ラウンドリム0016
屋台の店主から羅熟麺なる物を受け取ったダリュートは屋台共用の食事処へと。
複数の簡易机と椅子が適当に置かれており、その1つへと腰を落ち着かせる。
同じ席には客は居ないが、どうやら相席が通常となっているようだ。
他の席では食べている者が居るが、知り合いどおしと言う訳でもないと見受けられる。
机へと置いた羅熟麺の丼が乗った四角い盆から、まずは水の入ったカップをに取る。
木製カップには、ほど良く冷えた水が湛えられていた。
(コチラ側でも金を取る所は多々あったが、此処ら辺に来て水が只になったのには驚いたわい。
しかも屋台で出されたのに冷えておる。
今まで気付いてはおらなんだが…これは魔導具なるものの仕業であろうや?)っと。
ダリュートは水で気付いたようであるが、屋台には様々な魔導具が備え付けられている。
魔導炉なる物は熱を発する魔導具であり、それによりスープを温め湯を沸かし調理も行う。
火は発せず熱だけ発する代物で小型ゆえに場所もとらない。
屋台では助かる1品である。
それ以外に水やお湯を出す魔導具に10センチ以下の有機物を分解する魔導具も存在。
塵は全て魔導具で魔素変換されるため洗物や塵の始末も楽である。
まぁ、10センチ以下の虫をペットにしていたならば、魔導具分解される恐れがあるので注意は必要となる。
だが、10センチを超える大きさであれば無害な品なので、一般家庭へも普及していたりする。
これらの以外にも魔導具が存在するが、此処ら辺の者達にとっては生活に溶け込んだ当たり前の品ばかり。
他所から来た者が知れば仰天物である代物ばかりなのだが…
そのような代物が辺りに溢れているとは気付かないダリュートは水を生み出す魔導具があることには気付き、しきりに感心している。
木製カップから水を飲み…
(なんと澄んで旨味のある水なのだ…清流や湧き清水を越える美味さよ)
そう感動している。
(水が美味いとなれば料理にも期待ができよう)そう思い本から箸を。
(チョップスティックにも大分慣れたが…当たり前のように出されるとはのぅ)っと苦笑。
ダリュートが初めて箸を見た時、この棒でどうしろと?と思ったものだ。
だが今では普通に扱えるまで上達しているのだった。
手に取った箸で丼を調べ麺を摘んでみる。
(むむっ、細いとは思っておったが…此処まで細いのか…
まるで絹糸ではないか、何故切れぬのだ?)っと。
絹糸は言い過ぎである。
素麺ほどに細い訳ではないが博多系豚骨ラーメンの麺と似たストレートの細麺であった。
とは言えダリュートは平打ちパスタや太めのパスタしか食したことがない。
そんな彼からしたら仰天物であったようである。
(まずは麺を頂くか)っと考え口へと。
啜ると言う文化を知らぬダリュートは啜らずモソモソと麺を口へと。
それでも…
(麺が細いだけで、これ程に違うものなのかっ!)っと仰天。
備え付けられていたレンゲを持ち丼からスープを。
(このスープも美味い!いや、なんと言う美味さだ。
それにしても…これは変わった形をしたスプーンだな。
だがスープが多く掬えて食べ易くはある)
そう思いつつスープと麺を。
だが、ふと汁に沈み行く具へ目が行き…
(そう言えば具材とやらがあったか。
これは筍やらを煮た代物と言っておったが、筍とは何だ?
このように長細い植物なのだろうか?)
細長く切られた洲菜竹を摘み上げシゲシゲと。
その形で生えていたら仰天物であろう。
まぁ、知らぬのであるから仕方ないのではあるが…
暫し観察した彼は意を決して口へと。
(ぬっ?コリコリ、シャクシャクと…これは珍妙なる歯応え。
味も、悪くはない)
そう思いつつ麺と汁を無造作に。
(ぬぅぅっ、これわぁっ!?
なんと、麺、スープと共に食せば美味しっ!
なるほど、故に羅熟麺の具とやらかっ!
これは、他の具材も試してみねばなるまい)
そう思い至ったダリュートは他の具材も合わせて麺とスープを平らげて行く。
アッと言う間であった。
ダリュートが気付いた時には丼にはスープ1滴も残っていないと言う有様。
(世には…このような代物もあったのだなぁ…)っと。
それだけ感動したと言うことなのだろう。
まぁ未開の国より初めてラーメンを食べた者と同じと考えれば合点もいこう。
とは言え、合う合わないがあり、必ず受け入れられる訳ではない。
ダリュートにとり羅熟麺は合う料理であったのであろう。
大満足で箸を置くダリュートに、客足が途絶えた屋台で店主が満足気に頷く。
忙しない最中なれば客を伺うこともできないが、客足が引いた今は余裕がある。
そんな時、自分の料理で満足している客を見る。
(こんな一瞬が見たくて客商売してんだ)っと満足気。
そんな彼へ食べ終わった丼が乗った盆を持ってダリュートが近付く。
「店主、美味かった。
また寄らせて貰うぞ」っと告げ、返却用の場所へと盆を置く。
「まいどありぃっ!
またのご来店をお待ちしてまっさ」
そう満面の笑顔で告げる屋台の店主に軽く手を上げて移動を始めるダリュートであった。




