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第57話 想定外の訪問



 「綱引き」は惜しくも2位だった。だが、まだ優勝は充分に狙える。次も応援を頑張るとしよう。


 その前にお昼休憩だ。腹が減っては戦は出来ぬというやつだ。しっかり腹ごしらえをしよう。


 俺はクラスのみんなと弁当を食べることになった。いつもは3人と食べているので、少し賑やかな気もするが、こういうのもたまには悪くない。


 そう思っていると、見知った魔力が後者の裏にあることに気がついた。どうしてこんなところにいるのだろう。ひとまず行ってみることにした。



 校舎の裏に行くと、そこにはレルフランド王国王女クレアの姿があった。


「そんなところで何をやってるんですか?」


「きゃあっ!リ、リース様……お久しぶりです」


 彼女は下を向きながら、挨拶をする。というか、俺が来ていることに気づいてなかったのか。


「ええ、久しぶりです。で、何をやってるんですか?」


「じ、実は今日、体育祭をやっていると聞きまして……その、お弁当を……」


 そう言って、彼女は何重にも重なった重箱を出した。これをわざわざ持ってきたのか。


 ふと彼女の手を見ると、絆創膏が何箇所か貼ってあった。もしかして王女様が作ったのか?


「これ、もしかして王女様が?」


「は、はい。そうです。教えてもらいながら作ったので、味は美味しいと思うのですが、その、見た目が……」


 これを聞いて俺は重箱の一番上を開けてみる。

 すると、そこには形の崩れた玉子焼きやおそらくタコの形をしてるであろうウインナーなどが入っていた。


「わ、私が作ったのは一番上の箱だけですので、もし気に入らなければ、これは私が責任持って食べるので、それ以外の箱を食べていただけたら……」


 王女というのは普段料理などはやらないだろう。それをわざわざ習ってまで作ってくれたのだ。...食べないわけがないだろう。


「無礼を承知で言いますけど、王女様はバカですか?」


「え?い、今なんて……?」


「王女様はバカなのかと言ったのです。そんな手をしてまで作ってくれた弁当を食べないわけがないでしょう。ありがたく食べさせていただきます」


 彼女は急いで両手を隠す。もう遅いんだけどな。



 俺は玉子焼きを頬張る。たしかに味は美味しい。だが、中が少し生焼けだった。


「どう?」


「うん!おいしいです!」


 俺は生焼けのことは伏せておいた。嘘は言ってない。味は美味しいからな。


「よかったーー!!」


 彼女はとても笑顔で喜んでいる。少し悪い気もするが、今はこのままでいいだろう。


「ありがとうございます、王女様」


 俺はお礼を言ったのだが、彼女は少しムスッとした顔になった。


「敬語はやめてください。それと……名前で呼んでくれると嬉しいです」


 なんだ、また何かやらかしてしまったのかと。それならお安い御用だ。


「ありがとな、クレア」


 俺がそう言った瞬間、彼女はまた下を向いてしまった。うーん、自分で言ってたから嫌がってはないと思うんだけどな。俺も反応に困る。


 俺がそんなことを考えていると、彼女はスッと立ち上がり、


「で、では私はこれで失礼します。午後からも頑張ってください。それでは!」


 そう言って彼女は帰ってしまった。


 午後からでも見ていけばいいのに。まあ、王女なだけあって忙しいのだろう。


 俺はみんなの元に戻って、クレアにもらった重箱の他の箱をみんなにも分けてあげた。さすがに1人では食べきれないからな。


 みんなにはとても好評だった。重箱を返すときにクレアに言ってあげよう。まあ、肝心のクレアが作った箱は俺が全部食べたのだがな。


 そんなこんなでお昼休憩も終わり、午後の最初の種目、「玉入れ」が始まろうとしていた。


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