第32話 神器の威力
二十階層目の最後の部屋の前まで来た。
この迷宮の二十階層の階層主は今までと比べ物にならないくらい強い。前世でも、ここでやられた冒険者は多い。
「みんな、気をつけろよ。ここの階層主は今までと一味違うぞ」
「う、うん。分かったよ」
「了解したわ」
「……任せて」
みんなに注意を促した後、部屋に入る。
部屋を見ると、次の階層へ続く階段の前に大きな石のようなものが置いてある。
「何だろう、あの石」
「随分と大きいわね」
「斬ろうか?」
「いや、あれは石じゃない。あれが階層主だ」
そう言った瞬間、石のようなものが音を大きく立てて動き出す。
「な、何あれ……」
ステラが驚くのも無理はない。
そこにはさっきまでそこにあった石が変形したゴーレムがいた。
「あれが二十階層の階層主、フルメタルゴーレムだ」
フルメタルゴーレムはとにかく硬い。物理攻撃も魔法攻撃もあまり効かない。その上、動きは遅いが攻撃力が高い。
大分強い魔物だ。その代わり、あいつの体である鉱石はとても質が良い。是非とも欲しいところである。
あいつにダメージを与える方法は何個かあるが、今は俺かミルの神器が一番良いだろう。
「みんな、聞いてくれ。あいつは耐久力が異常だ。だから、俺とミルの攻撃を主体に攻めていく。2人は魔法で援護を頼む」
「分かったよ!」
「任せて!」
「……了解」
よし、みんなに意思は伝わったな。なら、俺は自分の役目を果たすだけだ。
俺は神器に魔力を流す。こいつの力の見せ所だな。
「輝く斬撃!」
ミルは攻撃を始めている。俺もいくか。
白い剣が青い炎を纏っている。そして黒い剣からは赤い炎が出ている。
「十字の炎!」
二つの炎が重なり、ゴーレムに当たる。炎が当たった箇所が溶けて、腕が落ちる。
なかなかいい出力だな。
「す、すごい……!」
「デカすぎるでしょ!」
「暑い……」
うーん、このままだとみんなにも被害が出そうだな。
「みんな、一回下がってくれ!俺が倒す!」
そう言うと、みんな一歩引いてくれた。自分で言った以上、しっかり倒さないとな。
俺は高く飛び上がり、魔力を込める。
「氷獄の双撃!」
今度は氷の攻撃でゴーレムを冷やす。
そしてまた炎の攻撃を当てる。次は氷と交互にダメージを与える。それを何回か繰り返したところで、俺は今回最大の攻撃を繰り出す。
「エンチャント、スラッシュ」
これは剣の攻撃力を上げる魔法だ。さらに神器から炎と氷を纏わせる。
そしてゴーレムに向かって剣を振るう。
斬撃がゴーレムに直撃し、ゴーレムが完全に動かなくなった。
討伐完了だ。




