは・・・」


 うーまーいーぞー!

 なんかちょっと獣臭い気がするけど、生姜っぽい何かでいい感じににおい消しになってるし、あんま気にならない。

 問題の謎肉もやわっこくておいしい! 何の肉だろうこれ?


「この世界の食事事情発展してんのかなぁ、缶詰も地球のと遜色ないぐらいうまいぞ」


 ガツガツとかきこむ様にして謎肉の大和煮擬きを食べる俺。これ中毒作用とかないよね? 手が止まらないんだが。

 だがしかし、食べ進めるたびに獣臭さが増している気がする。不思議食材なのかなぁと考えながらふと顔を上げると机を挟んだ向こう側に狼さんがたくさん。


「狼?」


 俺に気づかれたことに気づくと狼は、低いうなり声をあげる。


「俺狼のことはよく知らないんだが、これって威嚇行動じゃないのけ?」


 いやーな予感が俺を襲う。見つめあうこと数舜。狼がこちらへ距離を詰めてくる。


「ですよねぇ! ああもう!」


 俺はまだ中身のある缶詰を狼の方向へ投げ、机と椅子、フォークを指輪へ収納すると、全力で街道へ出てダッシュ!

 缶詰に夢中になって追ってこないでほしいと、淡い祈りを・・・残念、祈りは届かなかったようだ。

 3匹だけだが、狼が俺を追ってくるのを後ろ目にチラッと見る。どう考えても人間が狼と徒競走をして勝てるはずがないように、徐々に距離を詰められつつある。


「何で追ってくるんですかね!? おいしそうですか俺は!?」

「「「バウバウバウバウバウバウ!!!」」」


*****回想終了*****


 回想が長い!!!

 こんなんなら飯食ってる最中に狼に襲撃されて逃げてます←今ここ! とかでいいじゃん!

 と自分自身の脳内でセルフ漫才を行っていると、背中に衝撃。


「グエッ!?」


 カエルが潰れたような声を出しながら、地面をだだ滑る。全力ダッシュで載った慣性のおかげでズサササアーと擬音が上がりそうなほど見事な滑りっぷり。


 背中を摩りながら立ち上がると、既に3匹の狼に取り囲まれていた。

 呪いなんて爆弾抱えてる状態で戦闘なんて出来れば避けたかったんだが⋯⋯。

 俺は指輪から盾と短槍を取り出し構える。


 現時点で一番気をつけるべきは、地面に倒されて袋叩きに合うこと。ならば!


「うおおおおおおおおっ!!」


 雄叫びをあげながら、1匹の狼へ走る。

 先程まで逃げるだけだった獲物が急に向かってきた事に、驚いたのか狼の動きが止まる。

 だが止まったのは一瞬のみで、直ぐに狼はこちらへ向けて飛びついて来る。


 飛びついてきた狼を盾を使い受け流し、そのまま前進し、振り返る。


 親父から防御に関する技術を学んで無ければここで終わりだったかもしれないな⋯⋯。


 囲いは突破した、また囲まれない様に下がりながらいなしていくしか無い。

 狼は唸り声をあげながらジリジリと距離を詰めて来る。詰められた分俺も後ろに下がり、距離を保つ。


「おいどうした犬っころ! ビビってんのか!?」


 このまま3匹と相対する状況を長引かせるのは得策では無いと判断し、挑発し1匹ずつ片付ける作戦に。

 果たして獣相手に人語での挑発は意味があるのだろうか⋯⋯っと、結果は直ぐに出た。


 先程盾で流した狼が飛び出してきたのだ。俺は一度盾を構え、狼がそのまま盾に飛びつこうとした瞬間、盾を指輪へ収納し、短槍を両手で狼に向けて突き出す。


 槍に吸い込まれる様に狼が串刺しになり、一度悲痛な叫びを上げたのち痙攣し、やがて動きを止めた。


 加害者となった俺は俺で、心臓は高鳴り、気分は良くなかった。

 26年間意識的に生き物を殺すなんて事は、不快害虫以外はなかったのだ。覚悟は決めていても、現実は違うと思い知った。


 残りの狼が向かって来るか否か迷う様に、こちらをじっと睨み付ける。


「お前らもこうなりたいなら、向かってこい!」


 俺は狼が刺さったままの槍を掲げ、叫ぶ。


 それを見た狼は我先へと先程邂逅した地点へ向けて走り去っていった。


「⋯⋯っはぁ! あーしんどかった⋯⋯」


 正直今日中は二度と戦闘はしたく無いと思いつつ、盾と槍、狼の死骸を指輪へ収納する。


「さっさと街向かお⋯⋯流石にあんな目にあって野宿は勘弁したいわ⋯⋯」


 戦いには勝ったのに何故か肩の重い俺は、トボトボと街道を歩き、宿場町へ向かうのであった。

哺乳類を殺したら俺なら吐くね

異世界に転生したからってその価値観は変わらんでしょ、知らんけど

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