第61話 実力を測られる
やっぱりか。念のため、魔力反応を調べといてよかったな。
「試すような真似をして悪かったの。じゃが、どれほど出来るのか見てみたかったんじゃ」
「いえ、構いません。分かってもらえたなら、それで大丈夫です」
「はっはっは。面白い男だ。あやつが気に入るのも分かるぞ」
どうやら俺は国王によく気に入られるみたいだ。
「ただ儂としては、もう少しそなたの実力を見てみたい。
……リースよ、ここにいるヘルドと戦ってくれぬか?」
ヘルドは前に出てくる。
「僕としては戦いたくないんだけどね。だって弱い人と戦っても意味ないでしょ?」
「あ?」
「だってただの学生でしょ?そんなのに僕が負けるわけないじゃん」
俺は溢れ出る怒りを抑える。面と面向かって弱いと言われるとイラッときてしまうな。
「まあまあ、そう言わずに戦いましょうよ。所詮、僕なんかじゃ相手にならないかもしれないですけど」
「ふーん、まあいいや。ここじゃだめだから移動するよ」
俺たちは演習場に移動した。演習場には訓練中の兵士がいた。だが、どいつもあまり強くない。魔力は弱いし、剣術もイマイチだ。
「勝負はどちらかが戦闘不能、もしくは降参を認めたら、でいいかな」
「はい、それでいいですよ」
「それじゃあ、君のタイミングで始めていいよ」
俺は『炎弾』を放つ。
「なっ、無詠唱だと!?」
そうか、こいつらはまだ詠唱魔法を使っているのか。
なんだか、懐かしいな。
「氷よ、我の元に集いて、向かう敵を殲滅せよ!氷瀑布!」
なかなか強い魔法だ。まあ、俺にとってはどうってことないんだけどな。
俺は結界魔法で攻撃を防ぐ。
そして、また結界魔法を発動し、ヘルドを囲むように結界を張る。これでヘルドは結界から出ることはできない。
「おい!なんだよ、これ。出せよ!」
「降参するなら出してもいいですよ」
「……ちっ、分かったよ。降参だ。だから出してくれ」
俺は結界魔法を解除する。
「まさかここまでとは思わんかったぞ、リースよ。魔法騎士団の団長に降参させるとは」
魔法騎士団の団長?こいつが?いや、いくらなんでも弱すぎるだろ。
「おい、なんだよその顔。ありえねーみたいた顔してんじゃねーよ」
「まあ、そなたからすれば弱いかもしれんが、ヘルドはこの国トップの魔術師なのじゃ」
この国もか!やはり世界全体で何かが起こったのか?文明が滅びるような、何かが。
「それでの、リース。儂からそなたに頼みがあるんじゃ」
「なんですか?」
「実はな……」
その時、東の方からとてつもない魔力反応がこっちに向かってくることに気がついた。
さすがにこの魔力反応にはヘルドも気づいたようで、
「なんだよ、これ。一体何が来てるんだ?」
俺は急いで演習場を出て、東に向かう。
そして魔力反応がある方を向くと、上空から何かが飛んでくるのが見えた。
俺は魔法を使い、視力を強化してもう一度見てみる。
すると、何が飛んできているのか分かった。
「おい!リース!何がこっちに来てるんだ!」
ヘルドは慌てて俺を追いかけてきたようだ。
「あれは……竜だ」
「竜だと……」
とてつもない魔力反応の正体は、竜だった。