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ラウンドリム0008

翌朝、宿のベッドにて目覚めたダリュート。

(うむ、揺れぬ寝床にて目覚める朝と言うのも、やはり良いものだ)っと、そんなことを。


昨夜、宿に帰った後は色々とカルチャーショックを受けたダリュート。

魔導具なる代物を目の当たりにした後、少々興奮して寝付きが遅かった。

それにも関わらず、目覚めは何時ものように早かった。


(さて、日課の鍛錬でも行うかね)

そんな事を思いつつ無手での素振りや型稽古を。


暫く続けた後…ふと気付く。

(阿呆か俺は…此処は狭い船の中じゃねぇ。

 広い場所で行やぁ良いじゃねぇか)っと、そんなことを。


船旅の間は寄航した港へ降りることはあっても宿泊施設へ泊まることは無かった。

ダリュートは船の護衛として雇われており、寄港地での船の護衛も仕事であったからだ。

時には夜間に不埒者が船の荷を狙い踏み込むことも。

そのような場合を鑑み、専属護衛であったダリュートは船に留まるのが常であった。


そんな彼が陸地にて宿泊するのは久し振りと言えよう。

いや、野営を含めるならば正しくはないが…

飲料水が尽きそうになり未開の島へと赴き水の探索にて野営したことを、だが。


そのような場合、護衛としてダリュートが必ず付き添い、時には襲い掛かる獣や原住民から船員を守ったものだ。

ふと、そのようなことを思い出し苦笑い。


その後、ベッドに立て掛けておいた愛刀を引っ提げ部屋の外へと。

日が昇り始めたばかりの時間帯であり、宿泊客は夢の中。

宿の従業員が起き出し身支度をし始めたところだ。


そんな中、ダリュートは廊下を歩き階段を下りると宿の中庭へ。

まだ誰も居ない中庭へと辿り着いたダリュートが愛刀を鞘から抜き型稽古へと。


声は出さぬ。

だが、気合の篭った剣戟には恐ろしい程の気迫が篭り恐い程である。

余りの迫力に怯えた小鳥が近くの木から逃げ去る。


(むっ、いかぬな。

 久し振りの陸地ゆえか気が昂っておる。

 小鳥が怯えて逃げる程の剣気を(ほとぼ)させるとは…クッ、未熟な…)


なにやら反省した後、心を整えつつ更に剣を振るう。

剣…いや、刀?それにしては肉厚の鉈とでも…いや鉈にしては長い片刃の刀剣である。

少し剃りがあるようにも感じるが、突いても問題はあるまい。


良く切れそうではあるが、大振りの枝を払うのにも十分耐えうる頑強さも備えているように伺える。

むろん、そのような刀剣であるため重量は察してしかるものであるが…


そんな代物を軽々と扱うダリュート。

この剣はコチラ側へと到った後で手に入れた品である。

しかも3本目となろうか…


以前は薄刃の切れ味の良い代物を愛用していたのだが、やはり耐久性に難があり使い潰してしまうのだ。

そんな中、頑強さに惚れ込み愛用している品である。

まぁ、このような重い刀を片手で容易く扱える者は限られているであろうが…


一頻(ひとしき)り鍛練を行ったダリュートは部屋へと引き上げる。

宿泊客に起き始める者が現れる時間帯となっていたが朝餉には早い時間である。

故にダリュートは部屋へと戻ると着替えの肌着を持って風呂場へと。


この宿の風呂は魔導具により湯を常に取り替えているらしい。

魔導具の詳しい仕様は解らぬが、魔素なる物を水へ替え、不純物こと魔素還元するのだとか。

それにより、常に綺麗な湯が湛えられているとのこと。


(やはり…仕組みがサッパリ解らん)っと首を傾げるダリュート。

とは言え、その絡繰(からくり)のお陰で何時でも風呂へ入れるのは有難いことだ。

まぁ、朝のひと時のみは清掃を行うために封鎖されるそうだが、流石に宿へ留まることはあるまい。


風呂場へと入り衣服を脱衣所の籠へと。

風呂場は昨夜と同様に貸し切り状態である。


この宿では驚いたことに石鹸が備え付けられており自由に扱うことができる。

身を清めるための布は個人持ちではあるが、宿でも販売を行っているそうな。

昨夜、風呂から上がった後に脱衣所の張り紙で知り、今日購入しようと心に決めている。

まぁ、流石に時間が早過ぎて今回の入浴には販売時間が合わずに購入できていないのだが…


此処の風呂の驚く点にはもう1つ。

シャワーなる代物が洗い場へと備え付けられていることである。

使用方法が絵で描かれており、それを頼りに使用したのだが…


(世の中には、このように便利な代物が存在したのだなぁ…)っとシミジミと。

このヘッドと言う無数の穴が開いた代物が付いているノズルという棒。

何処にも繋がっていないにも関わらず、穴から湯が噴出した時には驚きの声を上げたものだ。


これも魔導具であるそうな。

仕組みは湯船と似ており、還元を行わずに湯をノズルヘッドと言う物から噴出す絡繰なのだとか。

髪を洗い泡を流すのに重宝したダリュートは頻りに関心したものである。


(まっこと、魔導具とは…便利な代物よ)そう思いつつ、シャワーのボタンを押しお湯を出す。

湯の温度を調節するスライド摘みと水量を調整するスライド摘みが別に存在する。

それを慎重に調整しつつ扱うダリュート。


なにせ昨夜は扱いが解らずに勢い良く噴出した湯に戸惑ったりもしたのだから…

(あれは温度調節摘みの方でなくて良かったわい。

 下手をすれば、熱湯を被っておったやも知れぬからな)

ダリュートは、そんなことを思っているが、一定の温度より高い湯を出す場合はロックを外さねばならず意図せねば熱湯は出ない。

っと言ってもだ、40度前後以上となる温度の湯が出ることはないのであるが…


風呂を堪能した後で部屋へと戻り出掛ける準備をした後で食堂へと。

既に朝食を終えて旅立った者も居るようだが、朝餉を頂いている宿泊客の姿も。

その中に混じり、ダリュートも朝餉を頂くのであった。

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