第58話 まずい状況
午後の最初の種目、「玉入れ」が始まった。
玉入れのルールを聞く限り、これは魔法の使いようがないな。自分で狙いを定めて、玉を投げるしかない。
俺は応援を頑張った。だが、俺たちのクラスは最下位だった。これに関しては仕方がないな。次の種目を頑張ってもらおう。
ところが、次の「二人三脚」や「借り物競走」、「障害物競走」でも下位続きだった。
別に俺たちのクラスが弱かったわけではない。他のクラスが強かったのだ。
俺はここで一つの仮説を立てた。
もしかしたら、俺やステラ、レイナ、ミルが出場しそうな種目を読まれていたんじゃないか?
俺たちが優勝を狙ってくることは分かっていたのだろう。だから、点数の高い種目に俺たちを出場させることも。
他のクラスは俺たちが出場しそうな種目にあまり強くない生徒を出場させて、俺たちが出場しなさそうな種目に主力を出場させたのではないかということだ。
俺たちの実力は他のクラスにも当然伝わっていると思うので、俺たちの誰かと当たれば負けることは必須と考えていたんだろうな。
これはまずいぞ。午後の種目は一つ一つは点数が低くても、総合すればそこそこの点数になる。この様子だと、最後の種目である「選抜リレー」で優勝するクラスが決まりそうだな。
俺の予想通り、各クラスの点数はほぼ互角となった。
優勝するなら、「選抜リレー」で1位になることが必須だ。
俺たちのクラスの選抜は俺、ステラ、レイナ、ミル、メルトの5人だ。ミル以外の4人は貴族学園と戦った時のメンバーだ。なんだか懐かしいな。
「絶対勝とうね!」
ステラが微笑む。
「ああ、もちろんだ!」
とうとう最終決戦のリレーが始まろうとしていた。
リレーは一人100メートルを走る。出走順はミル、レイナ、メルト、ステラ、俺だ。
最初のミルで、ある程度差をつけて他全員で逃げ切ろうという作戦だ。だから、この作戦の一番の肝はミルなのだが、様子がおかしい。緊張でもしてるのかと思って、声をかける。
「ミル、どうした?」
「……どうしよう、リース。お腹痛い」
まじか!それはやばいぞ。腹が痛いと、しっかり走れないじゃないか。これじゃあ、当初の作戦が使えなくなってしまう。だが、ミルを責めることもできない。俺たちでなんとかするしかないか。
「ミル、悪いが選手の変更はできない。だから、無理をしない程度に走ってくれればいい。あとは俺たちに任せろ」
「……ごめん、ありがとう」
俺は他のみんなにもこのことを伝えて、アンカーの位置に戻った。あとはみんなを信じるのみだ。泣いても笑っても、これで決着がつく。
そして、とうとうリレーが始まった。
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