第16話 編入生と人工神器【三】
ミルはまさかの神器の持ち主だった。
神器持ちは相当強い。だから俺は少々本気を出すことにした。
「エンチャント、インフェルノ」
剣に真っ赤な炎が宿る。
「へえ、そんなことが出来るんだ。なら、こっちも全力だよ!」
彼女の剣が光る。
「輝く斬撃!」
俺はその一撃を受け流し、『炎弾』を撃つ。
「はぁぁぁ!」
彼女はそれを斬り、さらに攻撃を仕掛ける。
「浄化の光!」
俺は後ろに下がるが、彼女はどんどん攻めてくる。
(これじゃ無理か……)
俺は魔法を放つ。
すると、ミルの足元から巨大な竜巻が巻き起こる。
「きゃあ!」
彼女は竜巻に飲まれるが、すぐに魔法を斬り裂く。
だが、その間に俺の準備は整った。
「さすがだね、リース。でも、負ける気は無いよ」
「ああ、俺も同じだ」
そして俺はある魔法を発動する。
「な、何だそれは!?」
彼女が驚くのも無理はない。なんせ俺の剣が先ほどまでの赤い炎ではなく、真っ黒な炎を纏っているのだからな。
さらに剣の魔力や性能も段違いに上がっている。それは最早神器に引けを取らないくらいに。
「早く勝負をつけないとやばそうだね」
彼女はそう言い、おそらく今までで最強の攻撃を放ってきた。
「神聖剣!」
俺はその攻撃を真正面から叩き斬る。
「そんなっ……」
「俺の勝ちだ」
そして俺は彼女の後頭部を殴り、気絶させる。
こうして俺とミルの戦いは俺の勝ちで幕を閉じた。
◇
俺は目覚めたミルと話をする。
「ミル、お前神器持ってたんだな」
「うん、でもこれは本物の神器じゃ無いの。人工的に作られた神器なんだ」
「な、そうなのか!?神器って人工的に作れるのか?」
「うん、今はそういう研究をしてるみたい。私はその研究に協力してるんだ」
「だから、俺に戦いを挑んだのか」
「そう、データが欲しいらしい。でも、私も詳しくは知らないの」
「そうなのか」
人工的に神器を作ろうとする奴らがいるのか。そいつらのことも調べといた方が良さそうだな。
「ねえ、リース。最後のは何をしたの?」
「ああ、あれは擬似的な神器を作ったんだ。魔法で色々剣に付与してな」
俺があの時剣に付与したのは『煉獄』と『神化』という魔法だ。
両方とも剣の威力を上げるための魔法で、今回作った魔法だ。神器に勝つには神器と同等の性能を持つものを作れば良い。そういう発想だ。
「そんなことが出来るんだ。強いね、リース」
「だけど、一つ弊害があってな。強い力が得られる代わりに剣がぶっ壊れる」
そう言って、刀身のない剣を見せる。
「なるほど、なら新しい剣が必要だね」
「ああ、それには心当たりがある」
そろそろ俺も取りに行くか。神器を。