第95話 本家と分家
「なあ、アルフ。お前、一体何があったんだ?」
「……あれはお前がパーティーを抜けたすぐ後のことだ」
どうやら回想に入るみたいだな。
「私たちはいつも通りクエストをこなしていた。そんなある日、私はこの城に呼ばれた。一応私は皇子だったから王城に呼ばれることは少なくなかった。だが、その日はいつもと様子が違った。国王、つまり私の父が珍しく慌てていたのだ」
俺は『暁の翼』を抜けたらすぐに別の国に向かった。だからこの先のことは全く知らない。バークス王国に一体何が……。
「国王は私に言った。『分家が、レルフランド家の者が裏切った』と。レルフランド家はバークス家の分家だったから、ある程度位の高い職に就かせていた。それが私たちにとって仇となった。貴様らの反逆のせいで我が王国は滅んだのだ……!!」
なるほど……。一応筋は通っている。だが……
「具体的な裏切りの内容は?レルフランド家は裏切ってお前たちに何をしたんだ?」
「こいつらは禁忌を侵した。悪魔の召喚という禁忌をなッッ!!」
「えっ!?そ、そんな……」
クレアはとても驚いているみたいだ。それも無理もない。自分の先祖が禁忌を侵したのだからな。
「そんなはずありませんッッ!!第一、あなたなんかの言うことを信じる訳ないでしょッッ!!」
クレアの感情が爆発している。彼女のこんな姿は初めて見た。もし本当だとしても信じたくないのだろう。
「はぁー、これだから世間知らずのお嬢様は困る……。私はこの目で見たのだ。レルフランド家の者が悪魔を使役する姿をな。私は父に逃げるように命じられたさ。悪魔の姿を前にして情けなく怯えてしまったからな」
たしかに話の信憑性は高い。なんせ実際に見ているのだからな。悪魔……か。
「その後、私は逃げて逃げて逃げ回ったよ。あの時の恐怖は今でも思い出せる。そして私はバークス王国からずっと西に行ったところにある山の洞窟に篭ったよ。その間は何もしなかった。食べることも寝ることも。とうとう力も尽きてきていよいよ死ぬと感じた時、どこからともなく声が聞こえてきた」
最初は苦い表情で話していたアルフが急に気味の悪い笑顔になる。
「その声は私に言った。『死を恐れぬのか?』と。私は『怖いさ。だけどそれよりも怖いものに出会ってしまった』そう話した。すると声は『ならその怖いものに君もなればいい。そしたら恐怖はなくなる』と言った。『あんなのになれるほど強くないさ』私がそう言うと、『私なら出来る。君に力を授けることが出来る。さあ、どうする?』声は問いかけた。
あとは想像出来るだろう?」
アルフはその声の主の問いに答えたんだろう。そして不死の大魔術師となった。
「リース様……」
クレアが涙目で俺の方を見る。ここは俺が一肌脱ぐとするか。
「なあ、その話が本当かどうか確かめてみないか?」




