第99話 浄化の光輪
俺はロスト・イグニスを手に取った。そして神器の真の力を解放する。
「神器解放」
ロスト・イグニスの真の力はその魔力変換にある。ロスト・イグニスは大気中の魔力だけでなく、相手の魔力ですら吸収して自身の魔力として使うことができる。
不死族は何かの魔力を媒体にして活動している。こいつらの場合、アルフの魔力を媒体にして動いている。ロスト・イグニスはそれでさえも吸収対象とするので全て吸収すれば奴らは一切動かなくなるという寸法だ。
正直、地味な作業だが確実で有効な手なのでそんなの気にしていられない。
だが、そこで思わぬ横槍が入った。
アルフの魔力を失い動かなくなった不死族が再び何者かの魔力を受け取り動き出したのだ。
それはほんの一瞬の出来事だったが、俺はある魔法を使って対応する。この魔法は今と直接的な関係はないが、後々役に立ってくる。
「カタカタカタッッ!!」
「ヴァァァァ!!!!」
元気を取り戻した不死族たちが再び動き出す。ロスト・イグニスは依然と魔力を吸収しているが、何者かが一体の不死族の王を通して延々と魔力を供給しているみたいで一向に止まる気配はない。
「……仕方がないか」
俺は貯めた魔力を全てロスト・イグニスに纏わせ、ある魔法を付与する。その魔法とは『浄化の光輪』という魔法だ。この魔法は浄化魔法の中でも最高位に位置する魔法で、どんな不死族でも浄化させることができる。
「いっけぇぇぇ!!!」
俺は魔法を付与したロスト・イグニスを不死族たちのど真ん中に向かって投げる。ロスト・イグニスが地面に刺さった瞬間、その場所を起点に光の輪が広がる。光の輪の中にいた不死族は少し悶えた後に消滅する。
こうして俺は全ての不死族を浄化した。問題は不死族に魔力を供給した奴のことだが、奴は俺をみくびりすぎた。
あとはさっき使った魔法で特定するだけだが、今はそれどころではないらしい。
「ア、アァ……」
自我を失ったアルフがすぐ近くまで来ていた。この数分の間に何があったのかは知らないが、完全に自我を失ってしまってはどうしようも無い。創生魔法にも限界はある。
俺が責任を持って浄化しよう。




