piece.27 武器と防具
こんにちは!
人って簡単にぶっ飛ぶんだなぁと最近思うチウです!
誤解されない様に言っておくと対人の際は、
魔法無しかつ1割程度の力で殴ったり掴んだりしてます!
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「さて、どうすっかね」
今後の方針を決める前に一応、一応アルバにお礼を言おうとしたら、既に姿を消していた。感謝と聞きたい事が聞けなかったイライラが混ざった感情を飲み込み、とりあえずやるべきことをやる事に。
まず、俺たちは気絶⋯⋯機能停止? してる機人族の男をギルドへ運び込み、ギルドマスターへ事情を説明。
目を見開いて、何やってんのぉ!? という強いツッコミを受けつつも、今後の予定を軽く伝え、謁見を先延ばしにしてもらう様に伝えた。
人を呪い殺せそうな顔で、先延ばしにできると思ってるのが凄いよ、と言われたが、知ったこっちゃない。
だって俺悪くねーし、うん。
そうしてギルドの外、3人で今後の動きについて話をしていたわけだ。
「提。機人族領へ行くにしても、足が必要ですね」
「馬ならいるが⋯⋯ここからどれぐらいかかるもんなの?」
「解。領地には馬車で4日ほど、首都には6日ほど掛かりますね」
約一週間⋯⋯チウに爆速でやらせても3日は掛かるわけか。
「じゃあとりあえず、機人族領へ向かう準備はしないとな」
「となると食料品の補充及び、武器や防具の購入ですかね」
「ああ、なるべく早く発ちたいが、準備不十分で魔物にやられるのも、機人族にやられるのも御免だ。アルフは戦え⋯⋯ないか」
俺がアルフへ目をやり問おうとするも、機人族の話を思い出して、自身で否定する。
「怒。私もここまで来た経験があります。職などなくても戦えます」
「え、そうなの? いやまあ、職業が絶対ではないし、戦えるっちゃ戦えるだろうけど⋯⋯」
肉感的な身体、あまり筋肉のなさそうな四肢、戦えそうに見えないが。
アルフの身体を見回す俺にチウがジトっとした目で。
「ソーマ君目がいやらしいんですけど」
「はぁ!? べ、別にそういう意図があってみてたわけじゃねえよ!?」
「照。ソーマ様であれば私も吝かでは⋯⋯」
「うるせーよ、脳筋にロボ娘! あんまり筋肉とかなさそうだし、魔法でも使えなきゃ戦えなさそうだなと思っただけだ!」
俺は肉感的な身体、アルフエッロ⋯⋯と思っていたのをサラッとごまかす。いや、そんながっつり考えてたわけじゃないけどね!!
「あー⋯⋯アルフさん、魔法って使えるんですか?」
「解。私に魔力があれば使用は難しくないでしょう」
「ということは、使用経験は無いかつ、可否もわからんということだな」
胸を張ってそういうアルフに冷静にツッコミを特盛!! 入れる俺。
え? とんでもねえよあれ。もうあれでぶん殴ればいいんじゃね? ブルボンッて。男は死ぬ。
「じぃー」
いかん、チウの冷たい視線が突き刺さる。
「あ、あぁ! こんなことしてる暇ねえや! さっさと鍛冶屋に向かうぞ!!」
俺はチウと目線を合わせずクルリと反対方向へ進み始める。
「ソーマ君、鍛冶屋はそっちじゃなくてこっちです」
「あーそうだったかー、俺とした事がー」
再度反転しチウの隣をスルッと抜けて進む。
チウの冷たい視線はなるべく気にせず進むことにした。おいロボ娘、若干顔赤らめてるんじゃねえよ。てかそんな事まで出来るのか。えぇい、異世界の技術力は化け物か!
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冷たい視線から逃れる様に行商人のもとへ向かい、食料品とポーション類を購入。流石に異世界といえどちぎれた腕を生やしたり、骨折を瞬時に治したり出来るわけでは無いらしいが、あるに越したことはない。
魔力のポーションは無いかと訊ねたら、何言ってんだコイツって目で見られた。その後チウとアルフに聞くと、魔力回復は自然回復の他に特殊な方法がいくつかしか存在せず、ポーションなどはもってのほからしい。聞いたことねえぞ魔力ポーションない異世界。
その後俺たちは鍛冶屋に伺い、新しい装備を物色していた。
「俺の武具は⋯⋯剣は装備できんからっと⋯⋯」
「疑。何か問題があるのですか?」
あ、そういや俺たちの事をコイツに話してなかったか。
俺は俺とチウの呪いのついて、これまでの経緯を簡単にアルフへ説明する。それを聞いたアルフは少し悲しそうな顔をする。
「悲。大変だったのですね⋯⋯」
「現象は特殊だけど、世界にはありふれた程度の不幸だよ。俺たちが特別最低な不幸ってわけじゃねえさ」
これは嘘じゃない。チウのことをどうこういう資格はないが、俺については家族がみんな生きてるし、仲も良い。特段不幸とは思わなかった⋯⋯まあ強いて言うなら轢き殺されたのが不幸か?
話を聞いていたのか、チウが嬉しそうな顔をしてよって来る。
「私も不幸だったけど幸運でした! ソーマ君に逢えましたし!」
「それは良いことなのか、俺にはなんとも言えないがな」
俺は苦笑しながらそう答える。実際俺の旅に付き合わせてしまって⋯⋯と言うのは来てくれたチウに失礼かな。
「いいことです! 私にとっては幸せの絶頂です!!」
「そう言ってくれると俺もありがたいさ」
感謝を伝えたはずなのに、チウが頬を膨らませる。
いや、お前が何を言いたいかはわかるけどさ、今はそんな暇も余裕もないんだって。悪いけどさ。
「羨。2人は強い絆で繋がれてるのですね」
「よせやい」
アルフにそう言われ、照れ臭くなり武具選びに戻る。
剣はダメ、槍はある、鎌もあるし⋯⋯。
「これなんてどうですか?」
チウが差し出すのは弓。
「弓か⋯⋯いい武器だけど、俺が扱うには鍛錬が必要だな」
「え? そんなに大変なんですか? こう、ギューって引っ張って離すだけじゃないんですか?」
「いや、弓は構え方から引き方・飛ばし方に至るまで全てがテクニカルな武器だ」
脳筋なチウは勿論、俺も器用な方じゃないからマトモに矢を飛ばすのにも時間がかかるだろうし、狙ったところへ飛ばすにはもっと時間がかかるだろう。
「それに俺とチウは適当な石を投げる方が向いてるだろ」
「確かに!」
こらこらーそこで拳を握りしめて、いい笑顔を浮かべるのが脳筋たる所以だぞー。
「問。ソーマ様、こちらはいかがでしょう」
苦笑いを浮かべる俺にアルフが何かを差し出す。短いその物体は。
「ナイフ⋯⋯か」
「解。正確には投擲用のナイフです。取り回しもしやすく、いざと言う時は相手に直接刺す使い方もできるかと」
「ふむ⋯⋯でもお高いんでしょう?」
「解。いえいえ、何と今なら10本購入でおまけに1本ついてきてこの値段。買うなら今ですぜ旦那」
異世界に来て何と今ならの件を聞くと思わなかったわ。だがまあ、贔屓目無しで投げナイフはいいチョイスだ、値段は⋯⋯相場が分からんから何とも言えないが。
「うん、これにしよう。ナイスだアルフ」
「喜。ありがたき幸せ」
コイツ転生者じゃないよね? なんかさっきからすごい怪しいんだけど。いやいや、俺が知らないだけでこの世界にもそういった文化があるのかもな。
「あとは⋯⋯2人の武器と全員分の防具か」
「あ、私はこれがいいですー」
そう言ってチウが見せたのは杖⋯⋯鋼製の。これ以上武力を上げてどうするんだよお前。いやいいんだけどね。
「あ、ああ、わかった。じゃアルフは⋯⋯」
「告。私はこれがいいです」
両手に小型の盾、バックラーを持つアルフ。
え? それ武器? ぶん殴るの? 何で俺に集まる女は筋力で訴えかけるの?
「決してダメとは言わないが⋯⋯」
「わー! 良いですねアルフさん! 殴りやすそうです!」
「だよね→☆ ⋯⋯ごほん。勿論殴る以外も考えていますよ?」
「殴る以外⋯⋯?」
それは守る、防ぐ事ではないのか? そんな疑問を浮かべる俺にドヤ顔でアルフが告げる。
「解。これをこうして、こうします!」
アルフが振り被り、バックラーを投擲! そのまま鍛冶屋の壁にぶつかる。
ぶつかり地面に落ちたバックラーを見たのちに、アルフへ視線を移す。
「結局物理じゃねえか!!」
「嘲。私が見せたいのはこの後です」
そう言って手元で何かを操作すると、何かが擦れる音と共にバックラーがアルフの手元に戻る。
あれは!? 掃除機とかについてた巻き取るやつ!!
「慢。凄いでしょう?」
「お前が凄いわけじゃねえがかっけえ!!」
「うわー! うわー! 殴ってよし、投げてよしの二度美味しい武器ですね!!」
普通はそこに守ってよしが入るんだけどね、まあいいや!
バックラーのカッコいい一連の動きにワーキャーしていると、店の奥からの太い声で。
「坊ちゃんたち、それ買い取りな」
投げてぶつけて遊んだからである。当たり前である。何でこんなネタ装備を⋯⋯。
俺たちはその他に、俺以外がつける四肢の防具、服の中に着る防具を購入。俺は四肢に服以外をつけても、自身で斬り裂いてしまうためだ。
その後予定通り宿へ戻り、チウとアルフにツッコミを入れつつ飯を食い、床についた。
さて、かくして王都観光もとい散策初日ははドタバタしたものになったわけだ。
全くもって騒がしい、しかも明日は朝一に王都を発ち、機人族領を目指す。
俺は自身の運の悪さを呪うと共に、新たな友人との出会いを少しだけ感謝し眠りに落ちるのであった。
ソ「アルフいるし多分大丈夫だよな⋯⋯?」
チ「うーん⋯⋯むにゃむにゃ」
ア「⋯⋯」グウグウ
ソ「(というか機人族って目を開けたまま寝るのか!? 怖えよ!!)」