第93話 アルフレッド=バークス
俺たちは城内を先に先に進んでいく。途中、屍人や骸骨騎士などが出てきたが、問題なく倒していく。クレアはもちろんのこと、『暁の牙』の面々もかなり強かった。
「いやー、順調順調!このまま突破できそうだね!」
「ジェイク、はしゃぎすぎは良くないぞ。こういう時こそ油断は禁物だ」
「へーへー、分かってますよー」
「……殴るぞ?」
「ごめんって!!」
「ふふっ!」
ジェイクさんとアインさんのやりとりを見て、思わず笑ってしまった。これを見て、前世で『暁の翼』に入っていた頃を思い出した。『暁の翼』以外ではソロで活動していた俺にとって、あそこはとても居心地が良かった。……懐かしいな。
「あ!笑ったな!リースまで笑うのかよぉ……」
「す、すいません。つい面白くって」
「私たちっていつもこんな感じよね。二人がはしゃいでるっていうのかな?」
「おい、はしゃいでいるのはジェイクだけだろ。俺を含めるんじゃないよ」
「で、でも、リーナちゃんの言う通りだと思う。二人のやりとりってとっても面白いよね」
「おいおい、マリーまで……」
アインさんは本気で落ち込んでいるみたいだった。ジェイクさんと一緒がそんなに嫌なのか。
この時、俺は確実に油断していた。俺が注意深く周りを探知していたらみんなを危険に晒すことはなかったのに。
「ほら!早く行くぞ!まだまだ先は長いんだ!」
ジェイクさんがそう言った時だった。
全員の足元に不気味な魔法陣が浮かび上がった。俺は一瞬で気づく。この魔法陣は転移の魔法陣だと。
「みんな!気をつけて!これは転移の魔法陣ッッ」
そう言っている途中で全員転送されてしまった。
俺が転送された先はとても広い部屋だった。そしてその奥に玉座があり、そこに誰かが座っていた。
「ふっはっはっはっ!!!よく来たな、我が城に!招待するぞ!!」
そいつは玉座を立ち、前にやってきた。そのおかげで顔がはっきり見えるようになった。が、それが意味のないことだとすぐ知ることとなった。
「……お前も骸骨かよ」
「はっはっはっ!お二方はお気に召さなかったかな?」
「お二方?」
周りを見渡すとクレアがいた。俺と同じ場所に転送されたみたいだ。
「なんで俺とクレアをこの場所に呼んだんだ?」
「なんで?おいおい、私を忘れたのか?ツカサ。いや、今はリースだったかな?」
「!!!???」
こいつ、前世の俺のことを知ってる?誰だ…?
「そっちのお嬢さんは分家の娘だな?調子に乗って国など作った」
分家?俺の知り合いでレルフランド家を分家と呼ぶのは一人しかいない……。
「お前、アルフか……」
「ようやく気づいてくれたね、ツカサ」
こいつはアルフレッド=バークス。元バークス王国の皇子であり、『暁の翼』の団長だった男だ。