タロット史 アルカナの概略
小説やゲームでよく聞くアルカナ。
タロットカードで使う事は知っていても、その本質や意味を知っている人はそう多くは無いでしょう。
私も同じ気持ちなので、適当にまとめさせていただき、大雑把ながらこの機会に知っていただこうと思い、概略を書くことにしました。
■タロットの基礎知識――
タロットとは遊戯や占いで使用されるカードの事で、【大アルカナ22枚】と【小アルカナ56枚】の【合計78枚】で一組のことを指す。
一般には、小アルカナよりも大アルカナの方が知名度が高いため、タロットと言われると大アルカナのみを指す場合が多い。
そもそも【アルカナ】とは、ラテン語で「arcanum=アルカーヌム」の複数形arcanaであり、「机の引き出し」の意味から、引き出しに「隠されたもの」を指し、さらに転じて「秘密」「神秘」などの意味になったと言われている。
いわゆる現在の「マルセイユ版」とほぼ同じ図像、絵柄が確立したのは、"1650年頃"のパリで発行された【ジャン・ノブレ】という人物が作った「ジャン・ノブレ版」が最初で、これが遡りうる限りでのマルセイユ版の元祖と言われている。
この「マルセイユ版」や「ジャン・ノブレ版」、のちに出てくる「エッティラ版」や「ウェイト版」というのは、絵柄や大アルカナの順番、思想や占いとしての使用法の違いなどから生まれた派生したタロットカードのことである。
簡単に説明すれば「日本語」みたいなもので、地方や国、時代が違う事で様々な訛りや文化が加わり、多種多様な方言が生まれたということだ。
どの方言も日本語ではない! とは言わない様に、その時代や人によって創られたモノを「○○版」と呼んで分かりやすく区別しているだけだ。
なので、どれもタロットカードであり、使用法や中身、見た目がそれぞれ違うのが特徴だ。
その中で、最も有名にしてオーソドックスなのが、「マルセイユ版」と呼ばれるモノだ。
この「マルセイユ版タロット」が流行った当時、フランス革命前後で不安定な社会を背景に、【占い師エッティラ】という人物がタロットを占いと紐づけたことで、タロットを神秘的な目でみる風潮が広まり、現在まで多用されていったと言われている。
その結果、エッティラはタロット占いに初めて「逆位置」という解読法を加えた他、小アルカナの4スート(※スートについては後述)に四大元素を当てはめたり、タロットと占星術を具体的に結びつけ、大アルカナから3枚を除いた19枚に、7惑星や12星座との関連を与え、「机上の占星術」という新たな一面を生み出した。
これらのタロット大革命により、エッティラは事実上、現代につながる神秘主義系タロットの開祖となった。
"1854年"のフランスでは、【エリファス・レヴィ】という人物が『高等魔術の教義と儀式』を著し、タロットとカバラ(ユダヤ神秘主義)との関係を体系化し、その中で大アルカナ22枚とヘブライ文字22文字の対応関係を改めて主張した。
フランスによって刺激を受けた結果、英国でもレヴィのカバラ的解釈を継承する魔術結社「黄金の夜明け団」が生まれた。
タロット史の第二の革命は、"1800年代終わり"に【アーサー・エドワード・ウェイト】という人物が「黄金の夜明け団」の解釈を元にデザインした「ウェイト版タロット」(別名:「ライダー版」)である。
このデッキは単調な数札であった小アルカナすべてに絵柄を与えるという創作を加えた。
同年代に、【アレイスター・クロウリー】という人物がデザインした「トート・タロット」も名作とされている。
タロット史の第三の革命は、"1972年"、英国の「アルフレッド・ダグラス版」と呼ばれるタロットの出現である。
このデッキはライダー版(ウェイト版)に準拠しつつも、シンプルで力強い大胆なデザインと原色を基調とした鮮やかな色彩で人気を博した。
これより以前、エッティラの昔から、一家言をもった神秘家たちが各々の自説に基づくオリジナルタロットを出版することはよくあることだったが、現在のように、魔術系タロットのみならず、考えうるあらゆるものをモチーフとし、自由なアイディアを盛り込んだ多くのオリジナルデザインのタロットカードが無数に創作されるようになったのは、この「アルフレッド・ダグラス版」の大ヒットから始まったことである。
■タロットの変遷――
1650年頃:「ジャン・ノブレ版」
【ジャン・ノブレ】によって作られたタロットのことで、最も古いタロットとして知られている。
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16世紀~18世紀:「マルセイユ版タロット」
フランスにある都市マルセイユが当時一大生産地として有名だったため、マルセイユにちなんでつけられた名前。
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1783年~1800年代前半:「エッティラ版タロット」
【占い師エッティラ】によって、占い専用かつ美麗なオリジナルデザインのタロットが生まれ、そこにヘルメス哲学、錬金術、旧約聖書、ヌメロジーなどを取り込んだタロットが誕生した。
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1900年代初頭:「ウェイト版タロット」
【アーサー・エドワード・ウェイト】によって作られたタロットで、「黄金の夜明け団」の解釈を元にデザインされている。主な特徴は、単調な数札であった小アルカナすべてに絵柄を与えるという創作を加えた。
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1972年頃:「アルフレッド・ダグラス版」
■大アルカナと小アルカナ
大アルカナは22枚。小アルカナは56枚。
0 愚者
I 魔術師
II 女教皇
III 女帝
IV 皇帝
V 教皇
VI 恋人
VII 戦車
VIII 正義
IX 隠者
X 運命の輪
XI 力
XII 吊された男
XIII 死神
XIV 節制
XV 悪魔
XVI 塔
XVII 星
XVIII 月
XIX 太陽
XX 審判
XXI 世界
【小アルカナ】はそれぞれ1〜10の数札と、小性(Page)・騎士(Knight)・女王(Queen)・王(King)の人物札の計14枚、そしてそれぞれ以下の四つの組で構成されている。
ワンド(Wand):バトン(Baton)とも。棍棒。トランプのクラブに相当。
ソード(Sword):剣。トランプのスペードに相当。
カップ(Cup):杯または聖杯。トランプのハートに相当。
コイン(Coin):金貨又は護符。トランプのダイヤに相当。
◆引用文献◆
https://ja.wikipedia.org/wiki/タロット
https://ja.wikipedia.org/wiki/大アルカナ
https://ja.wikipedia.org/wiki/小アルカナ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘブライ語
https://ja.wikipedia.org/wiki/ゴーレム
https://ja.wikipedia.org/wiki/生命の樹(旧約聖書)