ラウンドリム0020
まだまだ訊きたいことの多いダリュートではあるが…
尋ねようと考えている時に工房へ誰かが立ち入った気配が。
「また、何かあったんですかね」っと見習いの少年が。
「誰か募集に応じて来たんじゃね?」そう彼の同世代であろう見習い少年が告げると、親方にキリレラと呼ばれていた少年が2へ告げる。
「兄さんが接収された後から募集してんのに来たのはこの人だけだぜ。
流石に、それはないんじゃね?」っと。
意外と3人の仲は良いのであろうか。
見習い3人が話していると鍛冶師の男性が言う。
「募集は熟練鍛冶師か、最低でも体格の優れた者となっているからなぁ。
その最低ラインが俺だ。
だから、俺は募集者が現れるとは思ってなかったんだが…」
っと、マジマジとダリュートを見る鍛冶師に…
「にゃぁっ!
そんな事より、ちっとは手伝うにゃんっ!」っとライナが不満気に。
大きな鍋を抱えており前が見えてないようだ。
ダリュートが苦笑して、ヒョイっと鍋を持ち上げ受け取ってやる。
「有難にぁ~ん。
重いのは持ててもにぁ、前が見えないのは厳しいにゃよぉ~」っと
総鉄鋳物である鍋は結構な重量がある。
長年使用し続けていたのだろうか鍋底に穴が開いているようだ。
「これ直るか訊いて欲しいそうにゃんね」
そうライナが親方へ告げると…
「こりゃぁ、中々の年代物じゃのぅ…
っか、未だに、こんな代物を使っておる者がおったのか?
これを直すなら、店に置いておる売り物鍋の方が性能が良いし直すより安いぞい」
そう親方が告げるとライナが頷いて告げる。
「やっぱり、そうにゃんにょねぇ…
そう言ったにゃんけど納得してくれにゃいにゃんよ」
「でっ、訊きに来たと?」っと困ったように親方か確認する。
それにライナが溜息を吐きつつ頷いたのだった。
「どらどら、仕方ないのぅ…」そう言いつつ親方がダリュートから鍋を受け取り…
「こりゃ放った方が良い位の品じゃてな。
元々鋳物に使った鉄の質も悪過ぎるでのぅ…鋳潰しても旨みがないわえ。
修理しても良いが、逆に修理した箇所以外との差が出過ぎるじゃろうて」
目視見立てでなく、手に取って調べた親方が軽く首を左右に振る。
「やっぱりそうにゃんよねぇ。
納得してくれるかにぁ~ん」っと困ったように呟く。
「仕方ないのぅ、儂が説明するわい」
そう告げて親方が店の方へと。
ダリュートも親方へ着いて店の方へと移動してみる。
まだ鍜治場で何をするとも指示されておらず、親方の客に対する対応も知りたかったからだ。
っと言うより、武具屋で武具のみと思っていたのに鍋なども扱っていたことに興味を持ったというのもあるのだが。
ライナが親方とダリュートを伴い店内へと戻るとトルトが客の相手を…
いや、その…ね、愛くるしいヨークシャー・テリアなトルトを愛でている、おば…コホン。
鍋の修理と言うよりも、実はトルトを愛でに来ているのでは?
そんな御婦人に親方が告げる。
「ヒュルドガルテ婦人であったかい…
旧家とは言え、お宅では未だに、このような骨董品を使うてなさるのか?」
親方が呆れたように尋ねる。
「あら、意外と重宝しますのよ、それ。
代々使っていますからねぇ、愛着もありますの。
で、直りまして?」
そう尋ねる婦人に親方が困ったように…
「直る直らぬで言えば直るのぅ。
じゃが、御代が嵩むぞぃ。
しかも直しても他の部分が劣化しておるでチグハグな感じになろうて。
買い直して貰いたいところじゃて」
「あら、そうですの…
それは仕方ないですわねぇ…では買い替えましょうかしら」っと。
修理を依頼する程に拘りがある品だと思っていたのだが、すんなりと買い替えを告げる婦人に呆れる親方。
そんな遣り取りを聞きつつダリュートは店内を見直す。
来た時には目立つ所に置いてあった武具と、意外なライナとトルトの存在に店内観察を怠っていたダリュート。
改めて確認すると、奥の方に台所用品などの雑貨が陳列されていた。
親方が鍋の買取は無理と告げると引き取りだけでもとなり、渋々と受け取っている。
その後、ライナとトルトが鍋などの説明を婦人へと。
ダリュートも、どのような品を売っているのか興味を持ち、それを見ている。
油を敷かなくても焦げ付かないフライパンに鍋。
加えて紙の如くは言い過ぎだが、婦人でも片手で軽々と振り回せる軽さの鍋やフライパン。
更には、熱伝導率が非常に高く冷めにくい品と熱伝導率は良いが冷めるのも早いタイプ。
逆に熱し難いが熱せられたら冷め難いタイプなどなど。
まぁ、熱せ難く冷め易い品は、流石に無かったようだが…
これらは料理の用途で使い分けるとのこと。
煮物などでジックリと熱を通したい場合は、熱し難い品でジワジワと煮立てて行くことで良い煮込みとなるそうな。
逆に急激に熱し、熱し過ぎない方が良い料理であるステーキなどは熱し易く冷め易い品だ。
肉の表面を焼き固め、素早くフライパンを冷ます。
その後、熱し易く冷め難い品を弱火で熱してジックリと火を通せばレストランの味を家庭で、などなど。
実にライナの口は滑らかに。
トルトが時々フォローを入れつつ婦人へと説明を。
婦人は目移りしつつ…結局複数の品を購入しホクホク顔で帰って行った。
それを見送りつつダリュートが親方に告げる。
「此処は武具店だとばかり思っておったが…あのような品も売っておったのだな」っと。
そんなダリュートへ親方が呆れたように言う。
「当たり前であろ。
武具は頻繁に売れる品ではないでのぅ。
金物を使う品を色々と扱っておるわい。
さて、今日も良い時間になったようじゃてな。
そろそろ店終いじゃ。
今日は、お主が来たことじゃて歓迎の宴でも催すかえ」
そう親方が告げると、喜んだライナが素早く閉店へと。
トルトは素早く鍜治場へと走り込んで行くのだった。
「こう言う時は異様に行動が早いわえ」っと呆れる親方だった。




