第4話 父との対決
「よし、それじゃあ始めるぞ」
「うん、準備は万端だよ」
俺と父さんは互いに確認をとる。
「二人とも準備はいいね。それでは始めっ!」
俺は『身体能力強化』をかけて先ほどと同様に距離を詰める。だが、父さんは動かずにどっしりと構えている。その意図に気づいた俺は一旦距離をとる。
「ほぅ、あれを見抜くか」
今、父さんがやろうとしたのは典型的なカウンターだ。さっきの試合で俺が速攻を仕掛けることが分かった上での戦法だろう。さすがと言うべきだ。
それなら戦法を少し変えよう。
俺は歩いて距離を詰める。父さんは不思議そうに見つめる。だが、型は崩さない。そしておそらく何もないと踏んだ父さんは鋭い突きを放つ。
だが突きが当たった瞬間俺は靄のように消える。
「なっ!?」
その隙に本物の俺はすでに後ろにいて、防御しようとする父さんの槍を弾き飛ばす。そして槍を失い、完全に無防備になった父さんは、
「参った、俺の負けだ」
と負けを認めた。
今回も順調に俺は勝った。
「なあ、リース。お前は一体何をしたんだ?」
「僕も知りたいな」
「えーとね、速攻じゃ勝てないと思ったから、『残像』って魔法で分身を作って、分身に父さんが気を取られてる内に後ろに回ったんだ」
「でも、気配を全く感じなかったぞ?」
「『気配遮断』って魔法を使ったからね」
『残像』と言う魔法は前世に俺が編み出した魔法だ。その名の通り、魔法を使う前の俺を一定時間映し出すという魔法だ。これで俺がその場にいると思わせたのだ。
「凄すぎるぞ。これはもう教えることなんてない気がする」
まあ、俺としては今の大人の実力が見れればそれで良かったからな。
「分かったよ。また何か聞きたいことがある時は聞くね」
俺はその日の修行を終えた。どうやら俺は教わることがないらしい。明日からは魔物狩りをすることにしよう。
こうして俺は魔物狩りや日々の魔力操作で力をつけた。
そしてあっという間に5年という月日が過ぎた。