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パズルのピースはハマらない!  作者: 湯呑み茶碗
第二章の様なもの
31/43

piece.30 恐怖心と脳筋

 こんにちは!

 絶壁ヒロインのチウです!

 え? いやー前回は絶壁なこの胸に助けられましたからね! もう感謝しかないですよ!

 ⋯⋯大きい胸が欲しい


********************


 俺が意識を取り戻してどれくらいそうしていただろうか。チウはまだ泣いている、俺はというと既に立ち上がり、黒兎馬の顔を撫で回していた。


「黒兎馬ありがとな、怖い思いさせただろうに、残ってくれていて良かったよ」


 当たり前だというように吠え、頭をなすりつけてくる黒兎馬。

 同じ様にチウにも接してあげたいけど、何を言えばいいのかわからない。

 大丈夫、取り戻す? 守れなくてごめん? 何を言っても空虚で、意味の篭ってない言葉になる。

 第一アルフを守ることも、立ち向かえもしなかった俺に何が言えるか。言えたものか。


「黒兎馬⋯⋯俺は⋯⋯間違ってたのかな」


 呪い憑きなんて物にはなっちまったけど、それを補うスキルを手に入れて、チウという頼もしい仲間を手に入れて。なんでも出来る気になって。人の事情に中途半端に手を出して。あげく最悪の結末になって。


「アルフを助けなければ⋯⋯」


 アイツはまだ別の土地で生きれたのかな。

 そう言葉にしようとした時、後ろから微かに声がかかる。


「間違ってなんて、ないです」

「え?」


 言われて振り返ると、そこには立ち上がり涙を拭うチウ。


「確かに私たちが手を出さなければ、という仮定はあります。でも、少なくともアルフさんは楽しそうでした」


 チウに言われ最後に見た涙を流しながらも、微笑みながらありがとうと言った、アルフの顔を思い出す。


「嬉しそうでした⋯⋯! だから、間違っていたなんて言わないでください!」


 チウの言いたいことはわかる、でも、でもさ。


「でも⋯⋯俺たちより強い冒険者だったら」

「っ」

「俺たちに関わらずに、人族の領地を渡り歩いていたら。アイツはまだ生きて」

「生きて、生きています! 今だって!」


 チウは何かを求めるように俺を見つめる。

 きっと俺がアルフを助けに行くことを宣言するのを待っている。


「⋯⋯ごめん。怖いんだよ、機人族の武器を見て、俺が死ぬなら⋯⋯いや、俺が死ぬのも怖い。それ以上にチウが死ぬ、もう失うのは嫌なんだよ⋯⋯!」


 俺の絞り出した言葉を聞いて、チウは顔を歪める。嫌悪とか軽蔑ではなく、純粋に苦しそうな、見ていられないものを目の当たりにしたような顔。


「ごめん。情けなくて⋯⋯。軽蔑したなら、黒兎馬を連れて俺から離れてくれて構わない」


 俺はそう言い顔を下へ向ける。見せていられなかった、自分の情けない顔を。

 そうして目も閉じてチウの言葉を待つ。

 チウは、俺の頭を抱きしめるようにして、抱き寄せこう言う。


「私は死にませんよ。ソーマ君だって、死なせません。でも、それでも怖いなら⋯⋯ソーマ君は黒兎馬に乗って、人族の王都まで戻ってください」

「⋯⋯え?」

「私は行きます。アルフさんを、人に憧れる誰よりも人らしい人を助けに」

「だ、ダメだ! 殺されるぞ!」

「殺されません」

「お前はわかってないんだ! アイツらの持つ武器の恐ろしさを!」

「先程は油断しただけです。次からは避けられます」

「バカか! 人が避けられるような速度じゃねえんだよ!」


 そう言い何としてもチウを留めようとする俺に、チウは優しい顔を向け、微笑みながら言う。


「忘れましたか? 私を筋力バカの超魔法使いにしたのは貴方なんですよ?」

「⋯⋯」


 何を言っても無駄だと思った。チウは決めてしまっている。助けに行くと。


「⋯⋯自分を責めないでください」


 俺はもう何も言えず、チウの服を握りしめることしか出来ない。

 このままいかせたら、チウは死ぬかもしれない。でも俺は動けもしない。自分より大きな狼だって、なんだって怖いけど立ち向かえた。だけど今回は違う、立ち向かうことすら出来ず、土俵に立つ前に射殺されるかもしれない。

 鍛えた程度じゃ、銃弾なんて避けられるわけがない。


「少しの間お別れですね⋯⋯。大丈夫です! 私がアルフさんを助けて、直ぐに帰ってきますよ!」


 そう言って俺の手をほどき離れる、離れていってしまう。

 チウは黒兎馬の頭を撫でながら。


「黒兎馬、ソーマ君をよろしくお願いします。今はちょっと疲れてるだけで、きっといつものソーマ君に戻りますから!」


 そう言って眩しい笑顔を浮かべるチウ。

 無理だよ。俺にはできない。


「では2人とも⋯⋯はちょっと変ですかね。何はともあれ、行ってきます!」


 そうしてチウは走り去っていった。人族領とは逆方向の、機人族の王都へ向けて。


*****視点変更*****


 私は身体強化をかけ直し続け、走る。

 どれぐらい掛かるかわからないけど、きっとこのまま走っていれば、機人族の王都まで行けるはず。

 道案内のアルフさんがいないことで、道のりは若干不安だけど、街に近づけば建物やら何やらが見えるはず。


「ソーマ君⋯⋯」


 私は小さくて強い、恩人である彼の事を思い浮かべる。

 どんなに強くても、いろんな事を知っていても彼はまだ10歳なのだ。

 自分の目の前で仲間が倒れ、挙げ句の果てに何も出来ないまま連れ去られる。トラウマものだろう。

 私はそんな時、痛みに悶え何も出来なかった。彼が非常な選択を迫られている時、支えにもなれなかった。足枷になってしまった。

 だから、今度は私が助けるんだ。アルフさんと、彼の心を。

 ほら、大丈夫だったじゃないですか。ってアルフさんと一緒にソーマ君にいってあげよう。きっと苦笑いしながら、敵わねえな、とか言ってくれるはずだ。

 だから私は!


「うおおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉ! やるぞぉおおぉお!」


 叫びながら王都を目指す。自分を鼓舞するように。


*****場面遷移*****


 走り続けて小一時間。

 ようやく見えてきた建物は大きな壁と門。


「あちゃー、あれはあの門通らないと中に入れない感じですかね」


 ど、どうしよう。観光です、で通るかな? いや無理があるよね。じゃあ北東の⋯⋯獣人領を目指している旅人です? 荷物は? あーダメだ、通れる気がしない。


「か、壁を殴って壊す⋯⋯」


 いやいやいやいや、即犯罪者だよね。あれ? と言うか私⋯⋯鋼杖! ソーマ君の指輪にしまったままじゃない!? ど、どうしよう、魔法は問題ないけど武器がないのは不安で仕方ないよ!


「あわばばばば、どどど、どうしよう!?」


 勢いで飛び出してきた挙句に色々問題を思い出し、頭を抱えたい気持ちを抑え、私は機人族の居る関所へ向かい走る。

 武力じゃダメだ、頭を使って⋯⋯頭突き? じゃなくて!!


「呼。止まりなさい!」


 機人族の守衛さん? からの呼びかけに応じ、ズササササーと急ブレーキをかけ、止まる私。


「問。人族が何用か。見たところ商人ではなさそうだが⋯⋯」

「わ、私は⋯⋯」


 考えろ、考えろ⋯⋯。旅人! そう! ソーマ君が言ってたじゃあないですか!


「たび「悩。旅人であった場合は、残念ながらこの街には入れることが出来ないんだが」人なわけないじゃないですかー! やだなーもう!」


 旅人NG!! 他は!? あああああ、何も浮かばないぃ!!

 こういう時は時間稼ぎ! 何か会話が続きそうな話題⋯⋯話題⋯⋯!


「ち、ちなみに、旅人だと何故この中には入れないんでしょうか?」

「解。人族には関係のないことだ。それで、如何様で?」


 ああもう! 機人族さん職務を全うしすぎです!! ど、どうしましょう⋯⋯!

 考えに考えた私の頭はパンク寸前で、というかもはやパンクしていて、何故このような行動を取ったのかは、のちの私でもわからないだろう。

 私はバックステップで機人族と距離をとり、その場で後方宙返り。着地後に回転足払いをし、そのまま飛び上がり空中で二段回し蹴り。着地と同時に左手をパーで前へ突き出し、右手を顔の横へ掌は外へ向け、足を前後に広げ腰を落とす。


「わ、私は老師チウ。機人族の方々に体捌きを教えに参ったぁ!!」


 一陣の風が吹き、機人族の冷たい様な視線が私に突き刺さる。

 い、痛ぁ〜、この空気。痛ぁ⋯⋯。

 やめてくださいぃ、そんな目で見ないでくださいぃ。頭がまともじゃないのは自分でもわかってるんです。誤魔化すにしてもなんでこんな方法を取ったの私!


「解。貴方が体術指南の先生でしたか。我が軍のために遠路はるばる良くいらっしゃいました」

「ほぇ?」


 機人族の言葉が理解できず、反射的に返答してしまうが、どうやら上手く⋯⋯? いった⋯⋯のかなぁ?


「勧。どうぞ中へお進みください」

「あ、ありが⋯⋯うむ! ご苦労である!」


 モード老師になりきり、門を潜る私。

 すると背後から守衛さんの声。


「告。忘れるところでした、老師チウ、こちらを」

「はい?」


 守衛さんに後ろ手に両手を揃えられ、直後に両手首あたりに硬い感覚が。

 冷や汗を流しながら、勘違いと信じつつ問う。


「⋯⋯あのぅ、なんか手錠の様な感触がするのですが」

「解。機人族の軍に体術指南など雇うわけがないだろう。賊だ! 賊が入り込んだぞ!!」


 微妙にズレた回答! けど両腕を後ろ手に縛られたのは事実! 私はピンチ! 機人族はファンキー! 

 ってやってる場合か!!


 私は門を潜り街へ侵入。中には見慣れない金属の筒の様なものを向ける機人族が、私を包囲する様に大勢いた。


「ソーマ君、やっぱり私、ダメかもしれません」


 半泣き半笑いになりながら、私は数時間ぶりにあの破裂音を聞いた。

シリアス一辺倒は疲れるからね

というか続かないわ、あのテンション

ここだけの話、前話は投稿前の誤字チェックで感情移入しちゃって泣きました、だから今回はギャグ多め!!

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