第70話 覇弓リヴィエラ
俺たちは屋敷のある部屋に案内された。
その部屋の壁に『覇弓リヴィエラ』は飾られていた。それ以外は何もない、この神器のための部屋みたいだった。
「どう?あれが『覇弓リヴィエラ』よ」
『覇弓リヴィエラ』は普通の弓よりも少し大きく、羽のような形をしている。この神器にも特殊な能力があるのだが、俺は実際に見たことはない。
俺たちが神器を見ていると、
「ん、サリアどうしたんだ?」
「あら、兄さん。今はね、友達に神器を見せてるのよ」
「そうか。お前のことだから大丈夫だろうけど、それが神器だったこと忘れるなよ?」
「もう、分かってるわよ。彼らは大丈夫だから、心配しないで」
サリアさんのお兄さんは俺たちに軽い会釈をして歩いていった。お兄さんの今の忠告はもっともだ。神器は強力な故に狙われやすい。持っていることがバレるのは極力避けた方がいい。
俺はサリアさんにあのことを聞いてみた。
「オルドレッド家って、あのユリナ=オルドレッドの一族ですか?」
「ええ、そうよ。よく知ってるわね」
やはり当たってたみたいだな。まあ、オルドレッドという名前と、『覇弓リヴィエラ』を持っている時点でほぼ確定なんだけどな。
「え、ユリナ=オルドレッドって、あの「暁の翼」の?」
「ええ、昔はとても有名だったらしいわね」
「そりゃ、最強の冒険者集団って言われてますもん。誰でも知ってますよ」
『暁の翼』は今も有名らしいな。その中に一時期、俺がいたと言ったら驚くだろうな。そうだ、他のメンバーのことも聞いてみるか。
「『暁の翼』の他のメンバーの一族がどこにいるか知りませんか?」
「そうねー、たしかウェルグ=グラスカの末裔がレルフランド王国にいるんじゃなかったかしら」
ウェルグ=グラスカ。『暁の翼』の魔術師で、魔法について俺とよく話し合った男だ。そうか、あいつの末裔がレルフランド王国にいるのか。そういや、グラスカってどこかで聞いたことがあるような...。
「私が知ってるのはその人ぐらいかしら。ごめんなさいね、あまり役に立たなくて」
「いえ、全然大丈夫ですよ。欲しい情報はいただきましたし」
「そう?なら、よかったわ」
俺たちは客間に戻り、もう少し話をした後、帰ることにした。サリアさんは、また来てくれと言っていたので、今度またおじゃましようと思う。その時はステラたちも連れてこようかな。
◇
その帰り道、俺は重要なことを思い出した。
それはウェルグ=グラスカの末裔のこと。
グラスカは……レイナの家名だ。