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第109話 父の秘密



 俺はヒューズさんを回復させて話を聞こうとする。


「ヒューズさん、ちょっといいですか?」


「な、なにかな……?」


 ヒューズさんは冷静を保っているフリをしているが、声が震えている。少しやりすぎたか?


「なぜあなたは僕の父を目の敵にするんですか?」


「……君の父、エインズはグレイアス家の落ちこぼれなんだ。僕らの家は代々剣士を生業としててね、僕もエインズも剣の稽古をよくさせられたんだ」


 ふむ、グレイアス家は剣を使う家なのか。なら、なぜ父さんは槍を教えていたんだろう。


「僕は稽古の甲斐あってメキメキ上達してね。でもエインズは全然ダメだった。どれだけ努力しても剣の実力は上がらなかった。そして、ついに剣を使うことを諦めて槍を使い始めたんだ。それに僕らの父、つまり君の祖父にあたる人が怒ってエインズを勘当したんだ。あれはエインズが17の頃だったかな」


 そういえば父さんから昔の話を聞いたことなかったな。そういう事情があったのか。


「なるほど、事情は分かりました。それは僕も知らなかったです。いい話が聞けました」


 これでようやく父さんが俺たちに槍を教えている理由がわかった。これは紛れもなくヒューズさんのおかげだ。


 俺はヒューズさんの真っ二つに折れた蒼い剣を拾い上げ、『範囲記憶修繕』を使って剣を元に戻す。


「これ、すみませんでした。もう直したので大丈夫です」


「あ、ああ、すまないね」


 俺は笑顔で話すが、まだ恐怖は取り除かれていないみたいだ。


「それで僕の疑いは晴れましたか?」


「うーん、まだ少し疑わしいが、約束だしね。ひとまずは君を信じるよ。今度、何かと戦うときは呼んでくれ。君の力を見た後では自信を失うけど、それでも盾くらいにはなれるだろう」


 うん、それはありがたい。盾役ではなくて、純粋に戦力として欲しい。悪魔や天使と戦うには力不足かもしれないけど、この世界では強い部類の人間だ。力にはなってくれるだろう。神器があれば申し分ないのだが。


「ぜひお願いします!盾役ではなくて戦力として!」


「あはは、まあ全力は尽くすよ。グレイアス家に代々伝わるこの剣も今度こそ折れないように鍛え直してね」


「今回はたまたまですよ。そう簡単に剣は折れませんよ」


「それがね、この剣は何回か折れたことがあるんだよ。父も不思議がっていたさ。『こんなこと今までなかった』ってね」


 俺はそれを聞いて、ある事を思い出す。普通のとは少し違う、ある神器のことを。


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