第107話 蒼の騎士
俺は寮に帰ろうとしていた。だが、重要なことを思い出して王城に向かった。
「おぉ、リース殿!!国王がお待ちです!ささ、中はどうぞ!!」
王城に着くと、入り口で番をしている警備兵隊の隊員にすぐさま中に通された。俺はひとまず王室に向かう。
「失礼します」
中には国王とクレア、それと見慣れない蒼い鎧を身に纏った騎士らしき男がいた。
「リース!!無事だったかッッ!!」
「リース様ッッ!!」
「ええ、大丈夫でした。すみません、報告が遅くなって」
「それは構わんが……一体何がどうなったのだ?不死族たちはもう倒したのか?」
「はい、それならもう大丈夫です。ついでに悪魔とかも討伐しましたし」
「なっ、悪魔もいたのか!!??」
「ええ、割と前から」
「き、気づかなかった……」
「衝撃の事実ですね……」
国王とクレアはとても驚いているが、蒼い騎士は顔色一つ変えず冷静なままだ。
「ひとまずこの国の危機は去りました。安心して大丈夫ですよ」
「そうか……。リース、此度もご苦労だった。そなたの働きには非常に助けられておる。感謝するぞ」
「いえ、僕はこの国に住む者として当然のことをしたまでですよ」
俺は本心でそう答える。嘘偽りのない言葉だ。
「本当にそうかな?」
急に蒼い騎士が話に入ってきた。そして今日会ったばかりの俺の言葉を否定する。
「どういうことですか?」
「そうだぞ、ヒューズ。なぜいきなりそのようなことを?」
「いやー、陛下。僕にはどうにも彼が胡散臭く思えてね。だってただの一学生が不死族の軍勢を倒したり、悪魔を倒したり出来るかい?普通は無理だろ?それこそ君が悪魔でもない限り、ね」
ふむ、まあ一理あるな。俺だって昔なら悪魔を倒せる学生がいたらまず身辺調査をする。そしてそいつが何者かを確かめる。普通は用心深くなるものだ。
だが、まあ自分から名乗らないものに名前を聞かれても名乗る気にはならない。人の名前を聞くときはまず自分からが基本だろう。
「人のことを聞くときはまず自分からじゃないですか?」
「うん、それもそうだね。僕は『蒼角の騎士団』団長のヒューズ=グレイアスだ。以後、よろしくね」
ヒューズ=グレイアス……?まさか……?
「ああ、君は僕の甥にあたるのかな?」
「え、ええ多分。俺はリース=グレイアスです。冒険者学校に通う生徒です。よろしくお願いします」
「たしかそうだったね。で、君は一体何者なんだい?」
「え?いや、あなたの甥ですよ。さっきから言ってるじゃないですか」
ヒューズさんは少し意味のわからないことを言っている。しかし、俺はこの人のことをまったく知らなかった。父さんからも聞かされたことはない。
「ふーん、あくまでもシラを切るつもりか……。あいつから君ほどの天才が生まれるなんてないはずなんだけどな」
「あいつ……?」
「ああ、あいつは僕の兄なんだけど、うちの中でも落ちこぼれでね。だからこそ君の存在が不思議なんだよ」
なんかだんだん腹が立ってきた。なぜこんなにも父を目の敵にするのか。分からない。
「うーん、まあいっか。なら、分かった。僕と決闘しよう。もし君が勝てたら、君の話を信じてあげる。ただし負けた時には正直に話してもらうからね」
ヒューズさんは少し考えた後、提案をしてきた。普段なら乗り気はしないが、今回ばかりは特別だ。
「いいですよ、戦いましょう」
「よし、じゃあ移動しようか」
「はい」
俺はヒューズさんはぶちのめすことに決めた。




