第98話 不死族の軍勢
事の一部始終を見終えたので俺は投影魔法を終了した。
「う、嘘だッッ!あんなこと、あるわけないッッ!!」
アルフは随分狼狽えているみたいだった。まあ、それも無理はない。ずっと信じていたものが色々と覆ったのだからな。結局、アルフは悪魔にいいように使われたという訳だ。
「アルフ、あれが真実なんだ。投影魔法で嘘はつけない」
「そ、それじゃあ、今まで私がしてきたことは……」
俺は黙ってしまう。アルフのしてきた事が全て無駄だったなんて言えるわけがない。本人も分かっているとは思うが、認めることが出来ないのだろう。
「ま、まずい……!」
急にアルフが声を上げた。何かに気づいたようだ。
「どうした?」
「す、すまない……。私は勘違いをしていたんだ。てっきりレルフランド家が裏切ったと思って……」
「わ、私は誤解が解けたならそれで良いのですが……」
「違うんだ……!いや、それもそうなのだが、私は取り返しのつかないことを……」
アルフは歯切れの悪い返事しかしない。しびれを切らした俺は王都の周りを探知魔法・改で調べてみる。
そして俺は王都から西に数キロの地点に大量の魔力反応を見つけた。この魔力は不死族の魔力だ。……やってくれたな。
「クレア!今すぐ王国に戻るぞ!!」
「え?ど、どうしたんですか?」
「今レルフランド王国に不死族の軍勢が向かっている!このままだと奴らは今日中に王国に着くぞ!」
「え!?は、早く、戻らないと!」
俺は王国を目的地に設定して転移魔法を発動する。周りが光に包まれ、その光が消えると俺たちは王城の目の前にいた。どうやら座標のズレなく到着したらしい。
「クレアは国王にこのことを伝えてきてくれ。俺は先に向かっておく」
「分かりました!」
俺は『身体能力強化』や『脚力強化』を使い、全速力で現場に向かった。
◇
現場に到着すると骸骨騎士や屍人、不死族の王など、様々な不死族が数えられないくらいいた。
俺は不死族に有効な浄化魔法を配位魔法を使って範囲を広くして発動する。
「カタ、カタカタカタ!!」
「ヴァァァァ!!!」
効いてはいるみたいだが、数が多すぎて浄化のスピードが奴らの侵攻に追いつかない。このままでは間に合わない上に俺の魔力も尽きてしまう。
策を考えた結果、一つだけ有効と思われる一手を思いついた。
俺はその策を実行するため、ロスト・イグニスを手に取った。




