第112話 断罪の刻
王城を襲ったのは、俺の転生仲間である藍澤真斗だった。彼の目的は俺の抹殺だ。天使の命に背いた俺を真斗は許さない。
俺が何故命に背いたのかも知らずに。
「俺を殺しにきたのも天使様の命とやらか?」
「ああ、そうだ。天使様は今、この世界に降り立とうとしている。どうにかして、その前にお前を殺さなくては合わせる顔がない」
「なっ!?天使がここに……?」
「既に準備は整っている。あとは時間の問題だ。お前は俺に勝ったとしても、あとで天使様に殺されるんだ。大人しく俺に殺されておけ」
「誰が死ぬもんか」
「安心しろ。俺の『滅剣リオン』の前では不死身のお前とて消え去る。楽に死ねるぞ」
俺は転生してきた頃、真斗と組んで色々と活動をしていた。そのため何となくだが、真斗の手の内は知っている。
真斗は基本魔法は撃たない。『滅剣リオン』のみで戦うスタイルだ。ちなみにこの『滅剣リオン』は真斗が天使からもらった神器で、どんなものでも斬ることができる能力付きだ。
俺はロスト・イグニスを構える。どんなものでも斬れるリオンでも斬れないものがある。それが神器と神器による攻撃だ。要するに、神器がリオンの唯一の対抗策だ。
「いくぞ、ツカサ」
「来い!」
真斗のリオンが妖しく光り、目の前を斬り裂く。すると空間が裂けて、真斗はその中へと消える。
俺はすぐさま周りを警戒し、魔力反応を探知する。今は真斗の魔力反応は感じられない。だが、奴が戻ってくる瞬間に必ず魔力反応があるはず。その一瞬を逃さないために集中する。
……来たッッ!!俺の右斜め後方に魔力反応を感じ、上半身を回転させてその場所を斬る。
が、そこには空間の裂け目があるだけで、真斗はいなかった。
「ふふッ、お前なら探知してくれると思ってたよ」
俺の後ろから真斗の声がした。それとほぼ同時に背中に激痛が走る。俺はまんまと真斗の策に嵌ってしまったらしい。
「ぐッ……!」
「残念だったな。まあ、俺も成長してるってことだ。空間を同時に斬ることや片方の魔力反応を調節することくらい造作もない」
「いやー、まんまと騙されたよ。これは俺も本気出すしかないかな」
「ああ、本気で来い。少しは俺を楽しませてくれ」
俺は『絶剣グレイス』を取り出す。最近はこの二刀流が俺のスタイルになってきた。俺はフゥーッと息を吐く。
「絶剣 骸」
全てを喰らう漆黒の斬撃が真斗を襲う。これは神器による攻撃なのでリオンでは斬れない。
「滅技 極閃の一撃!!」
リオンの光がより一層増し、真斗がリオンを振るうと、巨大な光の斬撃が放たれる。その光の斬撃は骸とぶつかり、互いに消滅した。
今の技も俺は見たことがない。やはり昔とは比べ物にならないくらい強くなっている。俺も攻め方を考えないと……。




