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ラウンドリム0006

「宿の女将に猟師護衛の仕事があると紹介されたと言われていましたが…生憎、ここには、その仕事はありません」

「どう言うことだ?」

困り顔で告げるカナールへダリュートが困惑して尋ねる。


「確かに狩猟斡旋所で武家の方に護衛依頼を行うことはあります」

「では、なぜ?」

「それは、この近辺には護衛が必要な危険生物が現れる狩場がないからなのです」


カナールが語るには…

此処よりも北や東に行けば危険な生き物が生息する地域があるとのこと。

また、場所によれば危険生物の住まう地域もあるのだとか。


そのような場所に設けられた狩猟斡旋所では猟師の身を守るために武家へ護衛依頼を行うこともあるそうな。

だが、この辺りでは武家の護衛が必要なほどに危険な生き物は存在しておらず、武家の護衛依頼はないという。


「狩猟斡旋所は元々は猟師達が集まる集会所が元となってできた場なのです。

 ただ猟師は無愛想で人付き合いが苦手と言う方が多い。

 なので商人や仲買の方々と交渉する仲介を担う者が管理しています。


 まぁ、大半が猟師の身内ですがね。

 かく言う私も猟師の3男坊だったりしますけど」っとニコヤカに告げるカナール。


「ふむ、猟師の互助組合のような場所…そういうことかね?」

「そうですね、そう捉えて頂いて結構ですよ。

 そういう訳で、此処では御武家様へ依頼するような案件は、今の所ありませんね。

 ただ、他の場所へ行った場合での仲介書くらいらな出せますけど」

「ほぅ、それは簡単に頂ける物なのかね?」


見知らぬ者へ安易に仲介書を発行するなど、普通はありえないと思われるのだが?


「むろん、無条件にお出しする訳にはいきません。

 口入屋などからの紹介状などを持参して頂くか、猟師の狩へ同行して人となりを確認できた場合ですね。

 まずは口入屋で仕事を斡旋して頂いてみては如何?」


まぁ、他にも信頼の置ける筋からの紹介などでも良いらしいのだが、生憎ダリュートには当てがない。

領主や正式な武家からの紹介状などがあれば狩猟同行なども不要となるのだとか。


ダリュートの場合、船の船長辺りから紹介状を得ることも可能ではある。

だが、船を降りるダリュートは船長に借りをつくるつもりはなかった。


「ふむ、では口入屋へ行ってみるかね」

そう告げて狩猟斡旋所を後にしたダリュートだった。


狩猟斡旋所から出て口入屋へと。

アチラ側では傭兵ギルドやハンターズギルドなどの流れの武芸者が稼ぐ施設などがあったものだ。

だが、コチラ側には、そのような施設は存在しないとのこと。

それは船旅で此処へと赴くまでに知ったことでもあった。


他国では他にも職業案内所的な施設は存在していたのだが、此処では口入屋がそれに当たるのだろう。

そう考えながらダリュートは表通りを移動して行く。


昼食を食べた後で宿へ行きトールと話し込んだせいもあり、時刻は夕刻に近付いている。

口入屋とやらに赴くには妥当だとは言えぬ時間帯やもしれない。

だが、どのような場所であるかくらいは様子見として伺うのも一興と行ってみることとしたようだ。


夕刻近い時刻ということもあり、帰宅する者達がチラホラ増えているようだ。

早めの夕食と言うのだろうか?屋台で買い込んだ品を食しつつ移動している者の姿も。


そんな中、屋台を冷やかしつつ歩みを進めたダリュートは口入屋へと辿り着いた。

取り敢えずは開いているようなので入ってみることに。


「んっ?こんな時間に一見様とは珍しい。

 何か用かね?」

痩せ気味の老人がダリュートへと声を掛ける。


「此処は口入屋とやらで合っているのかね?」っとダリュートが老人へと返す。

「ああ、そうだが…御武家さん、何用かね?」

再度尋ねられ、困ったようにダリュートが老人へと。


「いやいや、此処へ来れば仕事を斡旋して貰えると聞いてね。

 俺は今朝方に、この町の港へ船で辿り着いた者だ。

 故に何の伝も無くてね。


 此処への船で雇われていたのだが、船を降りようとね。

 っと言うことで、此方を訪ねさせて貰ったのだが…」


「ふむ、御武家様がねぇいっ。

 そいっあっ、中々に珍しい…しかも見たことが無い武装をしてらっしゃる。

 ガタイも良いし…なかなかにぃ、遣りなさるね」っとダリュートをシゲシゲと。


ダリュートは2m近い身長にバランスが取れた筋肉の鎧を纏ったような武芸者である。

国を出奔した当初に纏っていた鎧は体の成長にて合わなくなり売り払っている。

当時の武器も体には合わず処分しており、今見に付けている武具は旅先で整えた品々だ。

むろんコチラ側へ辿り着いた後でも武具を変えており、コチラ側の武芸者として違和感がない身形となっていた。


そんなダリュートが老人へと。

「それなりに腕は立つつもりではいる。

 どのような仕事があるかは知らぬが、何かあるかね?

 まだ路銀は潤沢にあるが…金がある内に、たつきの道を得ておこうとね」っと。


「仕官されるか伝を得てなさる武家の方が多いのでね、此方へと赴かれる武家の方は珍しいんですわ。

 だが…逆に武芸者に合う仕事もそれなりにですな。


 用心棒などもですが…ふむ、近場の村にて狼の群れが悪さをしておる話がありますな。

 その討伐依頼が来ておりますわい。


 それ以外ですと小鬼が現れたらしいと言われる場所の確認などですかな。

 まぁ、狩猟斡旋所では無いですが、狩って来られた品の買取なども行っておりますよ」


取り敢えず、此方では仕事に有り付けそうで、ホッとしたダリュートであった。

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