第89話 古城の亡霊
クレアの実力を見ている時、国王がこちらにやって来た。何か嫌な予感がするんだが。
「ちょっといいか、二人とも」
「ああ、いいぞ」
「どうしたのですか、お父様?」
「今回の家庭教師の件なんだがな、クレアに教えつつ、あるクエストをこなしてくれんか?」
やはり予想は当たっていたみたいだ。前から思っていたが、この人は少々人づかいが荒い気がする。こっちだって人間だから疲れるんだけどな。
「まずその内容を教えてもらってもいいですか?」
俺はひとまず内容を聞いた。内容次第でも返答は変わってくる。
「この国の外れにある古城の調査を依頼したい。報酬は…何か欲しいものを用意しよう」
「古城と言うと、あの噂の?」
クレアは何か知っているみたいだ。噂になっているのか、その城というのは。
「その通りだ。実は冒険者ギルドにもクエストとして出しているのだが、誰一人としてこなした者がいないのだ。しかも数名は城から帰還していないとか」
「なるほど。ということは強い魔物とかがいる可能性が高いですね。そういった情報は帰還者から聞いてないのですか?」
「それが全員怯えきった様子でな。まともに話も出来ないのだ。だが、手がかりなら一つだけある」
「それは?」
「帰還者の全員がぶつぶつと呟いているのだ。『亡霊が襲ってくる』とな」
「ひっ!!」
クレアは驚いたようで、俺の袖にしがみ付いてきた。どうやらお化けとかの類が苦手みたいだ。
「亡霊ですか…。なら考えられる可能性は死霊術師か不死族の王ですね」
「死霊術師に不死族の王ですか……。聞いたこともありませんね」
「ああ、そうだな。リースよ、私たちに教えてはくれんか?」
「ええ、いいですよ。まず、この二つの決定的な違いは人間か魔物かです。まず死霊術師。こいつらは前者、人間の方です。こいつらは黒魔法という死者を操る魔法を使います。人間なだけあって知恵を使うので厄介な敵になります」
「ほうほう、なら不死族の王は?」
「そいつは不死族たちを束ねる存在なので、周りにはゴーストやグール、ゾンビなどがいます。こいつらの厄介なところは数です。それはもうめちゃくちゃ多いです」
「それなら両方の場合の対策を練らなければいけませんね」
「対策はどちらもそう変わらないさ。浄化魔法を使えば対処できる」
「でも、死霊術師は人間なんですよね?浄化魔法は効くのですか?」
「正確には黒魔法に反応するんだ。こいつは黒魔法が使えないと何も出来ない。後は捕まえて終わりだ」
「なるほど……。で、どうだ、リース。いけそうか?」
「ええ、大丈夫です。任せてください」
「なら、頼んだぞ。クレアも気をつけてな」
「はい、お父様」
こうして俺とクレアは古城へと向かった。