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ラウンドリム0007

「このような時間である故、今日は仕事を請けるつもりはないのだが…他にどのような仕事があるのか興味は尽きぬところ。

 済まぬが教えて貰えぬか?」

そう口入屋店主へと尋ねるダリュート。


そんな彼を店主がマジマジと見詰め困ったように。

「いや、ですから…先ほど申したような、ですな…」


「あいや、店主殿、言い方が悪かったようだ。

 私は別に武家者が就く仕事に拘ってはおらぬ。


 故に此処で扱う仕事を色々知っておきたいのだが」


ダリュートが告げると、店主がキョトンとした顔で瞬きした後、呆れたようにダリュートへと。


「いやはや、貴方様のような方は始めてでございますよ。

 武家の誇りと言いましょうか、武家の方が戦場(いくさば)以外に職を求めることは無いと思っておりました…」


「あいや、私は別に武家に生まれた者ではない。

 遠国(おんごく)生まれでな、そこで兵となり生きて来た者だ。

 此処へ到る長旅でも戦いにて、たつきを得てはいた。


 だがな、兵士時代には色々と学んでおるゆえ、多少は(いくさ)以外の心得もあるのだ。

 戦が全てではないのは百も承知、故に仕事は選ばぬつもりだ」

そのように告げるダリュートだが…


「そうは申しましても、流石に合わぬ仕事も御座いますので…」

店主が困ったように告げると心外っと言った感じで

「ぬっ、左様か?」っと。


「はい、例えば食事場の給仕や呼び込みなどは難しいやと。

 商いの店員も厳しいと思われますなぁ」

「そうであろうか?」

告げられて首を傾げるダリュートへ店主が苦笑いして告げる。


「御武家様の体格は御立派で御座います。

 いや、御立派過ぎると言えましょうな。


 故にね大層な威圧感がありまする。

 故に立っておられるだけで用心棒や護衛として成り立ちましょう。

 ですが、それゆえに、人に恐れられ警戒されまする。


 そうなっては客商売では厳しいと言えましょうな。

 物を購入せし者達にとって買いに行く度に怯え警戒しつつの購入など安らぎませぬ。

 そうなると客足も遠のくと言うもの。


 そう鑑みまするに、御武家様には厳しいかと存じまするな」


「むぅ、そんなに私は恐いのかえ?」

困惑して告げるダリュートへ店主が

「そうですなぁ、せめて顔を半分隠されておられる髭を剃られた方がよろしいかと。

 大きな体と顔を覆う髭が威圧感を増されておられますゆえ。


 まぁ、用心棒などされるならば、逆に剃らぬ方が良いと思われまするが…

 少なくとも通常の仕事をお受けになりたいならば、多少は戦人(いくさびと)と違う風に身形を整えなすった方が良いでしょうな」っと。


店主に告げられダリュートは自分の身形を鑑み考える。

故国を追われ多少は身バレし辛くなるように蓄えた髭。

兵士時代では日々剃って身形を整えていたが、髪もザンバラ髪と整えてはいない。

まぁ、身を誤魔化すための処置ではあったのだが…改めて考えてみれば此処は故国から遠く離れた異国の地。

今更、身を誤魔化す必要もないではないか…


「ううむ、今まで船旅であったから故にな。

 確かに身形は整えた方が良かろう」

「清潔にはされてならるようですが、髪と髭は整えられた方が良いでしょうな。

 それと、(いくさ)仕事以外をなさるならば戦装束以外の身形でお願い致したいものです。

 その身形では戦仕事以外を紹介するのは厳しいかと」


「左様か、身形を整えてから来よう」

「そうなすって頂けると」

「うむ、店主殿、出直す」


そう告げ、ダリュートは口入屋を後に。

口入屋へと到ったのが夕方近かったとは言え、口入屋から出ると既に日は暮れていた。

少し出掛ける程度に考えていたのだが、思いの外時間が掛かったようである。


人通りは、それなりにあるが食事時を過ぎる頃合となりつつあるようだ。

(これは些か長居し過ぎたか…)

そう思いつつ旅籠へと。

宿では夕食の準備が既に整っていたようで、帰らぬダリュートに困っていたようだ。


「女将、遅くなり済まぬな。

 ちと、たつきを得るために色々と立ち寄っておったら遅くなってしもうた」

「左様ですか…

 それはそれは、お疲れ様で御座います。

 夕餉の仕度が整っておりますよ、お席へどうぞ」

女将が告げると使用人が案内を。


夕食は魚の塩焼きと卵焼き、香の物と飯に味噌汁となっている。

魚は白身魚であり、大振りの魚の半身ではあるが十分過ぎる程の量があると言えよう。


飯は米と言う穀物を炊くと言う技法で仕上げた代物で、コチラ側でも此処、ラウンドラム地方へ到ってから出されるようになった物。

初めて出された時には戸惑ったものだが、何度も食べたダリュートに戸惑いはない。

初めは味が無い粒状の代物に戸惑ったものだが…

「うむ、この焼き魚は美味い、実に魚と合うな」っと。

今では惣菜と合わせて食べることで淡白な味が惣菜の味を受け止め…

(慣れれば、これはこれで良いものだ)っと。


そう思いつつ味わいつつ完食。

「馳走になった、満足だ」

そう言いおいて部屋へと。


その後、着替えと布を持参しつつ風呂場へと。

宿の客は既に風呂を終えているのか、風呂場に人影はない。

船では風呂などと言う贅沢はできず、布で身を拭って身を整える程度であった。

久々の風呂と言うことで、存分に堪能するダリュート。

(さて、明日は身支度なども整えねばならぬ。

 早めに休むかね)

風呂を終えたダリュートは、そんなことを思い部屋と戻るのであった。

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