第75話 いざ、竜の里へ
休日も終わり、俺は約束通り、竜の里に向かうことにした。理事長にしばらく休むという話をして、校庭に向かう。
転移魔法を使ってもよかったが、ヴォルニクスがどうしても俺を自分の背中に乗せて、竜の里に連れて行きたいと言ってきたので、そうすることにした。
『準備は出来たか、リースよ』
『ああ、大丈夫だ』
「ちょっと待ってー!!」
ステラ、レイナ、ミルの三人がやってきた。
「私たちも行くわ!」
「……リースだけ、行かせるわけには、いかないよ」
ん?ミルの様子がなんだかおかしい気がするが、気のせいかな?
『ヴォルニクス、あと三人増えるけど大丈夫か?』
『問題ないぞ』
俺が心配していたのは重量の問題ではなく、ヴォルニクスの人間恐怖症の方だったんだけど……まあ、大丈夫か。
「よし、行くぞ!」
三人の顔がみるみる明るくなっていく。
「うん!」
「ええ!」
「やった!」
俺たちはヴォルニクスに乗り、竜の里へと向かった。
◇
出発してから約10分後のこと。
「ねー、リースくん、どれぐらいかかるの?」
「まあ大体2時間ぐらいかな」
「意外とかかるわね」
「場所が場所だしな。仕方がないだろう」
「……リースは行ったことあるの?」
「昔にちょっとな。竜神とも知り合いだぞ?」
『え、竜神様と知り合いなのか!?』
『ああ、随分前に会ったから覚えているかは分からないがな。てか、そろそろ念話はやめないか?他の人とのコミュニケーションが取りづらい』
『まあ、そうだな。やめてやるか』
俺とヴォルニクスは念話をやめた。元々、ヴォルニクスと話すのに念話はいらないが、あの時は仕方なく使ったのだ。
そうというのも、この時代の人間は竜を知らない。当然、竜が人間の言葉を話すことも知らない。ということは、竜が突然現れただけでも驚くのに、人間の言葉を話すことで更に驚かせてしまうだろう。だから、念話で済ませた。要するに、俺なりの配慮だ。
「あー、んんっ、なあ、ヴォルニクス」
「なんだ、リース」
ちらちらっと三人の顔を見てみると、とても驚いた顔をしている。やっぱりこうなるよな。
だが、少し違和感を感じた。まあ、気のせいか。
「……ちなみに竜は人間の言葉を話すことが出来るからな」
「なんで教えてくれなかったの!?リースくん!」
「いや、聞かれなかったし」
「言いなさいよ!そのくらい!」
「……私も話したかった」
「悪かったって。ほら、ヴォルニクス、話してやってくれ」
「お、おお、分かった」
だが、誰も話そうとしない。
少し待ってると、
『おい、リース。何を話せばいいんだ!』
『なんでもいいだろ。そんくらい自分で考えろよ』
『ぐっ、うぬぬ、分かった』
「おっほん、あー、ヴォルニクスだ。よろしく頼む」
「す、ステラです。よろしくです!」
「レイナよ。よろしくね」
「ミル。よろしく」
ようやく自己紹介をして、話し始めた。
どんだけ人見知りなんだよ。




