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第90話 道の途中で



 俺とクレアは件の古城へ魔道具を使って向かっていた。

 転移魔法を使ってもよかったのだが、古城は周りを谷で囲まれており、座標が少しでもずれると危険なのだ。 


 よって俺は魔道具を使うことにした。この魔道具は『自動飛翔魔道具フローター』といい、カーペットのような形をしている。外側はカーペットの素材で長時間座っても痛くないようにしてあるが、内側は複雑な構造になっている。


 そしてこれは前世の俺が設計した物だ。ヴォルニクスの背中に乗っている時にこれの存在を思い出した。いちいちヴォルニクスを呼び出すのも面倒なので、今度からはこれを使おうと思って作っておいたのだ。まさかこんなに早く使うことになるとは思わなかったがな。


 フローターは一度魔力を注ぎ込めば、その魔力が魔力回路を循環して、止めなければ半永久的に稼働する。止めるときは魔力を自分の元へ戻すだけでいい。とても便利だと思っていたのだが、他人には魔力を戻すという操作が出来ないらしく、結局俺だけしか使えない魔道具となってしまった。前世で使っていたフローターはどこに置いてきたか忘れてしまった。まあ、誰にも使えないからどこにあろうと心配ないだろう。


「こ、これはすごいですね…。それなりのスピードで進んでいるのに風を全く感じないですね」


「ああ、空気抵抗を調節する魔法付きだからな。ついでに飛来物も弾き飛ばすからな。くつろいでて大丈夫だぞ」


 フローターには色々な付与効果もつけてある。これらを詰め込んだせいで複雑な構造となってしまったが、乗った後のことを考えると、先に付与しておいた方が楽なのだ。


「もし風を感じたいなら少し調節するが……どうする?」


「じゃあ少しだけお願いします」


「了解!」


 こうして俺たちは快適な空の旅を過ごしていた時、クレアが何かを見つけた。


「リ、リース様、あそこを見てください!」


 クレアが指差した先に数人の人と狼型の魔物の大群がいた。見た限りでは人間側が追い詰められている。このままではあの人たちは魔物にやられてしまうかもしれない。


 ……助けに行くか。


「悪い、クレア。少し用事が出来た。下に降りるぞ」


「はいっ!!」


 クレアはとても笑顔でそう答えた。なぜそんなに笑顔なんだろう…?


 俺はフローターを操作して下降する。この距離なら十分間に合うだろう。


 下降中、俺は魔法を発動する。この魔法は一対多の時に役立つ魔法だ。その名も『殲滅魔法バニッシュアーク」だ。この魔法はいくつもの白い光が敵を何度も貫き、確実に敵を殲滅する。なんとも有用的な魔法だ。


 バニッシュアークが狼型の魔物を倒していく。下に着く頃にはもう終わっていた。


「あんた達、大丈夫だったか?」


 俺がそう声をかけると、


「ああ、大丈夫だ。ありがとう、助かったよ」


 そう言って、助けた人の内の一人が手を出してきた。そいつの顔をよく見てみると、見たことがある顔だった。


「って君だったのか!久しぶりだね。入学試験以来かな?」


 今助けたこの人は入学試験の時に剣術の担当をしていた冒険者だ。まさかこんなところで出会うとは……。運命ってすごいな。


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