第84話 絶剣グレイス
クロス・イグニスの声が聞こえたと思ったら、俺はいつか来た白い世界に来ていた。そこにはクロス・イグニスが一人だけいた。
「お前、この剣のこと知ってるのか?」
『一応ね。あ、ちなみにそれは神器だよ。名前は……絶剣グレイスなんてどうかな?』
「え、今つけたのか?」
『まあ、細かいことは置いといて。その剣の使い方を教えてあげるよ』
「すっごい気になるけど、まあ仕方がない。早速教えてくれるか?」
『まず、その剣に意識を傾けてみて。そしたら剣の鼓動が聞こえてくるはずだよ』
言われた通り、俺は剣に意識を集中する。すると、確かに鼓動が聞こえた。それは規則正しく動いている。
「聞こえたぞ」
『よし、そしたら剣で自分を斬ってみて』
「わ、分かった」
俺はグレイスで自分の腕を斬った。すると、頭の中に何かが流れ込んできた。
『うまくいったみたいだね。じゃあ戻って悪魔を倒しちゃってね』
「もう終わりなのか?」
『だって使い方は分かったでしょ。なら勝てるよ。……あ、一つ注意。あまり力に溺れないようにね』
「ああ、分かった。ありがとな」
『どういたしまして、ツカサ君』
「その名前で」
そう言いかけた時に俺は元の世界に戻っていた。そこは悪魔の魔法が放たれるところだった。
「これで終わりだぁぁぁ!!!」
無数の黒い弾が俺に襲いかかってきた。これを食らえば、ひとたまりもないだろう。だが、今の俺には効かない。
「充填」
そう言ってグレイスを上に上げた瞬間、無数の黒い弾がグレイスに一つ残らず吸収された。
「ば、ばかなっ!?」
そして俺は剣先を悪魔に向ける。
「放出」
すると、さっきグレイスに吸収された無数の黒い弾が悪魔に放たれた。
「ぐっ、黒盾」
悪魔が展開した盾は黒い弾を防いでいく。だが、この盾はグレイスの前では意味を成さない。
俺はありったけの魔力をグレイスにこめる。この一撃で戦いを終わらせるために。
悪魔も盾で弾を防ぎながら、魔法の準備をしている。あちらも最強の一撃だろう。
そして弾と盾が同時に消滅する。その瞬間、俺と悪魔は同時に攻撃を放つ。
「絶剣 骸」
「黒死槍」
全てを喰らう漆黒の斬撃と全てを穿つ漆黒の槍がぶつかり、やがて斬撃が槍を斬り裂いた。
「いっけぇぇぇ!!」
漆黒の斬撃は勢いを止めず、悪魔を一刀両断した。
「ば、ばかな……。私が負けるなんて……」
「強かったよ、お前は。何かが欠けていたら俺は負けていたよ」
こうして俺は長かった悪魔との戦いを終えた。




