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ラウンドリム0002

店の奥から現れた大男…

タイミング的に考えても店の店主であろう。

だが料理人と言うよりは戦士とか兵士と見紛うばかりの体格から料理人とは思えない迫力が。


「おおっとぉ、ガンツの旦那、そう怒りなさんなって。

 誰も本気で旦那が男色家だなんて思っちぁいませんって」っとトールが慌てたように。


「当然だぁっ!

 だがな…冗談でも言って良いことではあるまいがよぉ」

そう告げつつギロんぬとトールを()め付けるガンツと呼ばれた店主。


「ねぇねぇ、おとっあん。

 男色家って…なに?」

顔を真っ赤にして怒っているガンツへ娘のカナコが無邪気に訊くが…

「いや、そのな…ううんむぅ…」っと言葉を濁す。


そんなガンツへトールがシメたとでも言うように

「そんなことよりもでっさ、頼まれてた香料を仕入れて来やしたぜ」っと。


店主であるガンツが顔を顰めつつ、仕方ないといった風で

「そうかい、それは有難い。

 でっ、何時もの通りか?」っと。


「いやね、今回は、こちらの旦那にも手に入れて貰ったので何時もの倍でやさ。

 買い取って貰えやすかねぇ?」っと。

「ほぅ、あの香料は現地でも結構な値がした筈…

 こちらの方は結構な資産家なのか?」

そう告げて男をシゲシゲと。


「資産家っと言う程ではない。

 まぁ、以前に海賊討伐にて褒賞得たことがあるのでな。

 これ以外に故国より持ち込んだ香辛料や香料が高値で売れた故、少々懐が暖かかっただけだ」

そう男が告げると、店主の眉がピクリと跳ね上がる。


「ほぅ、故国の香辛料かい…それは?」

「各々、既に半分を切ってはいるが、これだな」

男が懐から物を取り出すと…


「こ、これは…

 頼むぅっ!お、俺にぃ、この俺に分けて…売っては貰えないだろうか?」っと。


いきなり縋るように頼み込んでくる店主に困惑顔の男。

困ったように相方のトールを見ると、やれやれっといった風に顔を軽く振っている。


「だから料理馬鹿だと言ったでやしょ。

 まぁ、こんな造りの店でやすが…貴族様どころか領主様までがお忍びで通うそうでやすよ。

 本人は様々な品がより多く集まるここから離れる気はないようでやすがねぇ」っと。

つまりはだ、買い取る甲斐性はあると、そう言うことなのだろう。


「全部は無理だが…今持つ半分つづならば考えよう。

 それで、どうだね?」っと。


「ああ…有り難てぇ…この香辛料は文献で読んだことがある香辛料だとしたら…幻の地にしか存在しない代物の筈。

 しかし…これを…いったい何処で手にいれなすったね?」

そう店主が尋ねるので、男は困ったように。

「ううむ、その幻の地であるライラムだな」っと、そう告げる。


男が告げた言葉の意味を咀嚼し切れず、店主がポッカァーンっと男を見た後…

「からかって…ては、いなさらぬようですな…

 ですが、あの地へどうやって?」

呆気にとられたように告げる店主へと男が。

「行き方は、流石に分からん」っと。


「では、どうやって?」

少し怒気を込めつつ店主。

からかうつもりか?っとでもいうような視線に男が困ったように。


「いや、だからな、俺の故国がアチラ側なのだよ。

 嵐で船が沈み、備え付けのボートで船から脱出はできたのだが…

 嵐に揉まれ漂流し、何処をどう流されたか…

 気付いたら、こちら側の海域に辿り着いておったのだ。


 まぁ、海賊に見付けられたのは良かったのか悪かったのか…

 あ奴らが弱かった故、制圧した後に近場の港へと辿り着いた訳だ」


「いやいや、聞いた話ではマスグラム海賊団だったんでやしょ?

 ありぁっ、それなりに名の通った海賊団でやすよ。

 それを弱いって…旦那も、相当でやすよねぇ」

トールが呆れたように。


「まぁ、当時は銃の弾が残っていたからな。

 それよりも、魔術や妖術なんぞが、こちら側にある方が驚きだぞ、俺は」

「いやぁアレは資質がある(もん)しか使えねぇでやすがねぇ。

 しかも教わるにも伝が要りやすし…」

「そうみたいだな。

 まぁ、海賊団には居なかったから助かった訳だが…こちらでは弾の補充もできぬ故、銃も飾り扱いに過ぎぬが…」

「しかしでやすねぇ…その銃とやらから高威力の矢玉が飛び出すてぇのが未だに理解できねぇんでやすが?」


そんなことを話している2人に店主が痺れを切らしたように割り込む。

「つまりはだ!

 アンタはアチラ側からこちら側へと辿り着いたと?」

「まぁ、そうなるな。

 偶然に過ぎない故、アチラへの行き方などは知らぬ。

 まぁ、故国を捨てた身、戻り方を知っても戻る気はないがな」

そう返すと店主が頷いた後で交渉へと。


「理由は分かったが…旦那の手持ちしか、こちら側には存在しない代物。

 そう考えて良いのか?」っと。


「まぁ、アチラ側とコチラ側との行き来の仕方が分からぬからな。

 だが…実はな、種を持ってはおるのだよ」っと囁くように。


仰天したように男を見る店主とトール。

どうやら、この話はトールにも告げてはいなかったようだ。


「育つかどうかは分からぬ。

 だがな、俺が腰を落ち着ける地が見付かったら育ててみるつもりだ。

 そもそも故国の味が恋しくなった時のことを考えて持ち歩いておる品。

 流石に、これは譲れぬが…腰を落ち着け栽培に成功したあかつきには別けても良いぞ」

そんなことを店主へと持ち掛ける男だった。

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