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パズルのピースはハマらない!  作者: 湯呑み茶碗
第零章 神と無茶振りと旅立ち
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piece.5 異変と旅立ち

 やあ

 どうやら俺は剣士になったらしいんだ。

 うん? いや特別感はないけどベーシックで良いよね剣士。

 魔法使いとかじゃなくて良かったよ、いやマジで。

 いや俺の前世の経験とかそういうんじゃないから、そういう無粋な発言は控えてもらえないか。


「うーん⋯⋯職業は剣士になったみたいだ」

「ほぅ⋯⋯特筆するところはないが、良い職業だぞ剣士は」

「そうなの?⋯⋯まあ変化球が来るより全然良いけどさ」

「暗殺者とかが来なくて良かったねおにぃ」


 暗殺者か、それはそれで厨二心がくすぐられるな。いや待て、職業が暗殺者って物騒すぎて友達とか出来なさそうじゃね。うん、やっぱ剣士で良かった。


「剣士かぁ⋯⋯昔あなたのパーティ剣士の方いたわよね?」

「あーあの爺さんか、あの人力はない癖やたら技術が突出してたんだよな」

「なにそれかっくいいじゃん」

「老骨に力はどうとかで、自分の体ほどの大剣やらを捌いてたな、小手先だけで」


 やっべえ人もいるもんだな。


「それはそうと、せっかく剣士になったんだ、俺のお古の剣をやろう、装備してみろ」

「ありがとう父さん、お言葉に甘えさせてもらうよ」


 そう言って居間を離れ、少し経ったのち戻ってくる親父。手には鞘に入った剣が握られていた。


「その剣も懐かしいわねぇ」

「まあソーマが生まれたら冒険者も廃業して、俺の部屋にしまいっぱなしだったからなぁ」

「なんかすごいシンプルな剣だね」

「ああ、だけど俺はこれぐらいの方が好きだな」


 そう言いつつ俺は剣をじっと見る。これを装備する事で剣士となった恩恵が受けられるのか?


「フッ、興味津々だなソーマ。お前も男の子って事か」

「否定はできないな。正直ワクワクしているところだよ」


 ほら、と親父が剣を手渡してくれる。鞘の部分を握り受け取ると、剣の重さがズッシリと腕にかかる。

 そりゃそうだろって話なんだが、やっぱり模造刀とかとは違うな。あっちはあっちで重みはあったけど段違いだ。


「ここじゃちと狭いな、ソーマ庭に出て振ってみたらどうだ?」

「ああ、そうさせてもらうよ」


 親父からの提案を受け入れ、庭へ出る。

 左手に握った剣の柄を右手で握り引き抜こうとした瞬間。


「ッツゥ!?」


 バチリと全身に電撃を流されたかのような痛みを覚え、剣を手放してしまう。


「「ソーマ!?」」「おにぃ!?」


 端で見守ってくれていた家族が慌てて駆け寄ってくる。

 なんだ今の痛みは? 少し冷静になった俺は脳内に浮かぶ新たな情報に愕然とする事になる。


───スキルエラー

───“剣装備不可能”のスキルに抵触するため

───強制的に装備品を外すよう衝撃を与えました


 ⋯⋯剣装備不可能?

 慌てて俺は職業関連の情報を思い浮かべる。


 職業:剣士 

 スキル:剣士-基本的な剣の扱い方を理解する

 スキル:剣装備不可能-剣の類の装備品の装備不可



 ⋯⋯⋯⋯は?


*****場面遷移*****


───拝啓、転生神様


 お元気でしょうか。

 僕は今日10歳になり職業神様より、

 剣士の職を授かりました。

 ワクワクしながら剣を抜こうとしたら、

 前世では味わうことのない類の痛みと共に、

 驚きの情報が頭に浮かんでまいりました。

 さて、少々早いですが今回はこの辺で

 筆を置かせていただこうと思います。

 次お会いする時まで、

 是非とも五体満足でいられる事を願っております。

 追伸

 お前の多分はもう二度と信じない。

 そのキレイな面を歪ませてやるから、

 楽しみにしておけ。




 あまりの衝撃に、呪詛を込めた手紙を脳内で認めてしまった⋯⋯。届け!僕の純粋なこの想い!遥か彼方の転生神様へ届けっ!


「おいソーマ大丈夫か!?」

「⋯⋯ああ、父さん問題ないよ」

「どうしたのおにぃ?」

「んーいや、どうやら俺は剣が装備できないみたいだ」


 俺がそういうと家族は皆目を見開いて、驚愕の表情を浮かべる。

 まあそうなるわな。俺も前情報が無けりゃ、同じような顔をしていたと思う。どうやら親父はすぐに俺の状態を把握したようで、ボソリと呟く。


「呪い憑きか⋯⋯」

「呪い憑き?」

「ああ、お前の身に起きている現象は正しくそれだ。自身の職の特色を様々な形で奪われる。もっともその現象自体起こり始めたのは10数年ほど前からと聞いているが⋯⋯」


 10数年⋯⋯俺が転生する前か。時期は大体一致するか? とはいえ、実際はもっと前かもしれないし、判断材料としては少し弱いな。


「お前の⋯⋯呪いとしようか、呪いはどの程度なんだ?」

「剣の類の装備品の装備が不可能ってなってるな」

「それはどういう形でだ?」

「スキルとして所持してるみたいだ」

「ふむ⋯⋯とはいえどうしたら良いかなど俺にはわからないんだが⋯⋯すまんな⋯⋯」


 親父が申し訳なさそうな顔をし、俺に頭を下げてくる。


「いや、父さんは悪くないだろ。何が悪いかわからないから、モヤモヤする気持ちをどこにぶつけて良いかわからないけどさ」

「俺はこんなことになっている状態を神々が放置していることに怒りを隠せん⋯⋯!」


 神は頑張ってんだがなぁ⋯⋯とは口に出せないので、悔しそうに歯を食いしばり怒りを露わにする親父を見つめることしかできない。


「ソーマ⋯⋯」「おにぃ⋯⋯」


 ソーニャとお袋も先ほどの驚愕の表情から一転、心配そうに俺を見つめている。

 空気が重い⋯⋯いや、まあそりゃそうだよな。家族のめでたい門出になる筈が、こんな事になってんだから。


「みんな、俺やっぱり今日家を出るよ」

「何言ってんだ! そんな状態で世界を回るって言うのか!?」

「そうだよおにぃ!」

「何か別の手立てがあるんじゃないかい? それを見つけてからでも⋯⋯」


 やっぱり止めてくれるよな。でも俺は⋯⋯。


「いや、大丈夫。いくつか戦う方法は考えてるし、何も戦うだけが戦闘系職業のやれる事じゃない。なるべくそういうのとは距離を開けて、危険を遠ざけて回るよ」

「とは言ってもだなぁ⋯⋯」

「それに俺には父さんから受け継いだ技術があるし、何より俺自身のことだ、解決方法があるならそれを知りたい。だから⋯⋯」


 俺には異変解決を行うという使命⋯⋯と言うと重いが、やるべき事がある。何より自身が呪い憑きになったのは、原因究明へのアプローチ手段を一つ掴めたとポジティブに考えよう。


「どうしてもか?」

「男が決めた事だ。ここで曲げたら家でグータラするだけの駄目人間になっちまうよ」

「あんたの事だからそんな事にはならないと思うがねぇ」

「おにぃに限ってそれは無いでしょ」

「無いな」


 何だこの謎の信頼感。いや嬉しいけどね?


「世界を巡って、この異変を解決する。出来なきゃ潔く帰ってくるよ。少なくとも一周はしてくる予定だけどさ」

「そうか⋯⋯」


 俺の言葉を受け神妙な面持ちで、一度頷き家の中に戻る親父。と思ったら手に行くつかの装備品を持って戻ってきた。


「サイズが合わないから防具はくれてやれないが、俺が使っていた武器をいくつかやろう」

「幾つかって⋯⋯そういや父さんの職業って聞いた事なかったな、一体何者なんだ?」

「聞いて驚け? 練装士だよ」


 いやそれなんてハセ○だよ。めっちゃかっけえじゃん! え?そんな職あんの? うっわそれにしとけばよかった! 今からでも良いから変えてくれねえかな?⋯⋯ってそういやバグってる職持ちには神の力すら通じないんだっけか。

 極めて冷静に、いや、冷静を装い言葉を発する。


「へ、へぇ〜、中々カッコいいじゃん?」

「いやそこは素直に言っていいんだぞ? ん? どうだ? めっちゃカッコいいだろ? どうなんだ? ん?」

「おにぃカッコ悪い」

「アナタも息子相手に何やってんだか」


 我が家の男はみんな頭が上がらないようですわ。

 ま、それは置いといて。


「やっぱり父さんでもその結論に至る?」

「パッと思いつく対処法とすればコレだな」


 かのアントワネット嬢も言っていた。

 剣が装備できないなら、他で戦えばいいじゃ無い。


「剣士である以上、ある一定の筋力補助などはある筈だ。剣に対してのサポートが主になるから、どうしてもキツイとは思うが」

「いや、ありがたいし、俺としても他の武器を使うしか無いとは思ってたよ」


 槍や鎌、武器とはいえないが盾や手甲。転生神から聞いた話であれば、刀も扱える筈だ。


「うん。ありがとう父さん。とりあえず貰えるものは全て貰ってくよ⋯⋯と言っても俺の身体じゃ全ては無理か」

「そういうと思ってな⋯⋯母さん!」

「はいよ。私は反対なんだけどねぇ⋯⋯」


 そう言いながらもお袋が俺に指輪を一つ手渡してくれる。


「これは?」

「容量に限りはあるけど、様々なものを収納できる指輪さ」


 おーラノベとかでよくある便利アイテムだ! マズィックアイテムだ!


「おぉ! ありがとう母さん!」

「ここにある装備品全てと、いくつか日常品も入れておいたから、旅の道中で使いなさい」


 おぉうママン⋯⋯。ありがたや、ありがたや〜。

 そう思って指輪を見つめていると、ソーニャが近付いて来る。


「やっぱ反対か?」

「うん。元々賛成ではなかったし、それにつけてこんな事まで起きたらね⋯⋯」


 でも、と言葉を繋ぎソーニャは告げる。


「おにぃがやりたい事、邪魔したく無いし、応援したい。それが私の本心だよ!」


 そう言って俺の頬にキスをするマイスウィートシスター。


「待っててねおにぃ! 私もあと1年したら直ぐに合流するから! おにぃの力になれるように私頑張るから!」


 少し顔を赤らめながらも満面の笑みでそういうソーニャ。

 やばいまじで可愛い。結婚したい。いやしよう、この世界に近親での結婚を妨げる法などない筈だ。⋯⋯っとヤバイ、思考が暴走してた。俺はソーニャに微笑み告げる。


「ああ、期待して待ってる」


 俺がそう言うとさらに嬉しそうにしながら笑みを深める。


「おいソーマ、早く行け。じゃ無いとお前を叩き切ってしまいそうだ」

「アンタは兄妹の触れ合いになに嫉妬してんだい! 息子の門出なんだから笑って送り出してやんな!」


 親父の頭を引っ叩きながら、お袋が笑いながら俺へ告げる。


「ソーマ! 頑張ってきなさい! 嫌になったらいつでも帰っておいでね!」

「⋯⋯ああ! ありがとう母さん!」


 そんなやり取りを見て親父が頭をボリボリと掻きながら近寄って来る。


「ソーマよう」

「何だよ父さん」

「お前、俺のこと親父って呼んだことあったよな」

「あ、ああ。寝ぼけてたんじゃ無いかな?」

「隠すなよ。お前がどんなんでも、お前は俺たちの息子だ。だから⋯⋯必ずまた元気な面見せろよ」


 もしかして親父気付いてる?⋯⋯んなわけねえか。だけど⋯⋯最後ぐらいはいいよな。


「ありがとよ、親父。お袋も。ソーニャを頼むぜ」

「⋯⋯! 当たり前だ、誰に言ってんだドラ息子」

「行ってきな、グレ男」

「頑張ってねおにぃ!」


 俺は親父と一度拳を合わせ、家に背を向ける。

 この庭から出たら、異変を解決するまでは帰ってこない予定だ。


 じゃあな第二の家よ。全部終わってスッキリしたらまた帰って来るぜ。


 そうして田中ことソーマの、長く長い旅が始まったのであった。

やっとこの小説っぽい要素が出た


転生神「ビクッ!?」

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