表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/119

第74話 休日のお出かけ 2日目

今回はいつもより長いです。



 翌日、ミルとは駅で待ち合わせた。

 どうやらミルは少し遠出をしたいみたいだ。


「今日はどこに行くんだ?」


「……私の故郷に行く」


「へー。……ってまじか!ほんと急だな」


「うふふ。私の故郷を紹介したいの。……そうじゃないと、もうすぐで……」


「ん?最後、なんて言ったんだ?」


「ううん。なんでもないよ」


「そうか……」


 なんか言ってた気がしたんだけどな。独り言かな?


 ひとまず電車に乗り込む。行き先はミルの故郷、クレセントだ。



 電車内でミルと色々な話をした。

 学校のことや神器のこと、魔法戦闘のやり方についてなど、いっぱい話をした。その時間はとても楽しかった。


 そんな話をしていると、もう目的地のクレセントに着いた。クレセントはレルフランド王国の東にある街で、とても綺麗な月が見られることで有名だ。前世ではここは何もない丘だったが、今はこんな街ができていたなんて。


「リース、こっち」


 ミルに連れられて、街を右に左に歩いていく。

 そして、一軒の家の前で立ち止まった。


「ここが私の家」


 そこはお世辞にも綺麗とは言えない、ところどころがボロボロになっている家だった。


 俺が家を見ていると、


「あまり見ないでほしい。お世辞にも綺麗って言えない。

……こっち来て」


 ミルもそう思っていたのか。

 俺はミルの後ろをついていく。


「ただいまー」


「お、お邪魔します」


 玄関から家に入ろうとすると、


「姉ちゃん、おかえりー」


「かえりー」


「あ!ミル姉ちゃんが男の人連れてきてるー」


「お母さん、たいへーん」


 子供がいっぱい出てきた。おそらくミルの弟、妹だろうが、人数が多い。今いるだけで4人はいたな。


「あらあら、お帰り。そちらはお友達かい?」


「お、お母さん。無理しちゃダメだよ。ベッドで寝てて」


「大丈夫だよ。そうだ、自己紹介が遅れたね。どうも、ミルの母親のマーシャです」


「こ、こんにちは。ミルさんと同じクラスのリース=グレイアスと言います。すみません、急に家に来てしまって……」


「構わないよ。こんなボロくて古い家で悪いね」


「いえ、全然大丈夫ですよ。とてもいい家です」


「あらあら、ありがとうね」


 マーシャさんは大人にしては小柄だが、優しい雰囲気で話していると落ち着く。


「リース、こっち」


 そうして案内されたのは、ミルの部屋だった。


「適当なところに座ってて。お茶持ってくる」


「お、おう」


 俺はとても緊張していた。なんせ、女子の部屋に入るなんて無いからだ。


 ミルの家は外観こそアレだが、中は結構広くて綺麗だ。しかもミルの部屋は小物や人形などがあり、女の子らしい部屋だった。別に意識はしてないが、正座をしてしまう。


 すると、ミルが戻ってきた。


「お待たせ」


「おお、ありがとう」


 ひとまず貰ったお茶を飲み、心を落ち着かせる。


「今日はミルの家で過ごすのか?」


 無言も嫌なので、話を振ってみる。


「ううん、別の場所に行く。最初に寄ったのは、お母さんの様子を見たかったから」


「そっか、ちなみにお父さんは?」


「お父さんはもういない。3年前に……」


「ご、ごめんな。辛いこと思い出させちゃって」


「全然大丈夫。もうちょっとくつろいだら行こっか」


 その後、ミルと話をしてたら、弟、妹がやってきたので少し遊んであげた。最初は楽しかったが、後の方は子供の底なしの体力にやられて、ヘロヘロだった。


 そうして家を出たのは昼ぐらいだった。


「あら、もう行くのかい?」


「うん。色々回りたいの」


「お邪魔しました」


「また、いつでも来てね」


 こうしてミルの家を後にした。



 その後、俺たちは昼ごはんを食べて、月の丘という場所に向かった。この丘で見る月は、この世で一番綺麗だと言われている。今はまだ見えないが、夜にまた来てみたい。


 その後、クレセント博物館に行った。ミルは何回も来たことがあるので、案内をしてくれた。


 月の女神アルテミスの彫刻や月光石、満月が描かれた絵画など、月に関するものが多数展示されていた。そのどれもが、とても綺麗でつい見入ってしまった。


 博物館でお土産を買った。まさか2日連続でお土産を選ぶことになるとは...。何分か悩み、ステラとレイナには全員お揃いのキーホルダーを買った。きっと喜んでくれるはずだ。


 博物館を出たら、最後の目的地である月の神殿へと向かった。ミルに聞いた話だと、この神殿は特定の人しか入れないらしい。ということは、ここには神器があるかもしれない。



 少し歩くと神殿に着いた。ミルは神殿に入れるらしいが、俺は残念ながら入れなかった。


 ということで、ミルに神器を取ってきてもらうことにした。神器までたどり着くには試練を乗り越えないといけない。それなりの時間がかかると思っていたが、意外にもすぐにミルは出てきた。


「これ神器だよね?」


「ああ、そうだな……」


 ここにあった神器は『光剣ミュルグレス』。全ての光を司るとされる剣だ。ちなみに元々誰が持っていたかは知らない。


「どうする?」


「ミルが持ってるといい。ミルは選ばれた人だからな。」


「うん!えっと、それでね……」


「ん?どうした?」


「えっと……やっぱいいかな」


 そうなのか。何かある感じだったんだけどな。



 一通りやることが終わったので、帰ることにした。

 明日は竜の里に行かないといけないしな。


 この二日間、疲れたけど楽しかった。また行きたいな。


 俺たちは電車に揺られながら帰った。



 また言えなかった。どうしてだろう。


 いつも言わないとって思ってるのに、いざとなると言えない。いや、言いたくない。言ってしまうと、もう別れないといけなくなる気がして。


 みんな本当にありがとう。編入生の私と仲良くしてくれて。私はもうすぐで死ぬ。


 寝ているはずなのに、涙が零れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ