第37話 最強の階層主
俺たちはこの迷宮の最下層まで一気に落ちた。
地面につく寸前で風魔法を発動し、落下の勢いを軽減した。
「ふーっ、一瞬だったな」
俺の言葉に返答がないので、後ろを振り返ると3人ともなぜか汗をかいていた。
「どうした?なんかあったか?」
「直通の通路って言うから、着地はもっと安全かと思ったじゃん!危うく地面と衝突するかと思ったよ!」
「そうよ!びっくりしたじゃない!」
「……怖かった」
いや、落下するより魔物と戦うことの方が怖いと思うがな。まあ、それは人それぞれか。
「すまんすまん。これからは気をつけるよ」
「もう、気をつけてね!」
俺たちは先へと進んだ。
◇
「……見えた。あれが階層主の部屋だ」
俺たちは最後の部屋に来ていた。ここを突破すれば神器のある部屋に入ることができる。
「みんな、さっき言った通り今回は防御魔法を張ってじっと見ててくれ。俺が倒す」
「うん、分かったよ」
「任せたわよ」
「……絶対勝ってね」
「ああ、任しとけ」
俺たちは部屋に入った。
扉が勝手に閉まる。みんなには外で待っててもらっても良かったのだが、最後の部屋だけは、階層主に勝った時に部屋にいた人しか次の部屋に進めない。だから、入ってもらう必要があった。
そうこうしていると、最後の階層主が現れた。
そいつは前世ではトワイライト・フェンリルと呼ばれていた。光を纏った狼のような魔物だ。
俺はこいつと前世で戦ったことがあるが、こいつの強いところは、なんといってもその速さだ。
全速力で走ると、光の速さと同じぐらいになると言われていた。まあ、前世では瞬殺したがな。
こいつは今の俺にとってなかなかの強敵となるだろうが、しっかり対策はしているので手こずることはないだろう。
奴はしっかりと俺の方を見ている。まるで、今からお前に襲いかかるから、何か仕掛けてこいと言っているみたいだ。
俺はその間に、ある魔法を展開しておく。これで俺の勝利は確定した。
数秒が経ったとき、しびれを切らしたのかトワイライト・フェンリルは俺めがけて、爪で攻撃を繰り出してきた。
それは俺に当たるーーと思われたが、その攻撃は見事に俺の手前で弾かれ、あろうことか奴にダメージが入っていた。
奴は困惑しているみたいだ。まあ、そうだろうな。
なんせ俺に向けた攻撃が自分に跳ね返ってきたんだからな。
俺は顔に笑みを浮かべた。




