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パズルのピースはハマらない!  作者: 湯呑み茶碗
第二章の様なもの
40/43

piece.39 人である事と証明

 やあ

 ソーマの様な田中⋯⋯だとなんか違う気が

 ラノベとかで最初に出たキャラって段々空気になっていく風潮あるよね

 でもアレって実は裏で頑張ったりしてるんだと思うのよ

 ⋯⋯え? いやいや俺が空気とかそんなわk(ry


********************


「じゃあこの2人がここで死んでも良いの?」

「良くない! 良いわけ⋯⋯ないです」


 アルバ様に言われるまま、正直に心の内を吐露する。

 2人が死んでしまうのは嫌だ。でも私には何もできない。悔しい。


「良くないわよね。でも2人が死んじゃえば多分貴方と王は助かるんじゃない?」

「⋯⋯え?」


 それはどういう意味だろうか。


「詳しい事は後にして、多分この状況は2人が原因。貴女は無関係のはず」

「おいアルバ」

「坊やは少し黙っていて。後で説明するから」


 何やらソーマ様とアルバ様が話をしていますが、私が無関係と聞き私は⋯⋯喜び⋯⋯?

 嘘、嘘嘘ウソうそ嘘だ! 2人を犠牲にして、私と王だけが助かる⋯⋯? 機人族には実質被害無く?

 駄目、駄目駄目ダメだめ。考えてはいけない、いけない。


「アルフちゃん、今ちょっと喜んだでしょう?」

「⋯⋯っ!! そん、な事は⋯⋯」


 私は本心を言い当てられ、顔を伏せる。

 ソーマ様の顔が見られない。2人を犠牲にして生き残れる道があるかも知れない事に喜ぶような醜い私を。


「良いのよアルフちゃん、それで」

「なに、が⋯⋯?」

「人間ってね、生きるか死ぬか、その二択を迫られた時に生きるを取らない人ってそうそういないと思うの」

「でも! でモわたシはおふタリを⋯⋯」

「うん、人として生きるってのはね、そういう感情の天秤に左右されながら、苦しみながら生きていくの」

「そ、ンナ⋯⋯そんなノって、苦しいだけじゃないでスか⋯⋯!」


 私は人になりたかった。人でありたい、人として扱われたい。そしてそれは私だけでは無く、機人族みんなに対してもそう思った。だからいろんな文献を漁った。漁って漁って⋯⋯でも、神に認められた機人族は過去存在しなかった。

 それでも、それでもと手を伸ばして、そんな矢先にお二人が現れた。お二人と話して旅をするのはとても楽しかった。人になれたと思った。

 でもそれはただの思い違いで、人間ごっこをしていただけなのだろうか。人間であることがそれほどまでに苦しいのであれば、私は人間になることを望めるのだろうか。


「そうね⋯⋯ねえ坊や。人って辛い?」

「⋯⋯ああ、辛いな。辛くて苦しいことばかりだよ。今だってみんなを守りきれなくて悔しい思いでいっぱいだ」


 やはり。私はそんな辛い思いをし続けるくらいなら⋯⋯。


「ふーん、で?」

「ふーんて⋯⋯。それでも、アルフやチウと旅したり飯食ったり、ただ話をするだけでも楽しかった。綺麗事かもしれないけど、辛いことや苦しいことがあれば、その分楽しいことや嬉しいことがきっとある。そういうもんだと思うよ」


 ⋯⋯理解不能、です。

 私も楽しかった。でも今は辛い。いろんな感情が湧き上がって、オーバーフローしそうです。

 そんな私にアルバ様は問いかけます。


「どう? 人間嫌になった?」


 ソーマ様とチウ様と過ごせた日々の喜び。

 肝心な時に力になれない自分への怒り。

 自分の中の卑しい気持ちに気づいてしまった哀しみ。

 そして⋯⋯。


 今になってアルバ様の意図がわかったような気がします。

 きっとこの状況をひっくり返すには、私しか何かをできる可能性がないのでしょう。

 そして、その手段は私が職業を得ること。詰まるところ、私が人間である証明をする必要がある。

 その為に人とは、という事をお二人は私へ教えてくれたのです、良い事から悪い事まで。


 私は人間の良いところしか見ていなかったのかもしれない。

 人間は決して美しいだけの生き物じゃない。卑しく醜い心だって持っており、当然欲望だってあるのだと。

 そして、私も⋯⋯。


「解。アルバ様、人間は私の憧れです。嫌になどなるはずがありません。そしてソーマ様、私も楽しかったです。だから、もっと楽しみたいです」

「おう、俺ももっとお前と色んなことを話したり、お前⋯⋯3人でもっと一緒にいたいよ」

「⋯⋯へたれ」

「うるせ」


「了! 私ももっともっと! 自分にないもの、見たことのないもの、知らないこと全部、全部欲しい! ⋯⋯というのは欲張りでしょうか?」


 私がそう問うと、ソーマ様とアルバ様は微笑んで。


「「人間ってのは欲深い生き物だぜ(なのよ)」」

「⋯⋯了。では私は全てを求めます。人である事は勿論、世界を巡り、感情のままに振る舞う権利を! 神々よ! もう私を人ではない、魂なき存在であるなど言わせません!」


 そう私が天へ吠えた瞬間、私を眩い光が包みました。


*****場面遷移*****


 つい眩しくて、目を閉じてしまい、恐る恐る目を開けると、目の前には老人が。


「⋯⋯はぁ。坊主もあの女も余計な事をしおって。仕事が増えるじゃろうが」

「疑。その割には嬉しそうですね」

「ナハハ、バレたかのう。そりゃこれまで人として扱われなかった種族の人間第一号じゃ、嬉しくないはずがないじゃろ?」


 唖然とします。私は神々が機人族を認めていないと考えておりました。


「問。貴方が神でしょうか」

「うーむ⋯⋯イエスでありノー、じゃのお。儂は職業を司る神じゃ。お主に職業を授けるのが仕事じゃの」

「問。続けて失礼します。私は神が機人族を認めていなかったと考えております」

「それはノーじゃの。儂らも基本的にはお役所仕事での。決められたリスト通りに職を割り振る。機人族はそのリストに載っていないんじゃ、例年な」

「疑。それは何故⋯⋯」

「それはわからん。すまんがな。じゃが儂も幾度となく機人族をここに呼ぼうとしたんじゃ。上から渡せずともここでなら⋯⋯とな。じゃが阻まれた」


 何に、と声を出そうとしたが、私の身体を再度光が包む。


「む、どうやらその何かはお主や機人族へ職を与えられる事を極端に拒んでいるようじゃ。強制的に地上へ戻されそうになっておる⋯⋯」

「叫! 私はまだ聞きたいことが!」

「すまぬ。時間がない。お主に最も合う職業は⋯⋯これじゃな。受け取れ! そして坊主を、仲間を助けてやるのじゃ!」

「⋯⋯了! 感謝です神よ! いずれまた」

「その時は坊主も一緒に来れると良いのう」


 そう老人⋯⋯神は言い、私の視界は眩い光に埋め尽くされた。


*****視点変更*****


 アルフが光に包まれ、直ぐに光が晴れると、変わらずアルフはそこにいた。


「アルフ! お前⋯⋯」

「謝罪。ソーマ様、取り敢えずその話は後で。今は⋯⋯」


 この状況を好転させます。と言い切ったアルフは地面へ手を当て、呟く。


「錬成」


 アルフの声に呼応するように、鎧とチウが金属の床に持ち上げられ、こちらへ投擲される。


「懇願。アルバ様、チウ様を守る力の解除を。ソーマ様、チウ様を受け止めてください。父上は⋯⋯そのまま地面へ落とすので問題ありません」

「はいはい」「おうよ!」


 若干鎧に対する扱いが悪いような⋯⋯って父上?

 アルフの変化は気になるが、それは後だな。

 投擲の際に激しい回転を加えられたのか、ギュルギュルと回りながら飛んでくる鎧。

 相反してフワッと飛んできたチウを抱き抱えると、ほぼ同時に鎧が地面へ叩きつけられる。


「ぐほっ!?」


 チウと鎧が合流した瞬間、金属の床が競り上がり、俺たちを包むように箱型となる。


「⋯⋯安堵。なんとか情勢を整える時間は稼げましたね」

「す、すげえアルフ! お前その力は」

「ほら坊や。興奮するのは後、チウちゃんの治療が先よ」

「っと、お前のいう通りだ」


 俺は抱き抱えたチウの容体を確認するため、内心で謝りながらチウの服をはだける。


「うわ、この男容赦なしかしら」

「うっせ、緊急事態だ」

「最低ね、そうやって色んな事情につけ込んで、色んな情事にしけ込むんでしょ」

「やめてくれない!? そんでもって上手くないからね!?」


 アルバの口撃に耐えながら、チウの身体を確認していくと、どうやら流血はしていないようだった。

 また防具に当たって難を逃れた⋯⋯っ!? 胸が⋯⋯抉れてる⋯⋯!


「ち、チウのやっと育った胸が⋯⋯」


 俺はこいつが起きた時、どう声をかければ⋯⋯。


「アホか、よく見なさい」

「え? ⋯⋯ってなんだよパッドかよ! あー⋯⋯心配して損した」

「いや、胸が吹き飛んでたら普通血だらけだから」


 そりゃそうだな。

 取り敢えず、撃たれたショックで気絶しているだけ⋯⋯となれば、次はアルバか。


「おいアルバ、お前のその身体」

「チウちゃんの次は私の身体!? どれだけ節操無しなのよ!!」

「あーはいはい元気だな、じゃあ次はアルフ」


 両腕で自身を抱き締めるようにするアルバを放置して、未だ地面へ手を当てたまま動かぬアルフへ声をかける。


「アルフ? もう手を離しても良いんじゃないか?」

「⋯⋯拒否。今私が手を離すと、全員漏れなく蜂の巣です」

「⋯⋯へ?」

「⋯⋯説明。私はどうやら錬成士という職を授かったようなのですが⋯⋯」

「おおー錬成士! この状況は金属の床を錬成して作り出したんだな!」

「肯定。もとにした素材より硬く、銃弾の雨に耐えるようにしておりますが⋯⋯」

「が?」

「⋯⋯驚愕。錬成士とは手を離したら錬成が解けてもとに戻ってしまうのですね、ハッハッハ」

「⋯⋯ハッハッハ。アルバ君?」


 冷や汗をダラダラと流しているアルバを問い詰めたところ。

 通常の錬成士はそんな制限はなく、手に触れているものを自由に錬成することが出来る職業だそうで。

 何故手を離したらもとに戻る、なんて制限がついているのかというと。


「知らないわよ! 坊や達が近くにいたから、干渉でもしたんじゃないかしら!?」


 ま、めでたくアルフも呪い憑き職業持ちとなりましたとさ。

 めでたくねえよ! コンチクショウ!!

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[一言] 略称は「パズらない」でいいのでは?
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