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第54話 神器との対話

今回は少し長くなっています。



 ん……。ここはどこだ?


 俺はどこを見ても真っ白な世界にいた。

 何もない、どこまでも続く白い世界。

 少し不気味な気もした。


 俺が周りを見渡していると、


「ねえ、君」


 誰かに呼ばれた。


「こっちだよ、こっち」


「いやいや、こっちだよ」


 俺はどうやら二人に呼ばれているみたいだ。


「……悪いが、一人ずつ話してくれ。二人同時はさすがに厳しい」


「ごめんね、それは無理なんだー」


「うんうん、僕たちは二人で一つ。別々には、なれないんだよ」


 二人で一つ?どういうことだ?


 少し考えて、一つの結論に至った。


「お前ら、『クロス・イグニス』か?」


「そのとおり〜〜〜」


「だいせいかーーい」


 どうやら当たってたみたいだ。だが、なんだこの状況は。


 前世でも俺は『クロス・イグニス』を持っていたが、こんなことは一度もなかった。何か理由があるのだろうか。


「なあ、なんで俺をここに呼んだんだ?」


「別に呼んだわけじゃないよ」


「君が神器に近づいたから、ここに来ちゃったんだ」


「神器に近づく?」


 どういうことだ?わけが分からない。


「気をつけないと、よくない事が起きるかもよ」


「あと、人工神器も危険だよ。しっかり見ておかないと、取り返しのつかないことになるかもよ」


「それってどういう……!?」


 急に目の前が歪んできた。


「残念だけど、もうお別れだね」


「また会えるかもね。その時はよろしく。ーーー君」


「お前、俺の名前を」


 俺は意識を失った。

 あいつがあの時言った名前は、前世の俺の名前だ。やはり、あいつらは俺を知ってるみたいだな。



「彼、頑張ってるみたいだね。」


「そんなことくらい分かってるよ。何年の付き合いだと思ってるの」


「それもそうだね。でも、だからこそ彼には()()()()()()()なってほしくないな」


「どう思おうと、僕たちには口出しはできない。だから、今は彼に力を貸すだけだよ」


「うん、そうだね」



「ん……。んん」


 俺は目を覚ました。どうやらベッドに運ばれたようだ。


 それにしても、さっきのは何だったんだろう。俺はなぜあの世界に行ったのか。あいつらが言ってた言葉の意味は。

分からないことだらけだ。また、調べてみるか。


 そんなことを考えていると、誰かが部屋に入ってきた。

それは王女、クレアだった。


「リース様っ!目覚めたのですね!……よかった」


 クレアは泣いていた。そこまで致命的なダメージは負ってなかったんだがな。倒れたのも、魔力が著しく無くなってただけだし。


「あのー、王女様?別に命に関わるほどの傷でもなかったと思うんですけど……」


「何をおっしゃってるんですか!リース様は少しの間ですが、呼吸をしてなかったんですよ!命に関わります!」


 まじか。魔力の欠乏ぐらいでそんなこと起きたっけな?

まあ、偶然かもしれないけど。 もしかすると、神器のことと関係があるのかもしれない。


 クレアの声が聞こえたのか、ステラ、レイナ、ミルもやってきた。


「リースくん!大丈夫!?」


「良かった、本当に良かった……!」


「……心配した」


「ごめんな、心配かけて。もう大丈夫だよ」


 俺たちが集まったところでクレアが口を開いた。


「みなさん、この度は私と父を救っていただき、本当にありがとうございました。この恩は絶対に返させてもらいます」


「大丈夫ですよ。当然のことをしたまでです」


「またいつでも頼ってください」


「……私たちならいつだって力を貸す」


「……ありがとう、ございます」


 クレアはさらに泣いてしまった。よほど辛かったし、嬉しかったんだろう。


 俺は立ち上がり、クレアの頭を撫でて、


「大丈夫だから気にしなくていいよ。辛かったら、いつでも言ってきな」


 俺がそう言うと、クレアは下を向いてしまった。三人の方を見ると、なぜか全員呆れた顔をしていた。


「ほんと、リースくんは……」


「そういうことを平気でやるのがダメなところね」


「……ずるい」


 俺は何かやってしまったんだろうか。女の子を慰めるのなら、これが一番いいと前世で聞いたことがあるのだが。


 クレアは下を向いたまま、部屋を出ていってしまったので、俺たちは国王に挨拶をしに行った。


 国王もとても感謝していた。褒美をくれると言っていたのだが、特に欲しいものはなかったので、また後日ということにした。


 俺たちは学校の寮に戻った。それにしても今日は充実した一日だったな。明日はゆっくり休もう。


 そう決めた俺は部屋で眠りについた。


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