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パズルのピースはハマらない!  作者: 湯呑み茶碗
第零章 神と無茶振りと旅立ち
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piece.4 田中と職

 やあ

 俺は田中改めソーマ。

 実は今は10歳になる前の晩だ。

 え? 時間が飛びすぎだって?

 いやお前、家族の団欒を長々と綴ってどうすんだって話よ。

 そりゃいっぱいあったよ? ソーニャがいきなりよそよそしくなって「“おにぃ”と私の洗濯物は別で洗って。“お父さん”?論外でしょ」とかね。俺とパパンは2人で泣きながら走り回ったよ。

 その癖俺の誕生日が近づくに増して、朝ソーニャが俺の布団にいる頻度が増したり。何でいるの?って聞くとうるさいしか言ってくれないし。反抗期?


 そんな中俺の新しい妹が増えたり、まあ色々あったよ、うん。


 まあそんなことはいいとして、明日でいよいよ10歳。俺の旅が始まるんだ。計36歳の一人立ちか、そういうとなんかヒキニートは社会進出するみたいに聞こえるな、やめよ。


 などと思考をぐちゃぐちゃにしつつ、布団の中で眠れない夜を過ごしていると、ドアの開く音。

 誰だかは何となくわかるので、少し布団に隙間を作って入り易くしてやる。

 俺がスペースを空けると共に、潜り込んでくる何者か。


「⋯⋯ねえおにぃ」

「ぐーすかぴー」

「⋯⋯やっぱりおにぃが出てくなんていやだよ」

「⋯⋯」

「私もついて行きたいよ」

「⋯⋯」

「ねえ⋯⋯やっぱり私も」

「ダメだ」

「⋯⋯どうして?」

「お前はまだ職が無いし、何より親元を離れる必要なんてないんだ」

「それはおにぃだって⋯⋯」

「俺は⋯⋯」


 この家の異物だから。という言葉を飲み込んだ。言ったところで理解されないし、より不安にするだけだ。それにコイツにとっては唯一無二の兄だし、そんな事は口が裂けても言いたくない。


「俺は?」

「俺は、世界を見たいんだよ。俺の知らないことを知りたいし、やらなきゃいけない事もあるんだ」

「それは家じゃ、出来ないの?」

「ああ、出来ない」

「そっかぁ⋯⋯」


 そう言うとソーニャは俺の背中に顔を引っ付け小さく震えた。


「ソーニャ」

「何も言わないで」

「いや、そんなに震えてる妹に何も言えなきゃ兄じゃねえよ」

「おにぃ⋯⋯」

「ソーニャ⋯⋯漏らす前にちゃんとトイレいk「ばっっっっっっっかじゃないの!?」」


 思い切り背中を蹴られ、布団から追い出された。

 ふっ、よくぞここまで育った、基礎トレの賜物だな!⋯⋯すげぇ痛い。


「いってぇな。おいソーニャ」

「⋯⋯」

「⋯⋯はぁ。お前が行かないなら俺が代わりに行ってくるわ。戻ってくるまでに自分の部屋に戻れな」

「⋯⋯じゃん」


 俺は最後の妹の言葉を聞こえないフリして部屋から出てトイレへ向かった。


 おにぃがいなければ意味ないじゃん。ねぇ⋯⋯どう言う意図かは考えないでおこう。

 トイレへ向かいつつ、温もりが残る背中を触ると、少し湿っていた。


*****場面遷移*****


 明けて、朝。


 今に集まっていた俺たち家族だが、不意に俺の身体を光の粒子が包み始める。


「うおっ! なんだこれ!?」

「それが職業授与の光ね、懐かしいわぁ」

「一体どんな職を授かるんかねぇ」

「⋯⋯キレイ」


 職業授与の光っておま、正式名称それなのかよ。もっといい感じの名前あっただろって。

 そんなラノベを読むような感覚でツッコミを入れているとさらに輝きが増し、辺りが見えなくなるほど輝く。

 光が落ち着いたのち、目の前には老人がいた。


「お主があやつが異世界から連れて参った青年か」

「あん? 青年って⋯⋯うお、本当だ転生前に戻ってら」


 俺の姿は転生前のリーマン、田中に戻っていた。


「今ワシと話しているお主は、魂のみの存在だからの、そう言う見た目に落ち着いたんじゃろ」

「なるほどなぁ」


 仕組みとかはさっぱりだが、この際そこはどうでもいい。


「それで? 誰もがアンタにこうしてあって話すわけじゃないんだろ?」

「うむうむ、お主以外は基本的に、表にまとめた情報通りにパーッと職業を与えて終わりじゃ」

「それで俺を呼んだってことは、もしかして好きな職業を選ばしてもらえるのか?」

「うーむ⋯⋯出来ないことはないが⋯⋯お主の素養と未来を見据えた授与だからのぅ。お主が本当に望むのであれば、やらん事もないぞ」


 その際は自身の素養と合致しなくても文句言うでないぞ、と言葉をつけ加える老人。いや、ここにこうしているってことは、コイツが職業神ってやつかね。


「然り然り」


 カッカッカと笑う職業神。アンタも思考盗聴すんのかよ、プライバシー講習受けさせてやりてえわお前ら。


「前だったら迷わず侍にしろって言っていたところだが⋯⋯」

「だが?」

「アンタの決めた職でいいよ、というかそれが今後ベスト、とは言わずともいい方向に進むんだろ?」

「ま、そうじゃな! まあ異変を解決したのちにご褒美として職業変更ぐらいはしてやっても良いぞ?」

「そりゃありがたいこって。そんじゃ、ま、チャチャっと頼むわ」


 我ながら何で侍にしてもらわなかったのかは謎だ。この世界を少なくとも1年は感じた影響だろうか。それとも⋯⋯。


───身を滅ぼすぞ


 ま、カッコいいってだけだったし、今から職業選択を悩むのもごめんだしな!


「そいじゃ、授与するぞよ〜」

「おう」


 再び俺を光の粒子が包む。

 果たしてこれは必要なことなのだろうか。


「演出演出〜」


 いらねえなら余計なことすんなや。


「頼んだぞ田中、いやソーマよ。この世界の命運はお主にかかっている⋯⋯のかも知れぬ」


 締まらねえじーさんだなおい。

 俺は職業神に対しサムズアップし、その時を待つ。


 徐々に輝きを増していく光に、先ほどと同様に周囲が全く見えなくなる。

 真っ白な視界に一筋、黒い光が混ざる。その瞬間何か声が聞こえた気がした。


 真っ白な視界が開ける。


「おにぃ?」

「ソーマ?」

「無事職業授与は終わったみてえだな?」


 家族の声が聞こえる。どうやら魂が飛んでいっただけで、俺自身はずっとここにいたようだな。

 そして脳裏に刻まれた俺に関する新しい情報。


 どうやら俺は職業“剣士”になったようだ。

背中が濡れていたのは、ソーニャの尿ではないのであしからず

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