第60話 水と陶器の国カロナール
準備は整った。今こそ我々の力を見せる時だ。
「隊長、こちらに」
「ああ」
リース=グレイアス。ことごとく我々の邪魔をしてきた最重要警戒人物。だが、それも今日まで。なぜなら、今日が奴の命日だからな。
せいぜい今を楽しんでおくがいい。
◇
俺たちは校庭に来た旅客機に乗り込み、カロナールへ向かう。
今回は転移魔法は使えない。なぜなら、不法侵入になるからだ。せっかくの旅行だし、そんなことで台無しにはしたくないからな。
カロナールまでは約一時間半程度で行くことができる。その間、俺たちはトランプやボードゲームで遊んだりして過ごした。
そしてあっという間に到着した。
「ここがカロナールか〜。」
ステラが呟く。他の人も反応からして来たことはないのだろう。
カロナールは宣伝文句にもなってるように水と陶器で有名だ。王都マイセンの近くにある山から湧き出す湧き水が国の各地に川として流れている。この湧き水がとてもきれいで栄養も豊富だと言われている。この水のおかげで野菜もよく育つらしい。
次に陶器だ。王都に本店を置く「マーセナリー」という店を筆頭に続々と陶器を作る店が増え、今では100店舗を超えるほど陶器の店があるらしい。
なぜそれほどまで増えたのか。それは、この国には陶器の原材料となる岩石がとても多いのだ。しかもとても良質らしい。だから、わざわざ他国からも注文が殺到するのだ。俺も自由時間に寄ってみるとしよう。
「よし、ここからは自由だ。宿は昨日言った場所だ。午後7時までには宿にいてくれ。それじゃあ、解散!」
ひとまず俺は王都を一周することにした。
王都マイセンは白を基調とした建物が多い。ちなみになぜ白い建物ばかりなのかは知らない。だが、これは前世からあった風習だ。それが今も残っているのは嬉しい気もする。
「うわぁーー!すっごくきれいだね!」
「建物の白色がよく映えているわ」
「……きれい」
なぜか当然のようにこの3人がいるんだけど。まあ、別に嫌じゃないからいいけど。
俺たちは王都を周りながら、色々な店に入った。
3人は陶器や服、武器屋などでさまざまなものを買っていた。俺は「マーセナリー」で陶器を買った。やはり質がいいな。
俺たちが王都を一周する頃には、時間は午後になっていた。俺は用事があるので、3人と別れて王城へ向かった。
用事というのはカロナールの国王に挨拶に行くことだ。もちろんこれは理事長に頼まれたことである。
カロナール王国とレルフランド王国は友好的な関係にある。なんせ、国王同士の仲がいい。
俺が一緒に行くのは、カロナールの国王に呼ばれたらしい。どうやら、うちの国王が会うたびに俺の話をするので興味を持ったらしい。
俺は王城前で理事長と合流し、王室へと向かう。
王室に入ると、数名の騎士らしき人と玉座に王が座っていた。
「やあ、君たちが冒険者学校理事長のガノス=アーゲルハイツとその生徒、リース=グレイアスだね」
「はい、間違いありません」
「よく来てくれた。私がこの国の王、マルス=カロナールだ。」
ふむ、やはりそうか。
「すみませんが、あなた国王じゃありませんね」
「なっ!?」
「貴様!何を申しておる!」
兵士が一斉に武器を構える。
「そう思う根拠はなんだ?」
「魔力反応が違うからです。この国に着いた時、王都全体の魔力反応を調べました。その時の国王の魔力反応とあなたの魔力反応が違います。だから、別人だと思ったんです」
「ほう、なるほど。ならば、本物の国王はどこにいるというのだ?」
「そうですねー。そこの甲冑を着ている兵士とかそうじゃないですか?」
俺は数名の兵士の中の1人である甲冑を着た兵士を指した。
「ふっふっふ。あはははは。さすが、あやつの認めたものじゃ」
そう言って、甲冑を脱ぎ始めた。
「ま、まさか……」
「その通り、儂がこの国の王、マルス=カロナールだ」